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松下幸之助創業者に学んだこと~中村邦夫・パナソニック元社長

マネジメント誌『衆知』

2017年01月11日 公開 2022年11月30日 更新

中村邦夫と松下幸之助

中村邦夫(パナソニック元社長)
なかむら・くにお。1939年滋賀県生まれ。1962年大阪大学経済学部卒業、同年松下電器産業(現パナソニック)入社。1985年家電営業本部首都圏家電総括部東京商事営業所長、1989年アメリカ松下電器パナソニック社社長、1992年イギリス松下電器社長を経て、1993年松下電器産業取締役、米州本部長兼アメリカ松下電器会長。同年北米本部長。1996年常務、1997年専務、AVC社社長。2000年社長、2006年会長、2012年より相談役。

取材・構成:藤木英雄、写真撮影:白岩貞昭

 

創業者の言葉とともに「日々是好日」の心境で生きる

いつも幸之助創業者の言葉が心の拠り所だった

私は残念ながら、松下幸之助創業者に直接ご指導いただく機会を得ることがかなわなかった世代の一人です。けれども創業者は、たくさんの著作を残してくれました。

入社して2年目頃の、なにか満たされずに鬱々としていた時期、国内家電営業の仕事で改革に燃えた日々、不安を抱きつつ向かった海外での勤務時代、そして日々大きな決断を迫られた社長時代……。私の傍には、いつも創業者の文章や言葉がありました。私の会社人生の拠り所でした。

なかでも『商売心得帖』と『実践経営哲学』(ともにPHP研究所刊)は何度も読み返しました。いつの間にか擦り切れてしまい、その都度購入するのですが、もう何冊目かわからないくらいです。

この『実践経営哲学』に創業者はこう書かれています。

「いかに立派な経営理念があっても、実際の経営をただ十年一日のごとく、過去のままにやっていたのでは成果は上がらない。製品一つとっても、今日では次々と新しいものが求められる時代である。だから正しい経営理念をもつと同時に、それにもとづく具体的な方針、方策がその時々にふさわしい日に新たなものでなくてはならない。この“日に新た”ということがあってこそ、正しい経営理念もほんとうに永遠の生命をもって生きてくるのである」

経営理念の不変性、そして戦略や方針の絶えざる革新の必要性――この二つの両立を創業者は説いておられます。本当に「なるほど!」と心に響きました。

それでも社長時代に変革の決断を繰り返すことは、正直に言うとしんどいものでした。ですから、ここぞという大きな決断をする時には、創業者が会長時代にPHP研究に取り組まれた場所、京都・東山の松下真々庵に行き、庭を眺めたりしながら、2~3時間ほど身を置くようにしていました。

そうすると、創業者のオーラに包まれるような、勇気づけられるような感じがして、決断がしやすくなったのです。そういうありがたい体験をさせてもらったことに、今でも感謝しています。

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