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30代から急増する“睡眠負債”の解消法 自律神経のカギは「朝食、サウナ、露天風呂」

小林弘幸(順天堂大学医学部特任教授)

2026年05月18日 公開

30代から急増する“睡眠負債”の解消法 自律神経のカギは「朝食、サウナ、露天風呂」

「寝ても疲れがとれない」「最近ずっとイライラしている」......体内の「時計遺伝子」が狂っていると、そのような不調を訴えることがあります。この遺伝子は交感神経と副交感神経のオン・オフを司っているため、リズムが乱れると、自律神経の乱れを招いてしまうのです。では、時計遺伝子を正しく働かせ、自律神経のバランスを整えるにはどうしたらいいのでしょうか。本記事では、朝の習慣やバスタイムを活用する生活術を伝授します。

※本稿は、小林弘幸著『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)より一部抜粋・編集したものです。

 

「時計遺伝子」が自律神経のスイッチを切り替える

みなさんは「時計遺伝子」という言葉を聞いたことがありますか?私たちは、地球の自転に合わせて約24時間周期で、生体リズムを調節する時計を生まれながらに体のなかに持っています。

内臓や細胞の「時」を制する時計遺伝子の子機とでもいうべき体内時計が体中にあり、代表的なものだと腹時計があります。この体中にある時計が正しくリズムを刻むことで、体の機能や健康が保たれ、逆に針がずれると病気になることがわかってきています。

このとても大切な遺伝子と密接に関わっているのが、自律神経です。

人間の体内では、昼間に交感神経が優位になって体温や血圧を上げたり、夜に副交感神経が優位になって睡眠に導いたりする働きが、日々行なわれています。
では、朝になったら休眠モードだった交感神経が勝手に起きだして、行動しやすい体に変えてくれるのかというと、答えは否です。
交感神経と副交感神経、このふたつのスイッチをオン・オフしているのが、数多くある体内時計を司る時計遺伝子なのです。

時計遺伝子が正常に働かないとどうなってしまうかというと、寝る時間になっても副交感神経がなかなか優位にならず、睡眠時間が少なくなり体調を崩す原因となります。とくに大型連休がある5月や8月、イベントの多い年末年始は、生活パターンが乱れやすくなるため注意が必要です。

時計遺伝子を正常に働かせるポイントは、次のふたつです。

ひとつは、毎日決まった時間帯にきちんと起床することです。深夜に帰宅し、仮に午前3時に寝たとしても、午前8時には起床し、朝日を浴びるようにしてみてください。徹夜をしたらそのまま起きていましょう。1時間半程度なら昼寝の時間をとってもいいのですが、夜までぐっすり寝るのは避けてください。

ふたつめは、1日3食の食事です。ダラダラと食べ続けるのは時計遺伝子の働きを乱す引き金になりますから、朝食、昼食、夕食のリズムを整えることが大切です。とくに、朝食はもっとも重要です。簡単なものでもいいので、毎朝きちんととるようにしましょう。

時計遺伝子のリズムがよくなれば、自律神経のバランスも整っていきます。
ただし、無理をするのはよくありません。
すべてを一気に変えるのではなく、まずはできることから始めてみてください。

 

睡眠不足は治療効果を半減させる

もっともわかりやすい自律神経失調症の症状のひとつは、睡眠の不調です。

日中とは違い、夜には副交感神経が優位になるはずなのに、そうならない。すると、なかなか寝つけない、ぐっすり眠れない、睡眠のリズムが乱れる......といった悩みを抱えることになります。睡眠不足が続き、休日でも疲れがとれるどころか、かえって眠りのリズムを崩してしまい、より疲れた感覚で月曜日を迎えてしまうこともあります。
こうした負の連鎖は、「睡眠負債」とも呼ばれています。

ところで、睡眠の不調を訴える人の多くは、ある程度年齢を重ねた人たちです。子どもの多くはスイッチが切れたように長時間眠りますし、10代、20代のころから不眠で悩む人はあまり見かけません。この原因も、自律神経が関係しています。

副交感神経は男性は30代、女性は40代から下がる傾向にあります。
つまり、その年代になっても副交感神経をなるべく下げないようにすれば、睡眠も改善され、どんどん「睡眠貯金」ができるはずなのです。

どんなにそのほかの方法で自律神経を整えようとがんばっていても、睡眠を充分に満たせていなければ、たちまち不調になります。なぜなら、睡眠不足は副交感神経を抑えてしまうからです。

副交感神経が充分に上がらないまま再び朝を迎え、仕事や学校に出かければ、やるべきことが山積みでさらに交感神経が刺激されます。徹夜明けにハイテンションになるのは、交感神経が優位になっているからです。

「いまは忙しい時期だから仕方ない」とか「睡眠時間を削ってでもがんばるしかない」なんて考えていると、そのうちどうやっても副交感神経が上がらなくなってしまいます。これこそ、深刻な自律神経失調症を招く典型的なパターンです。

もっとおそろしい話もあります。睡眠不足などで自律神経が乱れた状態だと、医学的治療を受けても効果が半減してしまうこともあるのです。
肩こりや腰痛などの理由で鍼治療を受けた場合でも、自律神経が乱れている人は、そうではない人の半分程度しか効果が表れません。

