ママっ子男子とバブルママ
母親との買い物は当たり前。恋の相談や、2人きりの旅行だって……。「マザコン批判」から解放された新たな「母息子像」の実態とは……?
これまで日本では、母親と仲のよい男子は「マザコン!」と糾弾される対象でした。しかし、それが近年、大きく変化しています。等身大の目線でつきあえる友達のような、上下関係の少ないフラットな母息子関係が当たり前のものになってきているのです。
当の本人たちはその関係を「恥ずかしい」と思うどころか、大いにエンジョイし、同世代の女子たちもそんな構図を好ましく思っています。
そして、この「母息子」セットの消費が、低迷が続く現代日本の経済の大きな起爆剤になる可能性さえ秘めていて――。
本書『ママっ子男子とバブルママ(原田曜平著 、PHP新書)では、バブル世代の母とさとり世代の息子、今時の親子像とその影響力を豊富な実例で分析しています。今回は、本書より、ママっ子男子を生み出したバブル世代の美魔女ママたちの座談会のほんの一部を抜粋編集してご紹介します。聞き手は博報堂若者研究所アナリスト、著者の原田曜平氏です。
バブル世代の美魔女ママ座談会
息子と仲がよいという自覚はある
原田 ママっ子男子というテーマで息子さんたちには、いろいろとお話をうかがったのですが、みなさん自身は周りの人よりも息子さんとの仲がいいという自覚はありますか?
A うちは、息子がおしゃべりなせいもありますが、息子のことをけっこう把握している方だと思います。息子が高校生の頃、お母さんたちと話すと、「男の子はしゃべらないから(何を考えているのか)わからない」とおっしゃる方が多かったですね。あまり、ここで話すと息子に怒られてしまいますけど(笑)、恋愛や彼女のことも私が聞けば、「うるせえな」といいつつ話してくれます。ちょっと前まで彼女がいたけど今は別れているとか。クリスマスイブには同じ学部の女の子と2人でスキーに行って日帰りするとか、次の日はサークルの女の先輩と飲みに行って、別の日には後輩の女の子と行くとか。
原田 全部彼女なんですか? モテますね。
A 彼女ではないということでした。「人でなしといわれたりしないの?」と聞いたんですけど、息子によれば「自分は3人くらいまでしか話せないから、少人数の方がいい」んだそうです。
主人が仕事ばかりしていたため、息子は私と妹という女性だけに囲まれて育ち、ちょっと中性的な性格をしていると思います。だから女性に対して慣れていて、変な幻想を持っておらず、けっこう恐いことを理解しているところがありますね。
B うちもやっぱりすごくおしゃべりですよ。出かける予定なども全部話してくれますが、相手は全部男の子。彼女は欲しいようですが、まだできないようです。大学1年の時に「彼女、まだ?」と聞いたら「1年生の女の子は2年生の男子とくっつくものだから」と答えていたので、2年になって改めて聞いたら無言でした(笑)。そういう感じの話をするほか、息子がお勧めのゲームや本を教えてくれるので、一緒にゲームしたりしますね。
C 他の男の子と比較すれば、やはり親子仲はよいと思います。うちには高2の娘もいますが無口で、息子に圧倒されているようです。息子は昔から一度決めたら絶対に曲げない性格で、大人も含めて周りを巻き込んで何かを進めていくところがあります。
私とは、彼女の話も含めて、自分が何をやっているのかについて話してくれますね。彼女がいる時は、家に連れてきて、お菓子を出してくれだとか、そろそろ部屋から出て行ってくれとか、帰る頃には車で送ってやってくれとか。もう、奴隷みたいな扱いになってしまっています(笑)。
彼女が来る時は、いつの間にか私も含めて3人で仲よく話すようになっていきますね。ただ、彼女の入れ替わりは激しく、今彼女がいるかわからないですけど。今はサークルなどで忙しくてそんな暇もなさそうです。
原田 すごい。姑の支配下に嫁がいた、あるいは、姑と嫁が緊張関係にあった過去の日本とはまったく異なり、母親と彼女と息子が3人で仲よしだったり、息子の指示で母親が彼女のしもべになったりしているんですね(笑)。
D うちの場合、息子としゃべる機会はよくありますが、あまりおしゃべりではなく、こちらから聞かない限り答えてこないタイプ。メールもこちらが出せば、返信してくる程度。
その上、つきあう友だちも男ばかりですから。ただ、性格は穏やかなので、何を聞いても拒絶したりはしません。
息子が実家にいる時は、一緒に買い物や外食に出かけることはよくありました。下宿してからは会う機会がなくなりましたが、下宿があまりにも汚くなったので、掃除に来てほしいといわれることがあります。掃除に行くのは年に2回くらいですが、その時に一緒に夕食を食べに行ったりします。
最近息子と一緒に買い物に行くことはなくなりましたが、以前は服が欲しくなると、買い物につきあってくれと私にいうんです。ショッピングセンターに一緒に出かけると、欲しいモノが見つかったら、メールするのでどっか回ってて」といわれて。どこそこに来てくれとメールが来るので、こちらが出向くと試着したのを見せられて、どっちがいいか尋ねられたものです。買うのは私ですけどね(笑)。
原田 若い世代にインタビューしていると、ママが「お財布」兼「スタイリスト」になっているケースが多いことに気づきます。昔は、母親と子どもの感性が明らかにずれていましたが、今は服が自分に似合うかどうか、母親に聞く人が多いんですよ。僕は大学生の時、母親が買ってきた服をそのまま着て、周りの友だちから「学校の先生のファッションみたいだ」とからかわれた経験がありますが。
今は、お母さん方も若々しく、感性も豊かになってきたことにより、ファッションについて母親に尋ねる男子が増えていると思いますが、みなさんのおうちではいかがでしょう?
C うちの場合、中学が私服でしたから、息子は私が選んだ私服を着て学校に通っていました。友だちからは「お前いい服着てるね」と褒められたりしていたので、ファッションに関する立ち位置は私の方が上でした。高校生になると、周りもおしゃれになり、息子も自分で古着を買いに行くようになったので、口は出さなくなりましたが。
A うちの場合、息子が服を勝手に買ってきて、私に「どう?」って自慢してくる感じです。でもすでにお金を払ったあとですから、私が「え~?」などといおうものなら、すごくしつこく絡んできますね。だから、「すっごく似合ってるよ」と答えるようにしています(笑)。
原田 お母さんに対して買って来た服を見せる「ファッションショー男子」(笑)。これ、本当に仲のよい姉妹か、母と娘のエピソードですよね……。
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バブル世代とさとり世代のジェネレーションギャップ