北京五輪金メダルのソフトボールチームや、夏の甲子園2連覇の駒大苫小牧高校野球部などの指導で知られ、多くの経営者から「能力開発の魔術師」として尊敬を集める西田文郎先生。先生とのご縁は10年前、主宰される「西田塾」の門を叩いたことから始まりました。
数多くの自己啓発・能力開発セミナーを受講してきた私にとって、“最後の授業”“最後の先生”となりました。門下生として「今の自分を見ていただきたい」という思いとともに、先生がなぜ経営者の育成に力を入れておられるのか、インタビュアーとしてその思いの深奥に迫ってみたいと思います。
《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』 2014年7・8月号Vol.18より》
<構成:阿部久美子/写真撮影:山口結子>
最初は「根拠のない自信」が大事
【朝倉】3年ぶりにお会いしましたが、まったくお変わりなく、むしろさらにエネルギッシュになられたようにお見受けします。
【西田】ははは。新しい会社を始めて気合が入っているからかな。
【朝倉】私が「西田塾」の門を叩いたのが2004年でした。先生は『No.1理論』というご著書も出しておられますが、「やる以上はナンバーワンを取らなければいけない」という西田先生のお考えにたいへん共鳴して、いろいろ勉強させていただきました。
【西田】朝倉さんは当時から「すごいな」と思わせる何かを持っていましたよ。
【朝倉】当時、私はまだ会社を設立する前でした。帝国ホテルタワーに事務所を構えたり、多額の借金を抱えながら高額のセミナーを受けたり、西田塾に行くと言い出したり……周囲からはあきれられていたんです。
【西田】でも、どこかで自信はあったでしょう?
【朝倉】そうですね、“自分はこうなりたい”という“画(え)”はかなり鮮明に頭の中に浮かんでいました。
【西田】それ、それが大事なんですよ! 一般常識的な感覚ではありえないことにチャレンジできるのは、“この道を進めばうまくいく”という自信があるからなんですね。そこに根拠はないんです。根拠はないけれど、チャレンジする意欲を持てる。それが成功する人に共通する特徴です。
ビジネス、スポーツ、受験……、成功する人はみんな“自分はできる”というイメージを強く持っています。実はこれ、性格のように思われがちですが、性格ではない。思考の習慣、思考のクセづけなんです。
【朝倉】だからトレーニングでだれでも変われるわけですね。
【西田】そうです。朝倉さんは西田塾に来る前からそういう思考習慣ができていたんですよ。
人は「考え方のクセづけ」で変わる
【朝倉】西田先生が今のお仕事を始められたきっかけについて教えていただけますか。
【西田】29歳まで東証一部上場企業で営業の仕事をしていましたが、経営者が替わったことでいろいろあって、独立することにしました。教育をやりたかったんです。今と違って1970年代には、上場企業の社員の立場を捨てて独立するのはかなり驚かれました。
【朝倉】そうでしょうね。奥様は反対されなかったのですか。
【西田】私がすごく強気で「絶対に成功するから」と言っていたので、なんとかするだろうと思っていたみたいですね(笑)。
当時、たまたまドイツのスポーツ選手で、それまで脚光を浴びていなかった人が絶対的エースを破って世界チャンピオンになったことがありました。そのとき、「そういう人にはふつうの人と1カ所だけ違うところがある。それはイメージ力だ」という話を聞きました。「できると思い込んでいるかどうか」だというのです。
これを知って面白いなあと思って、人生の師と仰いでいた人にその話をしたのです。「ビジネスマンも同じではないでしょうか」と。「調べてみなさい」と言われました。
そこでいろんな大学に問い合わせてみたのですが、どこもやっていない。脳の病気の研究はしていても、機能研究をやっているところがなかったのです。機能研究はお金にならないと考えられていたからです。
【朝倉】今は脳科学がたいへんな人気を呼んでいますね。
【西田】そう。だけどその当時はどこも気づいていなかった。それを報告したら、「じゃあ、お前がやればいい」と言われてしまった。尊敬する人に言われたらイヤとは言えません。成り行きで、私は大脳生理学の研究を始めることになったわけです。