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生き方

自分を正してくれる「人の鏡」を積極的に求めよう

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

2016年10月12日 公開 2024年12月16日 更新

出口治明

視野を広く持てばメンタルも強くなる

ただ、いくら努力しても、それが必ず報われるとは限らない。40代は挫折を経験することも多い年代だ。出口氏も、国際業務部長として働いていた40代後半のとき、大きな挫折を経験した。

「国際業務部長になったのがロンドンから帰国した1995年。当時でも、日本がこれから人口減少に向かうことは明らかでした。人口が減れば、生命保険の市場も縮小します。

ですから早急に海外に新たな市場を求めるべきだと考え、僕は役員会に2020年までを見据えた海外展開のプランを提案しました。当時からすれば25年も先のことなので『正気か?』とも言われましたが、無事に役員会を通すことができました。

ところが、社長が交代し、それとともに風向きが変わったのです。新社長は、『バブルが崩壊して大変なのに、海外展開を進める余裕はない。必要なのは国内の立て直しだ』という考え方でした。

短期的に考えればそのとおりですが、長期的に考えると、やはり賛同できない。意見が食い違ったことで、他の部署の部長へと異動になりました」

明らかな左遷人事だったが、そこで出口氏は落ち込まなかった。それも、本を通じて歴史を学んでいたからだという。

「歴史を紐解けば、多くの人が、というよりも、ほぼすべての人が、このような挫折を味わっています。それを知れば、自分だけが不当な目に遭っているという見方が、いかに視野が狭いかがわかります。

僕に言わせれば、左遷されて不満を感じる人は現実が見えていないのです。会社組織に身を置く者は、社長にならない限り、どこかで出世がストップして、左遷される。

毎年200人が入社する会社で、社長が5年で交代するとすれば、社長になれるのは1,000人に1人。999人はどこかで左遷されることになります。自分も多数派になったのだと思えば、何を嘆く必要があるのでしょうか。むしろ人・本・旅で学ぶ時間が増えたと考えるべきです」

その後、日本生命を退職した出口氏は、74年ぶりの新たな独立系生命保険会社の設立という、無謀にも思える挑戦をした。そのベースとなったのが、40代でのこうした学びと体験だった。

「40代のビジネスマンは、目先の忙しさに流されがちです。しかし、ムダな仕事を排して少しでも自由時間を確保し、その時間で大いに学ぶべき。人と本と旅は世界を広げてくれます。それを仕事に、そして人生に、役立ててほしいですね」

(『THE21』2016年10月号特集「40代を後悔しないため今すぐすべき10のこと」より)

 

著者紹介

出口治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU) 学長

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当したのち、大蔵省を担当して金融制度改革に取り組む。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て06年に退職。同年、ライフネット企画〔株〕を設立し、代表取締役社長に就任。08年、免許取得に伴いライフネット生命保険〔株〕に社名を変更。13年、代表取締役会長。17年に取締役を退き、18年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

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