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震災後の成長性を決める6つの観点

藤野英人

2011年06月02日 公開 2023年10月04日 更新

《『500人の社長に会ったプロが教える!伸びる会社vs危ない会社 の見分け方』より》

非常時の対応で見える会社の本質

 東日本大震災はマグニチュード9・0の歴史上類のない大震災で、地震の被害だけでなく津波、原発の事故と想像もつかない規模の被害が出ました。
 このような非常時にどのような対応をしたかということで会社の本質が見えると思います。6つの観点から見ていくべきだと思っています。

①被災地のためにどのような行動を取ったのか:
被災地に募金や寄付などを行ったり、現地の被災者のために何か特別なことをしたかどうかは、まずは人道的な観点で必要です。企業の社会的責任の重要性をふだん唱えていても、このような過去例のない事態で何もしない会社であれば、今後実際は何もしない会社である可能性は高いでしょう。
 三菱商事が震災後に100億円の義援金と年間1200名のボランティアを派遣するという話がありますし、ソフトバンクの孫正義社長が個人で100億円、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正社長が10億円、楽天の三木谷浩史社長が10億円の義援金を拠出するなど、企業としてまた企業経営者個人として積極的に関わっていることに関しては、素直に賞賛をしたいと思います。

②お客様のためにどのような対応を取ったのか:
会社のなかには震災で被災された方もきっとおられると思います。この震災によって不利益を被ったお客様に具体的にどのような行動をしたのかというのは、お客様をどのように考えているのか見極めるよい機会です。

経営陣と社員で
価値観の変化について議論したか

③株主のためにどのような対応をしたのか:
株主や投資家は震災があった後、いろいろな意味で投資をしている会社を不安に感じたと思います。そこで速やかに投資家向けメッセージを発信したり、会社の被害状況をディスクロージャーしたりして、積極的に発信をするような会社は安心ができます。

④仕入れ先にどのような対応をしたのか:
東日本大震災で多くの工場やお店が被災をしました。実際に多くの企業が仕入れ先から商品が供給できなくなったために生産がストップするような事態になりました。そのときにその仕入れ先にどのような支援をしたのか、そして仕入れられなくなった商品をどこから入手したのか、また仕入れ先が復旧をしたときにまた仕事を再開したのかしなかったのか、などはその会社の企業の経営方針や哲学と密接に関連しています。

⑤社員のためにどのような対応をしたのか:
東北方面に出店をしている会社、工場を持っている会社、物流拠点のある会社はたくさんあります。自社の社員の安全確保にどの程度力を尽くしたのか、その家族などに対する支援を行ったのか、健康面や心のケアも含めてきめ細かく対応をしたのか、などが大切です。
 電子部品商社のエレマテックの櫻井恵会長は震災があってからすぐに仙台に向かい、仙台で対策本部をつくり陣頭指揮に立ち、被災した社員と語り合い、心のケアもしたそうです。きっと社員も励まされたことでしょう。

⑥中期的な成長戦略を速やかに見直したり議論をしたか:
今回の震災を機に、人々の価値観やライフスタイルが変化する可能性があります。その大きな価値観の変化に際してそれを真正面から捉えて、真撃に経営陣で議論をする、もしくは社員とともに議論をする会社は震災後も成長する可能性が高いでしょう。

img01.jpg 藤野英人(ふじの ひでと)
年金・投資信託運用のレオス・キャピタルワークス(東京都千代田区)の創業者・取締役最高投資責任者(CIO)。レオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」ファンドマネジャー。野村系、JPモルガン系、ゴールドマン・サックス系の資産運用会社を経て、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ。東証アカデミーフェロー。明治大学非常勤講師。 主な著書に『スリッパの法則』『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』(以上、PHP研究所)『運用のプロが教える草食系投資』(共著/日本経済新聞出版社)『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら』(阪急コミュニケーションズ)など。

書籍紹介

5000人の社長に会ったプロが教える! 伸びる会社vs危ない会社の見わけ方

『5000人の社長に会ったプロが教える! 伸びる会社vs危ない会社の見わけ方』

藤野英人著
税込価格 840円(本体価格800円)
東日本大震災を機に、ビジネスの価値観が大きく変わろうとしています。AQ(アフター・クウェイク)時代の新しい風をつかみ、伸びていく会社は何が違うのでしょうか?
 多くの日本企業を「診断」してきた経験豊富なファンドマネージャーが、盛衰を読み解くうえで欠かせない"40の法則"を伝授します。
 著者が見て、聞いて確かめたエピソード満載の、現場感覚あふれる会社論。

関連書籍

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『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』

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税込価格 861円(本体価格820円)
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