人は人によって磨かれる──本質的、長期的、客観的な視点で考えよう
2013年07月05日 公開 2024年12月16日 更新
《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2013年7・8月号 Vol.12【特集・哲学ある人づくり】より》
いま注目の人材教育コンサルティング会社の経営者として、常に人が成長するプロセスを追究してきた青木仁志氏。
“人は磨けば必ず育つ”との思いは、みずからの生い立ちをふり返っても確信できることだった。セールスマン時代に、人間の内発的動機を重視する「選択理論」と出合い、人が目標や志を持つことから成長するというその法則を基に、最強のプログラム講座として確立。昨今では、自然に人が育つ企業文化の重要性を説く。注目の経営者が語る人づくりの要諦とは。
<取材・構成:阿部久美子/写真撮影:永井浩>
「サクセス」と「ハピネス」を手に入れられる会社に
「人を幸せにする経営者になりたい」──26年前、社員5名、資本金500万円、マンションの一室で創業したときからの私のモットーです。
当時、「そんな綺麗事を言っていたら、たちまちつぶれるぞ。経営で大事なのは利益だ、利潤の追求だ」と言った人がいました。いま、その人の会社と弊社とどちらがよい会社になっているか。贔屓目でなく弊社だと私は断言できます。
多くのお客さまに支えられて順調に成長し、現在、社員110名ですが、よい人材がどんどん集まる誇らしい会社に育てることができています。日本経済新聞社が就活生を対象にして行なった「就職希望企業調査」(2013年2月発表)では、「サービス業・その他」部門で13位に、社員300名以下の中小企業では人気ナンバーワンになることができました。優秀な新卒の学生たちが「入りたい」「働きたい」と言ってくれる会社になっているのです。
企業ですから、利潤を上げることはもちろん重要です。しかしそれは経営の目的ではなく、あくまでも「結果」です。松下幸之助さんは「自主責任経営」ということをおっしゃいましたが、一人ひとりが自分の仕事にやりがいを感じ、責任を感じて目標達成をめざしていくことが、個人の成長になり、ひいては企業の発展になります。
会社とは、「理念」を掲げ、「志」で動かしていくものだと私は考えています。個人でできないことをするために、組織がある。経営者に志があれば、それに共鳴するピカピカのよい人材が集まってくる。それぞれが自分の責任を果たそうとして、結果、経営が上向きになる。企業の発展は、その結果なんですね。
私はこれを個人の自己実現のピラミッドと、企業の発展のピラミッドをすり合わせることだと考えています。土台となるのが「理念」です。理念に基づいて明確なビジョンを構築する。それを具現化するために「目標」を立て、実務的な「計画」を練り、日々「実践」していく。経営者の理念に基づく企業の発展と、個人の自己実現がうまくかみ合って、人がどんどん価値を生み出し、よい循環で拡大していく。これが私の考える経営の姿です。
そうやってよいサイクルができると、ビジネスにおいては「サクセス」を、プライベートにおいては「ハピネス」を手に入れられる。事業を通して、縁ある人たちを物心両面で幸せに導いていくことができる。私の言う「人を幸せにする経営」とは、ふわふわした夢経営ではなく、理念と志の経営手法なのです。
落とさない採用システム
人はキャピタル、資本です。私がいろいろ教えを請うている坂本光司先生(法政大学大学院教授)は、「人材」とは「人財」だと常々言っておられますが、私もまったく同感です。
弊社は人材教育の研修会社、コンサルティング会社ですから、できるだけよい人を採用したい。新卒採用を始めたのはいまから九年前です。私としては理念に共感してくれる「徳」と「才」のある人間を採用したいわけですが、普通の採用システムですと、才のあるパフォーマンス型の人材が有利になってしまう。もちろん才あることはよいことですが、自分の才におごってしまう人は「我」も強い。組織全体を引き上げていくためのよいパワーにならないことも多いのです。そこで、弊社の採用活動において大切にしている考え方が、「理念共感型採用」です。
☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。