キャリア養成の最先端は女子校にあり
2013年03月18日 公開 2022年12月07日 更新
昨今、保護者や女子生徒に嫌厭される傾向にあった女子校が取り組む、その教育改革とは!
「良妻賢母」教育はもう古い
“女子校(中学校・高等学校)離れ”といわれて久しい、ということをご存じだろうか。
中学受験対策の塾講師は、こう話す。
「いま、異性を意識しだす“思春期”は小学校にシフトしています。小学生向けの雑誌で『恋愛テクニック特集』が人気企画となったり、実際に小学生同士の男女交際もあります。そういう環境にいる女子たちは、『女子校は楽しくなさそう』といいますね」
中学受験における女子の共学志向は、データにも表れている。
中学受験産業の大手「日能研」では、毎年7月に志望校調査をする。ここでは2011年と12年のデータを紹介しよう。
志望理由の1位は、男女ともに2年連続で「交通の便がいいから」。2位、3位あたりには「過去から継承している教育理念・校風」「現在の校風」など校風に関する項目が並ぶ。
男子の場合は、次に「大学実績」が挙がるが、女子の場合は「共学校だから」(2011年は4位、12年は5位)という答えが出てくる。ちなみに男子の場合、「共学校だから」という答えは11年、12年ともに12位となる。
この女子の共学志向は偏差値をみても顕著で、2013年中学入試偏差値一覧(日能研 全国公開模試 予想R4一覧/以下、偏差値はすべて日能研データ提供)をみると、早稲田実業学校は男子の偏差値が63で女子は65。渋谷教育学園渋谷(2月1日受験)は男子が58で女子は63。慶應義塾中等部は男子が64で女子が69。共学校への入学は、男子より女子のほうが激戦になる。
受験生である女子が「男子がいないと楽しくなさそう」と女子校を嫌うとしても、保護者の共学志向の原因は何なのだろうか。
その理由の1つとして、旧来の女子校のイメージが消えていないことが考えられる。明治の旧制女学校時代から長らく、女子校は「良妻賢母」を育てる教育機関であった。明治時代には、女性に教育を与える理由として「良妻賢母」というお題目が必要だったからだ。
女子校と同様に敬遠される傾向があるのが女子大だが、女子大に対しても旧来の「良妻賢母の養成機関」というイメージが払拭されていないと話すのは、昭和女子大学(東京都世田谷区)学長でベストセラー『女性の品格』(PHP新書)の著者である坂東眞理子氏だ。
「いま女子大では、社会で活躍できる人材を育てる教育を行なっています。社会はまだまだ男女が平等とはいえません。企業の採用担当者はみな、『採用試験で優秀な子だけ採っていくと女子だけになってしまう。仕方ないので男子に下駄をはかせて採用する』とおっしゃいます。そういう状況では、社会で生き抜けるように女子に特化した教育が必要だと考えています」
昭和女子大学は、きめ細かい教育や就職指導で高い就職内定率を維持しているが、これはほかの多くの女子大にも共通している。とりわけ昭和女子大では、教員が1人ひとりの学生と向き合って指導をしていく。マンモス共学大学ではできえない手厚さだ。
やっと就職しても、まだまだ職場組織で女性への“差別”がある。坂東氏は『女性の幸福』(PHP新書)のなかで、「日本の職場組織では、(仲間の)男性の気持ちは傷つけない、メンツは重んじる、といったマナーや仕組みが行き届いている」と書く。そのような男性のメンツを守る職場組織に対して、「そんなメンツにこだわるな、といえばいいんです。でも、それを主張するためには、上手に説得するスキル(能力)が必要です。そのスキルはつねに磨いていく必要があります」ともいう。
経済が右肩上がりの時代は、目標が明らかで、みなが同質なら利益が出たので、女性や外国籍などのマイノリティは排除された。だが、企業も工夫や努力をしなければならない時代になれば、実力主義となり、性や国籍で差別されることもなくなる。組織にとって必要なスキルやパワーをもっていれば、それを武器に主張や交渉をしていくことも可能となり、「育児休業に関する交渉などもできるでしょう」(坂東氏)という。
女性が社会で生き抜いていくためには、まずスキルが必要なのだ。