近年の研究では、魚をよく食べる人ほど心血管疾患による死亡リスクが低いことが分かってきました。青魚に含まれるEPAやDHAには、中性脂肪を減らし、血管の「サビ」や「詰まり」を起こしにくくする効果が期待できるからです。本記事では、整形外科医として診療に携わりつつ、医学論文に基づいた情報発信を積極的に行っている歌島大輔氏が、青魚がもたらす健康効果をデータとともに解説。忙しい人でも実践できる「魚習慣」のコツを提案します。
※本稿は、歌島大輔著『科学的に証明された 突然死を招く習慣・長生きする習慣』(高橋書店)より一部抜粋・編集したものです。
中性脂肪を減らし、血管の炎症・血栓リスクを抑える
「体にいいから魚を食べましょう」といわれても、毎日食べるのはなかなか難しいですよね。よって、私は目標をぐっと現実的にして「週に2回」をすすめています。週2回程度なら、なんとかねじ込めるからです。そして、これだけでも体の中の「材料」が変わっていきます。
青魚には、EPAやDHAといったn-3系(オメガ3)の脂が多く入っています。脂と聞くと「悪」に思えるかもしれませんが、これらは血管や脳の細胞膜の材料にもなる「良質」な脂。中性脂肪を減らし、血管の炎症や血栓ができやすくなる反応を抑える効果が期待されています。
いいかえれば、血管の「サビ」と「詰まり」を少しでも起こしにくい体質に寄せる、というイメージです。
魚をよく食べる人ほど心血管疾患による死亡が低い
血液中のオメガ3の量と死亡リスクの関連性についての研究では、血中のEPA・DHAが高い人ほど、全死亡(すべての原因による死亡)のリスクが低いことが示されました。[1]
さらに、魚の摂取量と死亡リスクの関連性についての研究でも、魚をよく食べる人ほど心血管疾患による死亡が低いと示されています。[2]
青魚を食べる価値は、まさにここにあります。
もちろん、「魚を食べたら絶対に死亡リスクが低くなる」とまではいい切れません。それでも「青魚を食べる」ことは、費用対効果が高く続けやすい習慣だと考えられます。
食べる曜日を決めておく
私がおすすめするのは、あらかじめ「魚の日」を決めてしまう方法です。たとえば火曜と金曜を魚の日にして、冷蔵庫や冷凍庫に「焼くだけ」「出すだけ」の材料を用意しておきます。
「1回」の目安は、切り身なら手のひらサイズを1枚(80〜100gくらい)。刺身なら1パック、缶詰なら1缶でOKです。焼き魚なら塩サバ、サンマ、イワシ、アジ。煮ものならサバみそやイワシの梅煮といったものです。
魚は揚げもの(フライや天ぷら)しか食べない、という人もいますが、揚げると油と塩分が増えてメリットが相殺されやすいので、できれば焼き・煮もの・刺身のいずれかにしてください。
どうしても揚げものがいいのなら、魚を食べる日を週3回にして、1回だけ揚げものにする――そんな「現実的な折り合い」でも十分です。
味付けも、しょう油よりもレモンや大根おろし、だしのうま味を使うと「減塩」につながります。
筋肉を構成するたんぱく質もとれる
50~60代になると、長生きのポイントは血管だけでなく「筋肉」にも広がっていきます。外来でも、体重は増えていないのに、疲れやすくなったり転びやすくなったりするという患者さんが少なくありません。
青魚はオメガ3だけでなく、筋肉を構成するたんぱく質も同時にとれます。
ご飯を少なくして、魚と野菜を増やす――これだけで、体の立て直しが始まります。
とはいえ、缶詰や干物には塩分が多いものもあります。血圧が気になる方は、汁を切る・薄味を選ぶ・野菜や汁物でカリウムを足して帳尻を合わせるなどすると安心です。
青魚が苦手な人は、ほかの魚介類でも
魚が苦手、アレルギーがある、家族が食べない――そんなときでもゼロにしないでください。
植物性のオメガ3(えごま油、亜麻仁油、くるみ)を使うという案もありますが、先ほどの研究では、植物由来のALA(オメガ3系脂肪酸)には死亡リスクとの明確な関連が見られませんでした。[1]つまり、これらで魚を完全に置き換えるのは難しいかもしれません。
現実的な落としどころとして、青魚が難しい場合は「魚介類を週2回食べる」という方法があります。サバやイワシなどが苦手でも、マグロ(ツナ)やサーモンなら食べられるという人も多くいます。これらにも青魚ほどでないにしろ、EPA・DHAが含まれます。
[1]Harris WS,Tintle NL,Imamura F,et al.Nat Commun.2021;12:2329.
[2]Jayedi A,Shab-Bidar S,Eimeri S,Djafarian K.Public Health Nutr.2018;21:1297-1306.









