北尾吉孝・考える力は「主体的に学ぶ」ことで高まる!
2014年02月03日 公開 2024年12月16日 更新
過去の知識は今に照らして活かす
考えるために必要な“学び”は、単純に知識を覚えることではない。
「鎌倉時代の学僧・虎関禅師はこういう言葉を残しています。『古教照心 心照古教(古教 心を照らし 心 古教を照らす)」。過去の知恵に学ぶべきことはたくさんあります。しかし、大事なのは、歴史を現在に、また自分の仕事に照らし合わせることなのです。
私はSBI証券を立ち上げるにあたって、ヘーゲルの“量質転化の法則”にヒントを得てビジネスモデルを考えました。それまでの証券会社は、高い手数料で少ない顧客を囲っていました。しかし私たちは、低い手数料でより多くの顧客を集めることにしたのです。量が質を高め、質が高まればさらに量が増える、と考えたのです。
また、組織を構築する際には複雑系の科学の考え方を取り入れました。銀行、証券、保険という多彩な組織が相互に関係することで、個々にはない特性が全体に表われることを期待したのです。
知識は、それだけでは何にもなりません。学んだことをどう活かすかを考える。活かし方がわかって初めて意味を持つのです」
こうした大局的な思考は経営者だけに必要なものと思われるかもしれない。しかし、モノを売るという行為すべてに必要なことだ。
「どんなモノであれ、モノを売るということは、相手を動かすということです。相手が何を欲しているか、相手の目線に立って考える必要があります。
さらに、そもそもニーズがあるのか、検証が必要です。そのためには、時流をとらえる必要があります。
世の中にはハウツー本があふれています。しかし、それらは、彗星のごとく現われて、彗星のごとく消えていってはいないでしょうか。お金儲けの方法を1冊書いて当たった人はいます。でも、そうした人で、恒常的に儲けている人はいるのでしょうか。
私は、ハウツー本よりも、歴史、哲学、先人の知恵に学ぶほうがいいと思います。多くの普遍的な情報を積み重ねると、直観力を養うことができます。すると、ビジネスとは関係ない分野の本を読んでいても、仕事のアイデアが浮かんでくるようになります。重要な決断も即時にできるようになります。
ただし、その前提として、つねに自分の仕事と新たに得る知識を照らし合わせることが不可欠です。ただ本を読むのではなく、主体性を持って、『考えながら学んで』ください」