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経営陣に信頼される人事部長は、いつもどんな話をしているのか

2017年07月24日 公開

羽田幸広(株式会社ライフル執行役員人事本部長)

※本記事は、羽田幸広著 『日本一働きたい会社のつくりかた』(PHP研究所刊)より、その一部を抜粋編集したものです。

一枚岩の経営陣をつくる

2006年10月、ネクストは東証マザーズへ上場しました(2017年4月1日、社名を「株式会社LIFULL(ライフル)」に変更)。

今でこそ法令順守の意識は非常に高くなっていますが、その頃はまだ、法令を順守することの重要性が浸透しきっていませんでした。法令は順守しているものの、「順守している」というより「順守させられている」というほうが近かったかもしれません。

そんなとき、ある役員から冗談交じりにいわれました。

「人事がサブロク、サブロクっていうのはわかるけどさ~」

説明するまでもありませんが、サブロクとはいわゆる36協定のことで、そこには、企業が守らなければならない、時間外労働や休日勤務に関しての決まりが明記されています。当時の役員の一部が「順守させられている」という意識であった点は、それはそれで仕方ないとしても、役員として最低限やるべきことは、このような発言を控え、一枚岩を演出することです。

「僕の前だけならいいですけど、役員なんだから、他の社員がいる場では間違ってもそういうこといわないでくださいね」

私は、かなりきつく注意しました。もちろん、その役員は軽い気持ちでいっただけです。「そんなにむきにならないでよ」と顔に書いてありました。

しかし、「経営陣が一枚岩である」ということは、法令順守の文脈に限らず、会社の方針を決めて推進する際にも同様に、大変重要だと考えています。ある部長がいっていることと、もう一人の部長がいっていることが違う。どうやら、上層部にはいろいろな思惑があるらしい。自分は、いったい何を基準に行動したらいいんだろう……。

これは、特に判断基準が定まっていない若い社員にとって最悪の事態です。会社が常に明確なベクトルを示しており、それにしたがって努力をすれば報われるのでなければ、社員は安心して働けません。

会社がAと決めたらA、Bと決めたらB。その原則が揺るぎのないものであることを、いつも全社員に感じ取ってもらわなければなりません。そのために、まずは経営陣を一枚岩にしておくことは、私の重要な仕事です。

役職が社長に近い人の発言であればあるほど、それがお酒の席のものであっても、会社の決定と違うことをいう幹部にはしっかりと注意をします。

 

勇気があるふりをする

あるとき、本社の設備を変更するにあたり、経営会議が開かれたそうです。社長の井上も出席する中、議論に議論を重ね、最終的に1つの案にまとまったそうです。それは、かなりコストのかかるものでした。

それでも、決めたことです。当然、決めたら進めていかなくてはなりません。

ところが、数日後、私がある役員と飲みに行ったときに、その役員がいいました。

「俺、実はあの案には反対なんだよね。金がかかりすぎるよ」

それを聞いた途端、私はカチーンときてしまいました。

だったら、なぜ経営会議でそれを主張しなかったのか。もし主張していたとしても、決定したことには責任をもって取り組むのが役員ではないか。そして、再度議論をしたければ、それを堂々と申し出るべきだろう。

当時私は役員でも部長でもありませんでしたが、「決まった後に陰でそんなことをいうのは本当にカッコ悪いですよ。もし決めた後に意見が変わって、決定を変更すべきだと考えているのであれば、居酒屋で社員に愚痴るのではなくて、経営陣を集めて再検討したいと伝えるべきじゃないんですか?」と問い詰め、気がついたら3時間以上もやりあっていました。つい漏らしてしまった愚痴に激しく食いつかれ、役員は驚いたでしょうし、飲み屋はさぞかし迷惑だったことでしょう。

私がそこまで食い下がったのは、その役員のことが個人的に嫌いだったからではありません。私が企業文化をつくる、人事だったからです。私が徹底して抗議しなければ、彼はいずれ他の社員にもいったことでしょう。「いや、俺は反対なんだけどね。会社が決めちゃったことだからさ」と。

些細なことじゃないか、飲み屋での愚痴くらい……と思われるかもしれませんが、こうしたことの繰り返しが、企業文化を破壊し、一生懸命働いている社員たちのモチベーションを削いでいきます。

役員に注意できるのは社長しかいません。しかし社長の耳にはなかなか入りません。組織開発の観点でいえば、私が仕事としてやるしかありません。私も、こういうときはとてもドキドキしますし、そんな行動をとってしまう自分の将来が不安なときもあります。

しかし、これを誰も正さなければ、社員は絶望的な気分になると思います。だから、勇気があるふりをして、相手と向き合います。

幸い当社の役員は、「誰の意見か」よりも、その「意見そのもの」を吟味してくれます。このときも、私の主張を理解して以後気を付けるといってくれました。

 

事業リーダーたちとの信頼関係を構築する

当社では、全社的な人事方針の決定や組織変更などについては人事が権限をもっていますが、その他の事業部内の組織変更や人員配置については、各事業部長に権限を委譲しています。

これは、「事業の成果を求めているにもかかわらず、組織や人事は決められない」という状態は明らかにバランスを欠くという考えからで、各事業部長に大きな責任を負ってもらうとともに、大きな自由を渡しています。

とはいえ事業部長をはじめとした事業リーダーたちは人事のプロではありませんので、組織やコミュニケーションラインの設計、人材の見立てなどに課題がある場合があります。

そんなときに「このような見方もあると思いますよ」とアドバイスします。事業リーダーのパートナーとして専門的な知見や選択肢を提供することが、人事の重要な仕事になっています。そのためには、当然、人事としての様々な専門性を磨くことが重要になります。

ときには、「こうすべきです」と熱意をもって話して、彼らを動かす必要のある場合もあります。そのためには、専門性は前提ですが、それを土台にした説得力を磨くことが大変重要です。そうすべき理由を、彼らの事業だけでなく他の事業への影響や、短期だけでなく長期の影響などを踏まえて整理して、誤りだった場合に責任をとる覚悟をもって説明する力が必要になります。さらに、いくら説得力を磨いても、普段あまりコミュニケーションをとっていなかったり、関係構築できていなかったりすると、説得の難易度は格段に上がります。

普段から、事業リーダーたちとの感情のギャップを埋め、ビジョンと戦略を共有しておくことが、いざというときにお互いの考えを即座に理解し合って実行に移すことを可能にします。

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