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ママっ子男子の母親は、息子たちをどう見ているのか?

原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)

2016年06月16日 公開 2023年02月01日 更新

反抗期の逸話すら仲よしエピソード

原田 次は、反抗期についてうかがいたいと思います。僕が調べているところでは、「反抗期はなかった」と答える子が、昔に比べて圧倒的に増えてきています。また反抗期があった場合でも、その期間がとても短くなっていたりする。みなさんのところではいかがでしたか?

 私は自分が姉妹の中で育ちましたから、男の子が育てづらいのにびっくりして。子どもに舐められないようにしようと思っているうち、子ども同士みたいなケンカを息子とするようになっていきました。息子の反抗期のピークは中学1~2年生の頃。「勉強しなさい」「早く寝なさい」「お風呂に入りなさい」といった基本的なことを注意しては揉めるという感じです。
ある日、風呂に入っている息子に私がワーワー文句をいい、風呂場のドアをバンッと閉めたんです。そうしたら、息子が洗面器を投げつけてきて、ドアがパリーンと割れてしまいました。ドアのガラスが割れた拍子に、破片が私の顔に飛んできて、頰が切れて血が出たんです。
私の顔から血が出るのを見た息子は、泣き出してしまいました。

原田 泣いたのは、ケガをしたお母さんではなく、息子さんだったんですか?(笑)  「盗んだバイクで走り出」していたバブル世代が若者男子の時代には、絶対に聞かれなかったエピソードですよね。まさにゴールデンボンバーの「女々しくて」という曲が流行るべくして流行る時代になりました。

 はい。ドアの修理には2万円くらいかかったんですが、2人で折半して1万円ずつ出しました。

原田 折半って……、十分仲よしエピソードのような気がします(笑)。

 うちの息子の場合、反抗期はほとんどなかったですね。ただ、テレビの音が大きいとか、そういうくだらないことから主人と息子が言い合いになって、取っ組み合いになりそうなことは年に1回、今までに全部で数回くらいはありました。ただ、私とはまったくそういうことはありません。私のいったことについて息子が揚げ足をとるようなことはたまにありましたけど、怒ってくることもなかったですね。

 中学2年生の夏休みに、30日間ほど反抗期がありました。

原田 短いですね(笑)。

  元々息子はおとなしい方ではありませんでしたし、口は悪くて自己主張のはっきりしたタイプだったんですが、当時の友人関係など自分の中でイライラ感がたまっていたんでしょう。私がちょっとした言葉をかけたのがきっかけで、イライラの矛先が私に向かい、「お前が悪い!」という風になってしまったんです。その日以来、私とは口を利かず、私の作った食事も食べなくなりました。息子の部屋の前に食事を置いておくと、私が作ったのではない加工食品だけを食べてあとは残すとか、すごく感じ悪いことをするんです。隣がコンビニだったので、足らない分はそこで買って食べていたようです。
私が部屋に入って「いい加減にしなさい!」と叱ったら、息子が胸ぐらを摑んできたんですけど、そこで私が力で負けると「ごめん」って(笑)。その後、父親が間に入って次第に緩和されていき、本人もさっぱりしたのか、憑きものが落ちたようになりました。反抗期といえるのはそれだけですね。

 うちの場合は、中学2年生から塾に通うようになって忙しくなったんでしょう。親から話しかけても返事が少なくなってきたかな、とは感じましたが、反抗的な態度はとられたことがありません。私だけでなく、主人との間でもケンカはありませんでしたし、子どもが声を荒らげて怒るところを見たことがないんです。

原田 やはり、全体的に反抗期は少なくなってきているようですね。ところで、ママっ子男子である息子さんたちだけではなく、周りの一般の子たちも、親子仲はよくなっていますか?
各種意識調査を見る限り、今の若者において親子仲のよさは一般化しているようですが。

 親子仲が悪いという話はあまり聞きませんし、家や家族が好きなお子さんが多い気はします。あと、男の子も女性化しているのか、おしゃべりな子が多いみたい。親子で会話が弾むから、仲よくなるのかな。

