手堅く貯金、賢く投資
先に、「投資は貯金のゴールに近づくためのひとつの方法」と言いましたが、「貯金が1000万円を超えたな。目標に一歩近づいてきたな」など、人はゴールまでの道筋がなんとなくでも見えてくると、気持ちにも余裕ができるものです。
逆に、「老後の資金が全然貯まらない」など、ゴールがまったく見えないと焦りが生まれ、普段なら見向きもしないようなことに手を出したり、冷静に考えたら疑わしい商品などにころりと引っかかってしまったりしがちです。
たとえば、退職金が出たときに「ここらで一気に老後の資金を貯めるぞ!」とばかりに、銀行のすすめるリスクの高い投資商品に手を出し、かえって損失をこうむった、というのもよく聞く話です。
Tさんは、「せっかくの退職金、運用して増やさなければ」と意気込むあまり、銀行に「今ならこの商品がチャンスかもしれません。せっかくの機会ですから、ぜひ投資しませんか?」とすすめられた商品に退職金2000万円ほどを投入し、結果、800万円近く損しました。もし、Tさんに老後の資金があったなら、このような「賭け」に乗ることなく、もっと冷静に退職金の使い道を考えることができたのではないかと思うのです。
気持ちに余裕を持つためにも、「コツコツ投資」をして、ある程度、ゴールまでの道筋をつくっておく。そして、来るべき老後を、余裕を持って迎えられるようにしましょう。
何度も言いますが、ただ貯めているだけではほとんど増えないのが現実です。ですから、「手堅く貯める」と「賢く投資」の2本軸でいくのが、これからの貯金スタイル。将来に向けて増やしたいのなら、投資信託などを利用しながらコツコツ積み重ねていく。それと、60歳以降のお金をつくりたいのなら「確定拠出年金」。この2本立てですすめるのが賢い投資です。
リスクの少ない投資ってなに?
投資というと、「個別株」を買うイメージがあるかもしれません。
ですが、「お金を貯める」という目的で投資を行なう場合、個別株を買うことはおすすめしません。
たしかに、株主優待として何カ月に1回、割引券をもらったり、会社の商品が届いたりするのは楽しいことかもしれません。けれど、もので分配するならば、その分にかかる費用を株価に反映させ、そして株価を伸ばすことこそが、株主への一番の還元ではないかと思うのです。
もちろん、「この企業を応援したい!」「あなたに投資するのだ!」という熱い思いで個別株を買うのはいいことでしょう。ただ、個別株ばかり購入するのは、いわゆる当たり外れがあり、「貯蓄」としては適しません。ましてや、初めての投資ならばなおのことです。
「お金を貯める」「コツコツ積み立てて増やす」という意味合いで投資を行なうのであれば、個別銘柄を買ったり、外貨預金をしたりするよりも、「投資信託」を利用したほうがいいでしょう。いわゆる「インデックスファンド」と呼ばれるものがおすすめです。
これは東証一部上場の銘柄から選ばれた225銘柄の平均株価となる「日経平均株価」(日経225)や東証一部上場の全銘柄の時価総額を指数化させた「TOPIX」など、市場の平均指標と同じ動きを目指すファンドです。
多くの企業が含まれていますから、たとえば電機業界のA社の株が下がってもB社の株が上がっているなど、結果的にバランスを取ることにつながります。大きなリターンも期待できませんが、大きなリスクも同様に少なくなります。まさに、「コツコツ投資」に向いているでしょう。
ちなみに、「インデックスファンド」の反対に「アクティブファンド」というものがあります。インデックスファンドは、先にもお話ししたように日経225の指標などに連動して動くことを目指す商品。日経平均が伸びたら、半ば機械的にインデックスファンドも上がっていく仕組みになっています。
一方、「アクティブファンド」はその言葉のとおりアクティブ、つまり活動的で、インデックスファンドの成績を上回ることを目指すファンドです。ファンドマネージャーと呼ばれる人が市場を調査し、知恵を絞って銘柄などを決めていきます。インデックスファンドよりもリターンが大きい場合もありますが、逆にリスクも高いです。また、ファンドマネージャーが介入する分、手数料も高くなります。インデックスファンドよりいい成績が残せたとしても、高い手数料が引かれるため、実際にもらえる金額はインデックスファンドのほうが多い、ということが往々にしてあります。
賢く投資したいのであれば、やはりインデックスファンドで手堅くやっていくのがいいように思います。
証券口座を開設して、商品を決めて申し込んだら、あとは特にやるべきこともありません。毎月少しずつ買い増していくだけなので、イメージとしては積立定期預金と同じです。このように「コツコツ投資」をしていくのが、一番手軽な方法ではないでしょうか。
※本記事は 横山光昭著『「貧乏老後」にならないためのお金の新常識』(PHP文庫)より一部を抜粋編集したものです。