前作『無能の鷹』で「有能そうに見えて社内ニート」という前代未聞のキャラクターを生み出した漫画家・はんざき朝未さん。待望の最新作『消費生活者ターさん』(コミックDAYS)は、ジャングル育ちのターザン似男性・ターさんがなぜか消費生活センターの相談員として働く姿を描いたコメディ作品です。連載開始から話題を呼ぶ本作について、はんざきさんに話を伺いました。
第1回となる今回は、この奇想天外な設定やキャラクターが生まれた背景をはじめ、主人公のターさんが目標に掲げる「消費生活王」の意味など、本作に込められたこだわりを紐解きます。
なんでターザンが消費生活センターに? 異色すぎる設定の誕生秘話

――本作は、消費生活センターが舞台になっています。なぜ、消費生活センターなのでしょう?
【はんざき】新作の企画会議で、思いつくテーマを20個ぐらい出したんです。その中で、何となく挙げていた「消費生活センター」が、編集者の方々の反応が一番よかったんですね。
もともと親族が消費生活アドバイザーの試験を受けていた関係で、国民生活センターが出している『くらしの豆知識』という本が家にありました。それで、消費生活センターの存在を何となく知っていたんです。
――なるほど、ご親族の影響があったのですね。
【はんざき】本当に、存在を知っていたくらいでしたが...。最初は「消費生活センターを漫画として描けるのかな」という不安もありました。でも、「ターザンみたいな人を主人公にしよう」というアイデアが出たところで、なんとか描けるかもしれないと思うことができました。
――ターザン的なキャラクターはどのように生まれたのでしょう?
【はんざき】最初に、「消費生活センターの相談内容をメインに据えていくのか、それともキャラクター主体でいくのか、どちらがいいですか」と編集部に聞いてみたんです。
すると、「絶対にキャラクター主体のほうがいい」というお返事をいただいて。そこから、主人公のキャラクターを考え始めました。
最初は、アメリカのアーミッシュのような、自給自足の生活をしている共同体の出身者がいいのかなとも考えていました。でも、いっそのこと「ターザン」くらい突き抜けた野生児がいいかもしれないと思いついたんです。
――アーミッシュからターザンに行き着いたのですね(笑)。ターさんを描くにあたって、ディズニーのアニメ映画『ターザン』はご覧になったのでしょうか。
【はんざき】めちゃくちゃ見ました。原作小説の『ターザン』も読みましたし、昔の実写映画もいろいろチェックしました。
――ディズニー映画では、ターザンがヒロインのジェーンと恋に落ちます。本作では、ターさんと先輩相談員・保東さんの関係性も気になります。保東さんはジェーンの立ち位置にいるようにも見えますが、今後2人の間にロマンスが生まれる可能性はあるのでしょうか。
【はんざき】現時点では未定ですね。実は、保東さんの「ジュン」という名前は、ジェーンからもじって付けたものなんです。
ただ、ディズニーの映画にしても原作小説にしても、基本的にはロマンスが主軸にある作品です。なので、私の漫画では、逆に恋愛要素があってもなくても、どちらに転んでもいいかな、くらいの気持ちで捉えています。
――なるほど、今後の展開に注目ですね。ちなみに、はんざきさんの一番お気に入りのキャラは誰ですか。
【はんざき】それはもう、ターさんですね。でも、保東純も割と物事を割り切ってスパスパと進めていくようなキャラクターなので、案外セリフが描きやすくて気に入っています。
4話から登場するミステリアスな女性の相談員もお気に入りです。結構スピリチュアルなことを言ってくるキャラクターなのですが、それが意外にもストーリーの中で使いやすいというか、作品の良いスパイスになっていて重宝しています。
消費生活王って何だ...?

(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「消費生活王に、俺はなる」より)
――第1話でターさんが登場してすぐに、まるで某海賊漫画のように「消費生活王になる!」と宣言します。その後、自分で「消費生活王って何だ......?」と恥ずかしがって赤面していますが(笑)。「消費生活王」とは、いったい何なのでしょうか。
【はんざき】これも、現時点では未定です(笑)。
これから連載が進む中で、ターさんが自分自身で見つけていくものなのかもしれないですし、何を基準にして王とするのか、という定義はこれからですね。
もともと『ターザン』について調べていたときに、「ジャングルの王者」というフレーズが出てきたんです。それで、「王って響き、いいよね...」という気持ちで入れました。
あとは、物語として主人公が目指すべき目標を持っていたほうがいいと思って入れたセリフでもあります。
――最終回で「消費生活王」になっているかもしれないということですね。その他に作中で、ターさんを描くうえで意識していることはありますか。
【はんざき】ターさんをメインに据えることで、単なる「消費生活センターの解説もの」にならないようにしたいと思っています。
あくまで「ターさんという一人の人間の生活」が中心にある。そのうえで、消費生活センターの人たちが持っている専門知識や、現代社会のトラブル、相談事などが自然と絡んでくる。そういう構造にできると、物語としても描きやすくなると思っています。
疲れているときにも読める作品に
――前作『無能の鷹』でも感じたのですが、はんざきさんの描くキャラクターは、みんな善良な人たちだと感じます。悪役を登場させないというポリシーがあるのでしょうか。
【はんざき】ポリシーというよりは、単純に私の得意不得意なのだと思います。
世の中には、人間の悪意をすごく面白く、魅力的に描けるクリエイターの方がたくさんいらっしゃいます。でも、私はそういう表現があまり得意ではないんだろうなと。
それよりも、「別の本筋を書きたい」という気持ちが強いんです。今後、物語の本筋にどうしても悪意が必要になったら描くこともあるかもしれませんが、基本的には一話完結の形式が多いので、物語のフォーマットとの兼ね合いもあるのかなと思います。
――登場人物たちがそれぞれ優しさを持っているので、疲れているときに読んでも、心が軽くなる感覚があります。
【はんざき】それはよく分かります。自分自身、疲れているときには重いストーリーの作品を読めないタイプなので、読者の方のそういったニーズも意識しながら描いています!









