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安倍総理、専業主婦を馬鹿にしていませんか?

さかもと未明(作家/漫画家)

2014年11月25日 公開 2024年12月16日 更新

安倍総理、専業主婦を馬鹿にしていませんか?

 

この国で安心して子育てなんてできませんよ

 前略 安倍総理におかれましては、つねに精力的なご活動、お疲れさまでございます。

 いつも敬服しつつ応援させていただいております。

 内閣改造のあとは、立てつづけに大臣交代、新閣僚のスキャンダル噴出とご苦労も多かったことと存じますが、国会で公職選挙法違反や使途不明金などが問題にあがったときから、「これが見過ごされるようであれば法治国家として成立していないことになる」と、危ぶんでおりました。

 国立競技場解体工事における談合疑惑、年金の半分以上を運用に充てるなどという馬鹿げた政策、いまだ国民が生活苦に喘ぐなかでの増税といったことについて、不正については徹底的に正し、改めるべきものは審議がなされなければならないと思います。

 ところが国会では、まともな審議ができる状況ではなくなっていました。俗なスキャンダルに報道が終始し、本質的な問題が国民の視点から外れていた以上、選挙において政策を明確に打ち出していただき、国民の判断に委ねるべき時期だと思っておりました。

 私たち国民も今回ばかりは「難しい」と言わずに政策によく耳を傾け、自分たちの未来に対して責任をとれる投票をしなくてはならないと思います。

 私はかねてより総理の人間的魅力、メディアを通してでも垣間見えるお優しさ、「美しい国」というキャッチフレーズで進めていらした政策に惹かれ、陰ながら応援させていただいておりました。でも、「アベノミクス」で総理が進めようとされている政策の多くは、かつてめざされていた高尚なる「美しい国」から大きくズレているように思えてなりません。

 さらなる量的緩和の実施で一時的に株価が上がったり、大企業にお金がまわって経済効果があったように見えるのかもしれませんが、形だけ数値で「景気が回復した」「経済は好調である」と言われても、多くの国民は年金問題や少子高齢化、雇用の崩壊におののいています。残業代ゼロが実施されれば賃金が下がるのではないか、そうすれば子供にまともな教育を与えてあげられないのではないかと不安を抱えています。

 この国は、当たり前に家族をもち、夫婦が支え合いながら女性が安心して子育てできる国からどんどん離れているのではないでしょうか。

 

とりあえず産んで働けということですか?

 そういえば、配偶者控除の廃止というご提案もされていらっしゃいましたね。

 安倍総理が打ち出した政策のなかで、内閣改造以降、執拗なほどに叫んでいらっしゃる「女性の活躍」「女性が輝く社会」「女性管理職を30パーセントに」といったキャッチフレーズに、私はとくに違和感を覚えずにはいられません。

 それは一見すると耳心地がよく、すばらしいことのように思われるかもしれませんが、私だけではなく、いまや多くの人たちが「数値だけそろえて女性の働きやすい社会と言ってもまやかしではないか、むしろ女性を馬鹿にしていないか」と疑問を口にしはじめています。アベノミクスに感じるまやかしの感覚にそれは似ています。

 総理はさっそく女性閣僚を多数登用されましたが、いかにも「数だけそろえた」という印象だったうえに、スキャンダルで早くも2人の女性閣僚が辞任にいたりました。「まだまだ女は甘いからダメだ」と言われかねない結果になってしまった。それはとても残念なことです。

 もっときちんとしたかたちで、ほんとうに力のある女性閣僚に誕生してほしいと私たちは願っているのに、彼女たちは国会答弁においても、「党の方針に従います」というような発言しかさせてもらえていませんでした。まさに「お飾り閣僚」でしかない。真の女性政治家など、まだまだ生まれていないと感じたのが正直なところです。

 それ以上に、少子化がこれだけ問題になっているのに、すべての女性に何がなんでも社会進出を、と推し進めることがほんとうに国のためになるのでしょうか。

 私たち女性はとりあえず産めばいいのですか?

 働けばいいのですか?

 両方やれと言われるけれども、それは簡単なことではないはずです。

 わが国が抱えるもっとも深刻な問題は少子化にほかならないのです。税収不足も年金崩壊も、経済縮小も雇用崩壊も、ありとあらゆる問題が少子化によって引き起こされているにもかかわらず、政府はその本質について論じないまま小手先の理想論ばかり言っている気がしてなりません。女性に対する目標設定、家族のモデルプランがそもそも間違っていないか、ここで国を挙げて問いなおすことが必要なのではないかと私は思うのです。

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著者紹介

さかもと未明(さかもと・みめい)

漫画家、作家

1965年、神奈川県生まれ。玉川大学英文科卒業後、商社勤務を経て1989年漫画家に。2000年、『文學界』で作家デビュー。以後、エッセイ、評論、コメンテーターと活躍の場を広げ、歌手デビューも果たした。2007年に膠原病と診断され、発達障害だったことも明らかに。闘病しながら執筆を続けている。
著書に『マンガ ローマ帝国の歴史』(全3巻、講談社)、『神様は、いじわる』(文春新書)など多数。

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