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内部被曝とつき合う法

上杉隆(ジャーナリスト)

2011年08月01日 公開 2022年09月08日 更新

内部被曝とつき合う法

「安全です」という言葉に逃げるな

 内部被曝の脅威が現実のものになってきている。政府、東電、大手メディアが隠し続けた原発事故の真実は、これからもっと明らかになっていく。

 私は、ことさら危険を煽るつもりはない。たんに、放射線汚染の実態を正確に把握し、包み隠さず公表することが、結果として地域住民の健康と安全を守る。その観点から、声を出し続けているにすぎない。

 チェルノブイリの住民被害の多くは、内部被曝によるものだ。それは今後、何十年間も日本が向き合わなくてはならない問題なのである。

「安全です」や「安心してください」という言葉に逃げるのは簡単だ。だが、日本は現実を直視しなくてはならない。これからは放射線とうまくつき合っていくしかないのである。それは、日本人全員に与えられた宿命でもある。

 5月、私は内部被曝とつき合う方法をメルマガ等で提案した。その反響はいまなお続いている。福島の県民から問い合わせもある。そこで今回、あらためて、3つの提言を行なう。

1.「食品値札に放射線量を明記する」

 チェルノブイリの原発事故後、ドイツやフランスなどでは食料品に対する不安が広がった。とりわけ野菜や果物、あるいはキノコ類などが放射線に汚染されているのではないかという疑心が続いている。

 実際、それは確かだった。事故から25年たったいまなお、イタリア北部では放射線汚染キノコがみつかり、イギリスでは牧草が汚染されているため、牛乳の出荷が見合わされている牧場があるくらいだ。

 当時の疑いはけっして間違いではなく、事実だったのである。そこで、欧州の人びとは放射線とつき合う手段を講じた。

 それが農産物などの値札の下に、それぞれの商品の放射線量を明記することであった。各店舗が、簡単な計測器をもつ。あるいはマーケットなどで一括して購入し、計測する。そして、それぞれの商品値札の下に計測値を書き込むのだ。

 はたして、そうやって食品ごとに記された放射線の値が、購買意欲を削いだのだろうか。

 実際は逆であった。むしろ、そうしたサービスこそが消費者に安心感を与え、余計な風評被害を防いだのである。

個々の家庭でできることは?

2.「高齢者と子供への格差摂取制限を導入」

 子供と大人では放射線への耐性がまったく違う。新陳代謝の活発な子供が放射線を多く取り込むと、体内の細胞分裂に伴って、ガン化する可能性が高まることがわかっている。

 とくに子供の甲状腺がんの発症の増加は、チェルノブイリでも報告されている。一方で大人、とくに代謝の小さい老人は、比較的安全といえる。そのために、相対的に放射線量の高い食品は大人が食べるようにし、子供たちには安全な食べ物を優先して与えるよう習慣づけることが必要になってくる。

 販売する側も、放射線量の差異によって、値段を柔軟に設定すればよい。放射線量の高い食品はディスカウントし、低い食品は定価で売れば、食品を無駄にすることもなくなる。

 こうした習慣を、国を挙げて徹底することで、過剰反応による風評被害、あるいは、少しでも放射線に汚染された食品はすべて廃棄するというようなエキセントリックな対応もなくなるだろう。

 また個々の家庭においても、汚染された食品はまず大人へ、安全な食品は必ず子供へ、ということを徹底させたらよいのだ。

3.「天気予報で放射性物質飛散予報を」

 科学の進歩により詳細な天候の予測が可能になってきている。テレビでは毎日、地域ごとの細かい気象予報を報じている。最近では、花粉の飛散状況を提供する番組も少なくない。花粉の飛散地域、そのほか分量などを懇切丁寧に教えてくれる。

 一部の放射性物質は風や雨、あるいは地形に影響されて飛散する。そのためホットスポットが出現することになるのだが、そのような分布を、花粉情報のように気象予報に組み込ませることで情報提供が可能だと考える。

 放射性物質の飛散が多い日には屋内退避を呼びかけ、少量の放射性物質の降下が見込まれる場合は、子供たちだけ外に出さないようにするなど、冷静な状況判断の助けとなるだろう。

 今後の日本は、放射線とつき合っていかねばならない。それは避けられない現実だ。内部被曝を避けるために、すべての日本人が心の準備をしようではないか。

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