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京都・聖護院八ッ橋総本店の「おもてなし」~新ブランド「nikiniki」の挑戦

マネジメント誌「衆知」

2017年02月20日 公開 2017年02月20日 更新

「人と地元を大切に」 

鈴鹿さんが思う「おもてなし」の心は、聖護院八ッ橋総本店が三百年を超える歴史の中で培ってきた精神でもある。同社には「人と地元を大切に」という経営理念があり、鈴鹿さんも父や祖父から、地元の人たちに感謝する気持ちを忘れてはいけないと教えられてきた。 「なぜ、会社がこの場所で続いてきたのか。それは地元の方々が、会社があることを認めて、許してくださっているからです」。鈴鹿さんの祖父の時代、近所を歩く時は誰も表にいなくても、地元の方々の玄関前で必ず頭を下げていたという。今もその精神は受け継がれ、お帰りのお客様の姿が見えなくなるまでお見送りをするよう教えられている。こうした地元の人への細やかな心遣いは、八ッ橋の業界や京都の街を思う気持ちにつながる。 「百年後、二百年後も八ッ橋があるかどうか。それを常に考えています」。そう語る鈴鹿さんは、店を継ぐ立場として、味の継承とともに、この経営理念を守り抜きたいと考えている。 

菓子であり嗜好品でもある八ッ橋は、おいしさがすべて。少しでも味が落ちたら、お客様は離れていく。自分の店はもちろん、八ッ橋をつくる業界自体がなくなってしまうかもしれない。そうならないために、鈴鹿さんは毎日、自社の八ッ橋を口にしておいしいかどうか確認しているという。おいしさを守り、どんな時代でも「一番おいしい」と喜んでいただける商品づくりをすることを自分の使命としている。 

そして、業種を問わず京都の老舗の人たちとつながりを持ち、京都の街で共存共栄することを重視する。「自分の会社だけ、自分の代だけ利益を上げればいいというものではありません。志を同じくするものが協力し、自分の子供たちの代、さらにその先までともに発展していくことを目指す。うちはそういう会社だと思っています」。 お客様やまわりの人々、そして後代のことも考えた、細やかな心遣いの積み重ね。それが老舗の伝統を築く。320年続く老舗の歴史に新たな彩りを加えた鈴鹿さんの言葉は、伝統を受け継ぎ、守り抜く決意に満ちていた。

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