「寝る1時間前からスマホは触らない」 忙しい人でも手軽にできる快眠ルーティン4選
2026年10月26日 公開
「睡眠時間があまり取れていない」――そう感じている人も多いでしょう。その理由として、長時間労働やデジタル機器の使い過ぎなどが挙げられますが、「眠るための準備ができていないことも原因である」と、株式会社クロスリバー代表取締役社長の越川慎司さんはいいます。
睡眠の質を高めるために心がけるべきことは何か。本稿では、就寝前のルーティンの重要性や海外の一流も実践している快眠習慣を紹介します。
※本稿は、越川慎司著『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
決まったルーティンがないと脳は眠くならない
眠るための助走時間が重要であると、数々のトップアスリートを指導してきた睡眠コーチのニック・リトルヘイルズも指摘しています。彼は、全英でベストセラーとなった著書『世界最高のスリープコーチが教える究極の睡眠術』の中で、入眠に適した状態を作るためのルーティンが不可欠であることを説いています。
人間の体温は夜になると自然に下がるため、暖房を強くし過ぎることは生理的な摂理に反します。そのため冬は寝る前に暖房を切り、夏はエアコンを活用して部屋を涼しく保つ工夫が求められます。
また、暗くなると眠気を誘うメラトニンの生成が始まるため、部屋を真っ暗にすることも大切です。毎日同じ環境を整えることで、脳はその環境を眠るための準備段階として正しく認識するようになります。
リトルヘイルズは、90分を1つの単位として眠ることを推奨しています。人間の睡眠サイクルは約90分で構成されるため、眠りに落ちてから90分、180分、270分といった区切りの良いポイントで目覚めると、自然に起きやすくなります。反対に、この周期の途中で目覚めてしまうと、たとえ睡眠時間が長くても疲れが取れません。
この考え方は、クリスティアーノ・ロナウドといったサッカーの超一流選手たちの睡眠指導にも取り入れられています。アスリートたちは起床時間から逆算し、90分の倍数になるように就寝時間を決めています。
決まったルーティンや環境が整っていないと、脳は「いつ眠るモードに入るべきか」を毎晩判断しなければなりません。判断という行為は脳のエネルギーを消費させ、その結果として覚醒度を上げてしまいます。
日本のビジネスパーソンの夜は、残業による帰宅時間の遅れや会食、深夜のテレビ視聴など、日によって過ごし方が大きく異なります。その時々で夜の時間の使い方が変わっては、脳は眠るタイミングを適切に判断できません。睡眠の質を高めるためには、寝る前のルーティンを固定することが求められます。
夜の時間を取り戻すデジタル・サンセットという儀式
寝る前のルーティンのなかでも欠かせない習慣が、「デジタル・サンセット」です。これは、1日のある時刻を境に、スマートフォンやパソコン、テレビといったデジタル機器の使用を意図的に停止する「デジタルの日没」を意味します。
この概念は近年、シリコンバレーや欧州の経営者の間で急速に広まっています。皮肉なことに、AIや半導体といったデジタルの最前線に立つ人々ほど、夜の時間は意識的にデバイスから距離を置いています。
スマートフォンの普及によって、現代人の夜は静かに侵食されてきました。布団に入る直前までSNSをスクロールし、深夜にメールを確認して、寝つけなければ再びスマホを開くといった行為が常態化しています。気がつけば、夜の貴重な数時間がデジタル機器に占拠されているのです。世界の一流はこうした現状に危機感を抱き、夜の時間を取り戻すための仕組みとして、デジタル・サンセットを実践しています。
スマートフォンを夜遅くまで使い続けることには、科学的な弊害が数多く存在します。デバイスから放たれるブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、入眠を妨げます。厚生労働省の生活習慣病予防情報サイト「e-ヘルスネット」においても、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は睡眠の質を低下させる要因として明記されています。
また、SNSから流れてくる情報は脳にドーパミンを継続的に分泌させ、脳を刺激中毒の状態に陥らせます。仕事のメールやチャットも同様に、就寝前の脳を仕事モードから切り替えさせてくれません。
さらに深刻な問題は、他人のアジェンダに自分の夜が支配されてしまう点です。デジタル機器を見続ける行為は、他人が発信する情報を無防備に受け取り続けることを意味します。SNSの知人の投稿、不安を煽るニュースの見出し、突然届く仕事の依頼などは、いずれも自分が能動的に選んだものではありません。アルゴリズムによって最適化された「他人の都合」が、夜の脳に絶え間なく流れ込んできます。
こうした状態を毎晩繰り返していると、今日という1日の達成感や明日への意欲、そして今現在の思考といった「自分自身の内なる声」を聴く余裕が失われていきます。本来、夜は自分自身と向き合い、自分を取り戻すための時間です。デジタル機器を使い続けることは、その大切な機会を喪失していることに他なりません。
帰宅後の時間が限られている人でもできる快眠習慣
ここからは弊社が日本企業を対象に実施した、快眠を得るためのルーティンの効果検証実験を紹介します。
日本のビジネスパーソンは長時間労働が常態化しており、夜の自由時間が限られているという実情があります。このような状況下で、海外の一流が実践する習慣を真似することができるのか。短時間かつ最小限の行動であっても、確かな効果を得られるのかを検証しました。
弊社は、製造業やIT、金融、サービス業など20業種815社、計17万3208人に及ぶデータベースを保有しています。今回の検証では、その中から129社428名を対象に選び、12週間にわたる実験を行いました。なお、本検証は参加者の自己申告に基づくものであり、医学的検証や臨床試験ではないため、結果には個人差が生じます。
検証したルーティンは、大きく分けて4つあります。
①就寝1時間前にデジタル機器を手放す
スマホ、パソコン、テレビ等と接触しない時間を設けます。
②寝室にスマホを持ち込まない
スマホはリビングなどで充電します。
③寝る前の7分間に1日を振り返る
今日1日に対する感謝や達成したことをノートに書きます。
④就寝前のルーティンを繰り返す
シャワーを浴びてからストレッチを行うなど、毎日同じ動作を繰り返します。
参加者は、これら4つのルーティンのうち、自身が取り組みやすいものから開始し、12週間継続しました。検証期間中は、週次の自己申告アンケートを通じて、睡眠の質、翌朝の疲労感、午前中の集中力、および仕事への前向きさを測定しました。
12週間が経過した結果、参加者の睡眠の質と仕事のパフォーマンスには、明確な変化が現れました。睡眠の質が改善したと感じた参加者は全体の82%に達し、翌朝の慢性的な疲労感が軽減したと回答した人は74%にのぼりました。また、午前中の集中力が上がったと感じた人は68%で、仕事への前向きさが増したと回答した人は79%を記録しました。
参加者からは、試せばある程度効果が出ることはわかっていたが、ついスマホを見てしまうなど、これまで実践できなかったので、いい機会になったという声が寄せられました。夜にデジタル機器を使わなくなった分、家族との会話が増えたことを喜ぶ声や、翌朝のコンディションが整ったことで心に余裕が生まれ、職場で部下を褒めることができたという変化も報告されています。
日本人も海外の人も脳の基本的な構造は共通しているため、世界の一流が実践して効果を上げている習慣は、私たち日本人にも同様の効果をもたらすと考えられます。今回の実験を通じて、帰宅後の自由時間が少ない日本のビジネスパーソンであっても、提示した習慣をどれか1つ実践するだけで一定の効果を得られることがわかりました。
ぜひ今夜から、紹介した習慣を1つでも試してみてください。意外に早く、その効果を実感できるはずです。









