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社会

ソロで生きる力~2035年、日本の人口の半分は独身者

荒川和久

2017年01月28日 公開 2022年03月03日 更新

ソロで生きる力~2035年、日本の人口の半分は独身者

超ソロ社会国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2035年には15 歳以上の未婚率は男35.1%、女24.6%(生涯未婚率ではなく、15歳以上の全人口の未婚者率)となり、有配偶率は男55.7%、女49.3%と、女性の有配偶率が初めて50%を切る。離別死別による独身者も男は9.2%だが、女は26.1%にまで達する。そうして、15歳以上の人口に占める独身者(未婚+離別死別者)率は、男女合わせてほぼ48%に達する。約20年後、人口の半分が独身という国に日本はなるのだ。
日本の「ソロ社会化」は不可避で、確実にやってくる。荒川和久著『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)では、家族という集団から独身・ソロ社会への劇的な変化に我々はどう処すべきかを紹介し、「ソロで生きる力」の必要性を説いている。ここでは、本書の一部をご紹介する。

 

家族という自己責任論の悲劇

年老いた親の介護のために仕事も辞めて(辞めざるを得なくなり)、疲れ果て、金もなくなり、ついには殺してしまうという痛ましい介護殺人事件が2週間に1件の割合で発生している。

2006年2月に起きた、いわゆる「京都認知症母殺害心中未遂事件」もそのひとつだ。事件当時、生活保護や介護体制など日本の社会福祉制度のあり方に課題を突き付けて話題となった。ご記憶の方も多いと思うが、以下に事件の概要を記す。

京都市伏見区で、認知症を患う母親(当時86歳)をひとりで介護していた息子(当時54歳・未婚)が、母の首を絞めて殺害。その後、自らも自殺を図ったが未遂に終わった事件だ。母親の認知症は、1995年に彼の父親が亡くなった後からあらわれ始めていたが、2005年頃にはさらに症状が悪化していた。母親は真夜中でも15 分おきに起き出してしまうため、息子は昼夜逆転、睡眠不足の生活を余儀なくされていく。また、息子が仕事に行っている間に徘徊して警察に保護されたりしたことも度々あった。夏には介護保険を申請し、アパートの近くの施設でデイケアサービスを受け始めたが、それだけでは昼夜逆転の生活は戻らなかった。にもかかわらず、息子は献身に介護するため、7月頃には仕事を休職している。9月頃、工場勤めをしながらの介護に限界を感じて、ついに息子は仕事を辞めることになる。もちろん、自宅で介護しながらできる仕事を探した。しかし、見つからなかった。区役所にもすでに三度相談していた息子だったが、生活保護の受給を断られている。失業保険の給付も終了しており、カードローンも限度額上限に達していた。日々の食費にも窮するようになった彼は、自分の食事を減らすなどして対応したが、ついに3万円の家賃すら払えない状態となり、心中を決意するに至る。

最後の親孝行にと、車椅子の母親とともに市内を巡り歩いた後、自宅近くの河川敷で息子は母親に泣きながら語りかける。

「もうお金もない。もう生きられへんのやで。これで終わりやで」

母親はそんな息子の頭を撫でながら、「泣かんでええ。そうか、もうアカンか。一緒やで。お前と一緒やで」と言った。その後、息子は母親を自分の手で殺したのだ。

この事件に対しては、京都地裁は2006年7月、息子に懲役2年6月、執行猶予3年(求刑・懲役3年)と、殺人(承諾殺人)としては異例の執行猶予付きの判決を言い渡した。

裁判官は判決後、息子に対して次のような言葉をかけている。

「痛ましく悲しい事件だった。今後あなた自身は生き抜いて、絶対に自分をあやめることのないよう、母のことを祈り、母のためにも幸せに生きてください」

その言葉に息子は「温情ある判決をいただき感謝しています。なるべく早く仕事を探して、母の冥福を祈りたい」と答えていた。

この事件は、繰り返しニュースでも報道され、ネットでも話題にはなった。しかし、その後、この息子がどうなったか、についてはあまり知られていない。

それからおよそ8年後、2014年8月に、この男性は琵琶湖周辺で遺体となって発見されていた。自殺だった。裁判後、男性は滋賀県のアパートに一人暮らししながら、木材会社で働いていたそうだが、2013年2月、「会社をクビになった」と親族に伝えたのを最後に、音信不通になっていたという。

彼の自殺の真の理由はわからない。彼は孤独だったわけではない。気にかけてくれた親族がいたにもかかわらず、誰にも頼らずひとり静かに死を選んでいった。

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