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中国では「朝からラーメン」も当たり前? 日本とは似て非なる麺文化

中島恵(フリージャーナリスト)

2026年09月07日 公開

中国では「朝からラーメン」も当たり前? 日本とは似て非なる麺文化


湖北省武漢の朝食の定番、熱干麺(ラーガンミェン)。武漢では朝食のことを「過早」(グオザオ)といい、屋台で手軽に食べられる。

日本の食文化を代表する存在のひとつ、ラーメン。各地の店が具材に趣向を凝らし、独自の一杯を追求しています。一方、中国にも「ラーメン」と呼ばれる麺料理がありますが、日本のラーメンとは似て非なるもの。地域によっては、朝食として麺を食べることも珍しくありません。本稿では、ジャーナリスト・中島恵さんの著書『中国の回鍋肉にキャベツは使わない』をもとに、日本とはひと味違う中国のラーメン事情をご紹介します。

※本稿は中島恵著『中国の回鍋肉にキャベツは使わない』(ウェッジ)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

中国では「朝からラー活」は珍しくない

日本の国民食といえるのがラーメンだ。私はそれほどラーメン好きというわけではないのでたまにしか食べないが、好きな人は週に何回も食べている。最近流行りの言葉「ラー活」(ラーメンを食べる活動)をやっている人もいる。

確かに日本のラーメンは一杯のどんぶりの中が芸術品といえるくらい凝ったものが多い。スープ作りに何日も時間をかけるラーメン職人はあちこちにいるし、麺、チャーシュー、煮卵にもこだわっている。どこそこに知る人ぞ知るラーメン店があると聞けば、何時間もかけてわざわざ食べに行く日本人は多い。日本人のラーメン愛は本当にすごい。

昔々、「中国に行ってきた」というと、よく聞かれたのが「本場のラーメンはどうだった? やっぱり美味しい?」という質問だ。これはかなり多くの人に聞かれた。最近ではさすがにもう聞かれなくなったが、ラーメンの本場といえば中国、と多くの日本人が認識していたからだろう。

だが、SNSの発達などで中国のグルメ情報が日本にも伝わるようになってくると、中国には日本のようなラーメンは存在しないらしい、ということに多くの日本人が気づき始めた。

ラーメンは漢字で書くと「拉麺」。ラーメンの「拉」は引っ張るという意味で、引っ張って延ばした麺のことだ。中国にも「蘭州拉麺」や「河南拉麺」は存在するが、日本のラーメンとは見た目も味も少し違う。だから、日本のラーメンみたいなものを中国に行って食べたいと思うなら、中国の日本式ラーメン店に行かなければならないという、何だか変な話になってしまう。

 

朝食はガッツリ食べる

中国では、朝から麺を食べるという習慣がある。日本では朝はご飯かパンか、という二択が圧倒的に多いと思うが、中国では自宅か外食か、という二択もある。

自宅の場合はおかゆ、パン、ご飯などで、外食の場合はおかゆ、麺、油条(ヨウティアオ・中華風揚げパン)、肉まん、野菜まん、卵、豆乳、焼売...など種類がかなり多い。どんな朝食を外で食べるかは地域による差が大きいので一概に言えないが、日本では考えられないくらいガッツリ系の朝食をとる。

私も各地で中国人と一緒に外で朝食を食べた経験があり、その中でも麺料理はけっこう美味しかった記憶がある。食堂で、いくつかの麺のメニューから選ぶ。プラスチックの器に盛られていることもあり、食べたらそれをゴミ箱に捨てて、すぐに席を立つというファストフードスタイルの店もある。

日本のように具がほとんどない「素ラーメン」もあるし、朝から肉や野菜、卵がしっかりのった麺もある。日本でラーメンといえば、昼か夜のイメージだが、中国では「朝からラー活」は珍しくない。

 

武漢で食べた「熱干麺」

朝食で思い出すのは武漢の熱干麺(ラーガンミエン)だ。私が食べたのは今から40年以上も前。卒業旅行で中国各地を2か月近く歩いたときに初体験した料理だった。

正直、その味や食べた場所はあまり覚えていないが、それから20年ほど経って、2010年代の前半に北京で再び食べる機会があった。私は友人の紹介で湖北大厦という湖北省政府と関係が深いホテルに宿泊した。このホテルの一階に武漢の料理を出すレストランがあった。

取材で中国にいるときは、ほとんどの食事は誰かと一緒だが、あるとき急に予定がキャンセルになり、お昼に一人でその店に入った。

湖北省の代表的な料理がメニューにあり、店員に勧められるまま熱干麺と豆皮(ドーピー)を注文した。豆皮は大豆で作った薄い皮の中にもち米や具材を入れたものだ。どちらも武漢の有名な料理(主に朝食のときに食べる)だと言われたが、こぎれいなレストランだったので、熱干麺は自分も昔食べたことがある麺料理だということはすっかり忘れていた。しかも、政府系ホテル内にあるレストランで、繁盛してもしなくてもかまわないからか、あまり美味しくなかった。

さらにそれから数年が経ち、18年に在日中国人の友人が東京・銀座に武漢料理のレストラン「珞珈壹号(かっかいちごう)」を出店した。難しい店名は、武漢大学のキャンパスの近くにある珞珈山に由来する。

友人によると、日本ではあまり聞いたことがない武漢料理なので、最初は日本人に受け入れられるか不安だったそうだ。しかし、現在では日本人の顧客の評判もよく、人気中華料理店になっている。

この店の名物が熱干麺。とてもおしゃれで洗練されているので、これもまた、武漢や北京で食べた熱干麺とはちょっと違う。

あるとき、中国人の友人三人(それぞれ武漢出身、上海出身、南京出身)とこの店に行き、武漢出身の友人が「ぜひこれを食べてみて」と言って熱干麺を注文してくれた。

私は知っていたが、上海と南京出身の友人は初めて見たようで「これ、何?」と言っていた。友人が「武漢名物、熱干麺だよ」と言っても「へ~」というだけだったので、同じ中国人といっても聞いたことがない料理名があるのだな、と感心したものだった。

 

プロフィール

中島恵(なかじま・けい)

フリージャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。新聞記者を経て、フリージャーナリスト。
公式ホームページ http://keinaka.com/ 
著書は出版順に『トラブらないトラベル会話 広東語』(三修社)、『職は中国にあり』(夏目書房)、『ポジャギ 韓国の包む文化』(白水社)、『中国人エリートは日本人をこう見る』、『中国人の誤解 日本人の誤解』(いずれも日経プレミアシリーズ)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中央公論新社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『中国人エリートは日本をめざす』(中央公論新社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』『日本の「中国人」社会』『中国人は見ている。』(いずれも日経プレミアシリーズ)、『中国人のお金の使い道』(PHP研究所)、『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)がある。

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