原田 そうか。拙著に『女子力男子』(宝島社)がありますが、男子の女子化が進んで、母息子で会話が弾むようになり、結果、仲よくなっているという理由もあるんですね。

 コミュニケーションのあり方が昔と変わってきている気がします。例えば、今の子は友だちのお母さんともつながりやすくなっているでしょう。親世代も LINEやFacebookなどで、何となく子どもの情報を共有していたり。子ども自身も情報を発信しているし、自分の母親も、母親の友だちも、みんな自分のことを知っている。息子が女装した時の写真を友だちのお母さんに持ってきていただいたこともありました(笑)。息子と話す時にも、「こないだ、○○さんが LINEで××といっていたよ」ということがずいぶん増えましたね。昔なら自分に彼女がいるとかいないとか、わざわざ、いわなかったでしょう。だけど、今は他から情報が入ってくるのだから隠してもしょうがない。子どもとしても、どうせ知られているのならあえて殻にこもらず、もっと話そうかという気になっているのかもしれません。

原田 面白い。SNSの普及で「子どもと子ども」も、「親と親」も、「子どもと友だちの親」もつながるようになり、誰かに何かをいえば、すべての人間関係に情報が筒抜けになる可能性のある社会になりました。その結果、隠し事をすることに意味がなくなり、子どもが親にオープンになってきたという説。これも確かにありそうですね。

 

それでも「マザコン」と思われないか気にはなる

原田 最近、就職活動で「オヤカク」という言葉が流行っています。これは「親確認」という意味で、企業が内定を出す際に親に確認をすることを指すんですね。学生に内定を出しても、翌日に母親からお断りの電話がかかってくるということが頻繁に起こっており、それを防ぐため事前に親に確認しようというわけです。
みなさんは、お子さんの進学や就職、あるいはその他の活動にどの程度関与されていますか?

 息子が体調を悪くてバイトを休まなければならない時、「代わりに電話してあげようか?」と聞いたら、何とか自分で連絡していました。そういうことは恥ずかしいという意識があり、親にやってもらいたいとは思っていないようです。

 内定をくれた企業に断りの電話を入れるようなことまでする親がいるということを知らなかったので、驚いています。

原田 オヤカクもそうですし、テレビなどでは入社式にお母さんがついてくるといった極端な例が取り上げられることが多いですが。

 就職に私が口を挟むようなことはないと思います。ところでみなさんは、文化祭などの行事はどうですか?

 息子が高校の文化祭に来ていいよという時は行っていましたね。

 うちは演劇研究会なので、よかったら来てと誘われたら行きます。

 私の職場で息子の文化祭に行くという話をすると、「え?」ってリアクションをする人がいます。就職は独り立ちの大事なステップなので立ち入りませんが、文化祭に行くのはギリギリいいと思っているんですけど。

原田 職場の方に、息子と旅行に行くというと引かれる、ともおっしゃっていましたね。
そういう反応をされる方は、やはり年配の方が多いのでしょうか?

 私より少し上の年代もいますし、同年代もいますね。同年代の方は文化祭には行かれていますが、うちは2人旅行をしている時点で相当変わっていると思われているのでしょう。ママっ子男子ではなく、昔ながらのマザコンというイメージで見られています。私も「息子から呼び出しがかかったから、今日は一緒に外食します」とか、ついサービス精神を発揮していってしまうんですね(笑)。
ただ、息子の高校時代の友だちからは、もっとすごい話も聞きます。20歳になっても、家族全員で一緒にお風呂に入っているとか。それはありえないと私もびっくりしましたけど。

 少し前から、母親と息子の仲がよくなっているという記事が雑誌などに載るようになったじゃないですか。うちも息子とは相当仲がよい方なので、そういう記事を読んでほっとすることはあります。やはりマザコンと思われないか、気にはなりますね。

原田 就職のことに話を戻すと、例えば、息子さんがストリートミュージシャンになりたいと言い出したらどうします。

 それは止めざるをえないですね。

 ブラックで有名な企業だったら止めるかもしれませんが、自分で会社を立ち上げたいとか、本人がやりたいことなら応援すると思います。

 大学2年の春、親を対象にした、ゼミと就職に関する説明会がありました。そこでいわれたのが、「就職に関して親は絶対に口を出さないでくれ」ということでした。親の影が見えると、企業はさっと引いてしまうというんですね。

 大学からそんな注意があるほどなんですね。

原田 親子仲がよくなっていることを大学も気づいている、ということでしょう。

 説明会の案内が大学から届いたので、行った方がいいか息子に聞いたら「お母さん、行って、代わりに聞いておいて」って(笑)。

原田 うーん……。オヤカクは一部の若者の傾向だとしても、やっぱり、母と息子の仲は就職活動においても昔よりは密接になってきている気がしますね。

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