「バカな」経営戦略でも成功する「なるほど」納得の理由
2014年09月16日 公開 2021年03月23日 更新
「バカな」戦略が成功する理由
3社の経営戦略のケースは、成功する戦略には2つの条件がなければならないことを教えている。差別性と合理性である。
差別性とは、多くの企業がとっている常識的な戦略とちがう戦略、つまり非常識な戦略である。平たくいえば、「バカな」といわれるくらい他社とちがう戦略である。
もう1つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たくいえば、「なるほど」と納得のできることである。
戦略の2大条件の差別性と合理性のうち、強いていえば、差別性のほうが重要である。合理性のほうを重視すると、平凡な、常識的な戦略になりやすいからである。
常識的な戦略では競争に勝てない。競争に勝つためには、競争会社の戦略とはちがう独自な戦略がなければならない。戦略の差別性が重要なのはこのためである。
戦略の差別性は、考えてみると、2通りのものがある。1つは、「たいしたものだ」「さすかだ」「あれはいい」などといわれる差別性である。他社から尊敬され、高く評価される差別性である。
もう一つは3社のケースでみたような、バカよばわりされる差別性である。他社から軽蔑される差別性である。私は尊敬される差別性より、後者の軽蔑され、バカにされる差別性のほうが、戦略が備えるべき差別性の特徴としてはずっと重要であると思う。なぜか。
みんなが尊敬し、あこがれる差別性の場合、競争会社はすぐにその戦略を模倣する。競争がはげしい日本のことであるから、他社はだまってみていない。
差別的な戦略によって他社に差をつけるつもりでいても、他社がそうはさせないのである。あっというまに新規参入がはじまり、競争がはげしくなり、創業者利潤がなくなってしまう。
これにたいして「バカな」戦略の場合、模倣がおくれやすい。競争会社は「バカな」「あんなことをしたらおしまいだ」などと思っているから、じっとみている。その間「バカな」戦略の企業は足元を固め、創業者利潤を享受できる。
やがてそのうちに、他社がその「バカな」戦略の成功に気づく。しかし、どう考えてもおかしいということで、なかなか模倣しようとはしない。戦略の成功が明々白々の状態になり、その戦略の有効性を否定しようにも否定できなくなってはじめて、競争会社のマネがはじまるのである。
新しい戦略を打ち出したとき、他社からバカよばわりされたり、軽蔑されたら、そのときは内心「しめた」と思っていただきたい。その戦略は、成功条件のうちの1つ、それも重要なほうの条件を備えているからである。