(C)ずいの・系山冏/講談社(『税金で買った本』7巻「むらさきのスカートの女」より)
『週刊ヤングマガジン』で連載中の『税金で買った本』(ヤンマガWeb)は、ヤンキー高校生の主人公がひょんなことから図書館で働くようになり、個性豊かな職員や図書館の利用者と触れ合いながら成長していく姿を描いた、今大注目の図書館お仕事漫画です。実写ドラマ化・アニメ化も決定し、さらなる盛り上がりを見せています。
本作の大きな魅力といえば、読者をハッとさせるような圧倒的なリアリティ。今回は元図書館職員でもある、本作の原作者・ずいのさんにインタビューを行いました。作品の誕生秘話や、作中で描かれる「図書館のリアルな描写」の裏側に迫ります。
自治体ごとに異なる細かなルール![『税金で買った本』]()
――『税金で買った本』では、図書館のディープな内部事情まで描かれていますが、図書館関係者からの反響はいかがでしたか?
【ずいの】深く共感してくださる方もいれば、「うちの図書館ではちょっと事情が違うよ」という感想をいただくこともありました。自分が図書館に勤めていた当時の経験をベースに描いている部分が多いのですが、漫画として世に出て色々な方に読んでいただくと、図書館ごとの違いが見えてきたんです。
――具体的にはどのような違いがありましたか?
【ずいの】例えば、借りた本の「延長手続き」のルール一つとっても、全国一律ではないんです。私の勤めていた図書館や、普段利用している図書館では、延長手続きをした本を再度延長したい場合、次に予約している人がいなくても「一旦返却する」というルールだったんです。
でも、「次に予約している人がいないなら、何回でも続けて延長できる」という対応をとっている図書館もあると知って驚きました。図書館によって細かなルールが違うので、もっと他の図書館の取材もしないといけないなと感じています。
――作中では、正規職員と非正規職員の待遇格差についても描かれています。『税金で買った本 公式ファンブック』では、「非正規職員が全体の77%を占める」というデータが載っていて衝撃を受けたのですが、こういったシビアなテーマを踏み込んで書くことに、ためらいなどはなかったのでしょうか?
【ずいの】ためらいはなかったですね。私自身、非正規雇用の問題に関しては「どうしても変わってほしい」という強い気持ちがあったので、漫画の中でしっかりと描くべきだという使命感を持っていたんです。
――本作を読んで初めて、この現状について知る読者は多いかと思います。圧倒的なリアリティで描かれている本作ですが、『週刊ヤングマガジン』という、一見すると毛色が異なるようにも思える媒体で連載されています。ヤンマガ読者の皆さんからはどのような反応が届いていますか?
【ずいの】最初は「ヤンマガの読者層に受け入れられるかな」という不安もありましたが、皆さん非常に温かく読んでくださっています。基本的には1話完結のスタイルなので、さらっと気軽に読めるのが良いのかもしれません。
しかし、夏休みの読書感想文をテーマにした回(『税金で買った本』11巻収録「読書感想文の書き方」)のように、何話か連続して続くエピソードの時は「来週はどうなるんだろう?」というワクワク感や引きが強くなるのか、反響が良かったりもするんです。
――なるほど! 週刊連載だからこその読まれ方があるんですね。
フィクションと現実のギャップ

(C)ずいの・系山冏/講談社(『税金で買った本』7巻「むらさきのスカートの女」より)
――以前、ずいのさんがX(旧Twitter)で「図書館のファンタジーな面ばかりが取り上げられることに複雑な思いがある」といった趣旨の発言をされていました。これはやはり、ご自身が図書館員だった時代から抱えていた思いだったのですか?
【ずいの】そうですね。喫茶店も同じような扱われ方をされる舞台だと思うのですが、フィクションにおける図書館って「現実の経営や大変な業務は置いておいて、人と人が出会うロマンチックな場所」として扱われがちなんです。
図書館の本に古い手紙が挟まっていて、そこから物語が始まる...といった展開もありますが、現実の職員からすると「本に物を挟まれたら困る!」と思ってしまう。そういったリアルな思いを反映して描いたのが、本に挟まった怪しい手紙に対処するエピソード(『税金で買った本』7巻収録「むらさきのスカートの女」)ですね。
――あのエピソードの出発点がそんな切実な思いにあったとは...!
究極の「理想の図書館像」とは?
――ずいのさんが考える「理想の図書館像」とはどのようなものでしょうか?
【ずいの】図書館が扱うべき本質的な対象は、「情報」や「資料」のはずなんです。ですから、電子図書館はもちろん、CDやDVDといった本以外のものも網羅されている場所が理想だと思います。ただ、これは現実の自治体の予算やさまざまな制約をぶち抜いた、かなり理想の高い話ですね...。
――図書館の方は、リアルな紙の本を充実させたいのではないかと勝手に思っていたのですが、「デジタル化を進めていくべき」という意識を持たれている方は多いのでしょうか。
【ずいの】本は圧倒的な情報量を持っていますから、紙の書籍の保存や収集という役割も当然なくてはならないものです。ただ同時に、今はインターネットやAIといった新しい情報収集の方法もありますし、デジタルの領域にもサービスを広げていくことが、これからの図書館にとって良いことだという考え方はあると思います。
最近では国立国会図書館を中心にデジタル化やアーカイブ化が進んでいるので、すごく良い方向に進んでいるなとポジティブに捉えています。









