日本代表よ、文句なしの「攻撃的サッカー」をみせてくれ!
2015年11月17日 公開 2022年09月28日 更新
3FW型0トップの時代
2018年ロシアW杯アジア二次予選、対アフガニスタン戦(2015年9月)。舞台は中立地のテヘランで、スタンドはガラガラだった。にもかかわらず、実況アナ氏は「完全アウェー」を何度も連呼。危機感を煽りまくった。日本のサッカーよりそちらのほうが心配になるほどだったが、実際の日本代表は、アナ氏の煽りにも負けず、いつになくよいサッカーをした。カンボジア戦、シンガポール戦、東アジアカップより格段に。なにより展開力に富んでいた。ハリルホジッチの采配も、左ウイングの原口(元気)を途中から右サイドバックで使うなど、これまでとは少し違う面を覗かせた。左サイドで長友(佑都)、香川(真司)が細かく絡み、それを受けた宇佐美(貴史)の折り返しを、本田(圭佑)がスライディングでねじ込んだ6点目のゴールなどは、本書で述べた理想のゴールに近いものだった。
相手はアフガニスタン。褒めてどうするのと突っ込まれそうだが、攻めのルートやメンバー交代は、強い相手との対戦でも活かされるもの。たった一試合の出来事なので確信はないが、今後に少しばかり明るい兆しが見えたことは確かだ。
これに、アギーレ式4‐3‐3(3‐4‐3)や、岡田(武史)サンが南アW杯で見せた0トップの要素等が加味されれば、サッカーはもっと面白くなる。
3FW型0トップの時代だと思う。本田の0トップを最初に言い出したのは僕だと思うけれど、0トップを初めて欧州で見た瞬間、これは使えると、ピンときたことを思い出す。
それはいま、欧州で着実に広がりを見せている。
新しいものにサッと飛びついた日本人監督と言えば、加茂周元日本代表監督になるが、最先端をいくプレッシングをいち早く取り入れようとしたその姿は当時、カリスマ性に溢れていた。代表監督としては成功しなかったが、日本人のなかでいまなお、最も監督らしい監督に見える。
0トップはいまのところ有効な封じ手がない、採用した者勝ちの状態にある。サッと飛びつく監督は現れないものか。ハリルホジッチを含めて。惜しい気がする。
著者:杉山茂樹
1959年、静岡県生まれ。大学卒業後、フリーのスポーツライターとして、スポーツ総合誌やサッカー専門誌などで執筆。海外取材も豊富で、オリンピックには夏季・冬季あわせて9回、FIFAワールドカップには8回、UEFAチャンピオンズリーグにいたっては、300試合以上の観戦取材歴がある。著書に『ドーハ以後』『闘う都市』(以上、文藝春秋)『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(以上、光文社新書)『日本サッカー現場検証』『日本サッカー偏差値52』(以上、じっぴコンパクト)『ザックジャパン「頭脳的サッカー」で強豪は倒せる』(PHPエディターズ・グループ)『3-4-3』(集英社新書)などがある。