眠れないほど忙しい、という考え方は、つい睡眠不足を正当化してしまいます。でも、その結果自律神経が乱れれば、体の回復もままならず、脳に血流も行き届かず、結局、仕事でもよいパフォーマンスができなくなってしまうのです。
睡眠は自律神経を整える基本だと考えるようにしましょう。

 

よく入浴する人は、要介護認定になるリスクが少ない

入浴はお湯につかることでリラックスし、副交感神経を活性化しやすくする作用もありますし、反対にぐっすり眠ったあとの体をシャキッとさせて、交感神経を活性化していく切り替えのきっかけとして使うこともできます。
つまり、バスタイムを効果的に使うことで、自律神経を整えることができるということです。

まず、寝起きでシャワーを浴びるときの方法から。
初めはぬるめのお湯で体を慣らしましょう。38度くらいが目安です。慣れてきたら、自分にとっての適温(例として40度くらい)までお湯の温度を上げます。なぜこうするかというと、いきなり適温を浴びてしまうと、急に交感神経が刺激されてしまうからです。

そして、仕上げがポイントです。温水と冷水を3〜4回交互に浴びて、最後は冷水で終わります。こうすると、頭も体も引き締まります。

大きな浴場のある温泉やスーパー銭湯は、私も大好きです。自律神経を整えるという名目で、たまには出かけてみるのはいかがでしょうか。

まずおすすめは、ジェットバスです。勢いよく出てくる気泡は、破裂するときに超音波を発します。これにマッサージの効果があり、血流をよくしてくれます。

そして、サウナもいいでしょう。サウナのように非常に強い温かさがある場所にいると、交感神経と副交感神経が互いに連携をとり合って体温調節を行なうようになります。そうすることで、体温調節機能、すなわち自律神経がしっかりと働くようになるのです。

そして、最強のリラックス入浴法は、やはり露天風呂です。
景色や空を眺めながらの入浴は、単に入浴の効果を得るだけではなく、最高のリラックス状態を生み出し、副交感神経への助けになります。自然を感じられる時間は、自律神経を整える観点からはいい効果しかありません。

そもそも入浴の習慣は、元気で長生きするという観点からもおすすめです。

千葉大学の研究によれば、高齢者のうち、週に7回(つまり毎日)以上入浴する人は、週に0〜2回の人に比べ、要介護認定になるリスクが約3割も少ないそうです。なぜなら、よく入浴をする人は血流がよく、心臓や血管がいい状態に保たれているからです。

忙しい人ほどつい億劫になりがちな入浴ですが、自律神経を整え、元気で長生きするためだと考えれば、多少無理してでも習慣づけていくのがよいでしょう。

 

自律神経の乱れは伝染する

「何をやってもうまくいかない」「なんで自分ばかりがこんな目に」......。ときにこんな気持ちに陥ってしまうことはありませんか?

私もかつて、イライラしたら引きずってしまい、怒ったままの毎日を送っていました。そういうときはたいてい何をやってもうまくいかないもので、次から次へとイライラすることが起こり、不満をためていく日々でした。
そういう私と接しなければならなかった周りの人々にも私の怒りが伝染して、場の雰囲気がピリピリしてしまうことも少なくなかったかもしれません。

負の感情は連鎖する、ということは研究によっても明らかにされていますが、負の感情=ストレスですから、他人の影響によって自分の交感神経が高まってしまうことは充分に考えられます。

たとえば、不平不満ばかりをいう人や、つねにイライラしている人がいる職場を想像してみてください。それだけでストレスを感じるはずです。
自分の感情の乱れが、誰かの自律神経を乱してしまうことにもなるのです。

私の場合は、自律神経の研究を始め、その過程でいったん立ち止まる勇気を持って「自分をじっくり見直す」ことにたどりついたことで、変わることができました。

いまでは、当時の私を知っているスタッフから「先生、本当に穏やかになりましたね」と声をかけてもらうことも多くなりました。また、一緒に働いているスタッフたちは笑顔がとても多く、職場もつねにポジティブな雰囲気を保つことができています。

その理由のひとつは、私自身が自律神経の乱れを整える術を身につけられたことで、周りも負の感情の影響を受けなくなったことが挙げられると思います。

自律神経は、これまでも説明してきたとおり、些細なことで簡単に乱れます。
そしてその乱れは、周りにも影響を与えます。

ですが反対に、自分自身が自律神経を整える術を身につければ、周りにもいい影響を与えることができます。
だからこそ、イライラしたり、怒りっぽくなっている方は、まずは勇気を持って自分自身をじっくり見直していただき、自律神経を整える術を身につけてください。
整ってくれば、必ずいい方向に、自分も周りも変わっていけるはずです。

プロフィール

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部特任教授

1960年、埼玉県生まれ。92年、順天堂大学大学院医学研究科博士課程を修了後、ロンドン大学附属英国王立小児病院外科などの勤務を経て帰国。順天堂大学小児外科講師、教授を歴任後、現職。自律神経研究の第一人者としてアスリートや芸能人のアドバイザーを務めるほか、TV出演などメディアでも活躍中。

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