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生き方

ネコに学ぶ悩まない生き方

海原純子(日本医科大学特任教授)

2017年03月18日 公開 2023年09月08日 更新

(3)毛づくろいをしよう――失敗してもすぐ切り替える

 

切り替えの早さがネコの特徴です。失敗しても、涼しい顔をして毛づくろい。そして、すぐ次の行動に移ります。これは人間にも応用できるのです。

 「つらい」「いやだ!」「恥ずかしい」という思いをすると、アドレナリンなど脳内ホルモンが放出されます。それが消えるまでに約90秒かかると言われています。逆にこの90秒間を乗り切れば、次のステップに進むことができます。ネコはこの90秒間に毛づくろいをしたり、ストレッチをしたりして気持ちを切り替えているのです。

嫌な気分になったら、背伸びをしたり、深呼吸をして体を整えましょう。私が患者さんによくお伝えするのが、風船のイメージワークです。深く息を吸い、風船に息を吹き込むイメージをしてください。そしてその風船の中に不快な気分を全部詰め込み、手放してしまいましょう。腹が立ったらそのまま怒りに身をゆだねないで、まず体を整える。そして別の所に目を向けましょう。

 

(4)集中のあとはリラックス――瞬発力を発揮しよう

 

ネコは、心を決めたら脇目も振らずに全力で走り出し獲物を捕まえます。そして力を出し切ったあとは、すぐにリラックスモードに入りすやすやと眠ります。

あなたは何事も計画通りに進められる人でしょうか。それとも、ときにはやる気が出ないこともある、ネコ的人間でしょうか。もしあなたがネコ的人間なら、やる気がないときは無理に仕事をしない方がいいかもしれません。無理に働いてもいい結果が出ないでしょう。計画的にコツコツと進めることが、必ずしもいい結果を生むとは限りません。ある程度は自分の野生の勘に身をゆだねてはいかがでしょうか。

ただし人間の場合、ネコと違ってどうしてもやらなければならないときもあります。私も外来の担当日は、入院でもしない限りは休みません。そんなときは、その状態でできる最高を目指すことを考えます。野球選手で言えば、いつも8割打つのではなく、2割5分でも、最低限のラインを守るのがプロです。必要最低限を出せたなら、身体をゆっくり休め、次に瞬発力を発揮するときに備えましょう。

 

(5)他者とは適度な距離をーー無理につきあわなくていい

あなたは全員と同じ距離感で、同じようなつきあいをしなければいけないと思っていませんか? これは不可能なのです。

ネコはネコ同士の距離の取り方、人との距離の取り方がとても上手です。家族の中でも「この人なら抱っこを許す」「だっこはイヤだけど、遊びだけして欲しい」「エサをくれるときだけ相手をする」など、人によって関わりを使い分けています。同じように人間にも、いろんな人とさまざまな関わり方があっていいのです。

ですから、人によって「立ち入り禁止の時間」を設けるのもありでしょう。「○時以降は、嫌いな人のことは一切考えない」と決めることです。もしも頭に思い浮かんでもシャットアウトしてしまうのです。

またネコはよく「気まぐれだからしょうがない」と言われますが、人間も「あの人だからしょうがない」と周囲に思わせることができたら、ストレスが減るでしょう。ネコは気まぐれですが、別なところに魅力があります。それと同じように、夜のおつきあいは出席しなくとも、仕事で存在感を発揮すれば、つきあいの悪さをとがめられることはないでしょう。「あの人だから」と許せてしまう。そんな人間関係ができたらいいですね。

 

《『THE21』2017年3月号より》

著者紹介

海原純子(うみはら・じゅんこ)

日本医科大学特任教授

1952年生まれ。医学博士、心療内科医、産業医。東京慈恵会医科大学卒業。2008~10年にハーバード大学客員研究員を経て、現職。全国で公演活動も行なう。読売新聞「人生案内」の回答者であり、毎日新聞日曜版に連載「心のサプリ」執筆中。近著『こんなふうに生きればいいにゃん』(海竜社)他、著書多数。ネコと暮らして30年以上。現在は、ミーとフーの2匹がいる。

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