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ストレス対策は「心」よりも「身体」から

小林弘幸(順天堂大学医学部教授)

2018年04月05日 公開 2024年12月16日 更新

ストレス対策は「心」よりも「身体」から

「自律神経」がすべてのカギを握る!

生きていくうえでストレスはつきもの。とくに読者世代のビジネスマンにとっては、仕事にも家庭にもプレッシャーが多い。ストレスマネジメントというと、ストレスをなるべく軽くすることを想像するかもしれないが、自律神経の専門家である医師の小林弘幸氏は、「ストレスは悪いものばかりではない」と話す。詳しくうかがった。(取材・構成=林加愛、写真撮影=永井浩)

 

ストレスは放っておくと増幅する!?

「ストレスはなくすべきもの」と考える人は多いでしょう。しかし、ストレスをすべて悪者と決めつけるのは間違いです。

人が生きていく上で、適度なストレスはむしろ必要です。大事な職務を果たす緊張感、課題への挑戦や試行錯誤といったものは、言わば「良いストレス」。この種のストレスのおかげで、人は向上心や発想力や創造性を持つことができます。その課題を超えることができたとき、ストレス耐性もさらに高くなるでしょう。

しかし、実際のところ、本来対処できるはずのストレスを無駄に増幅させている人も、少なからずいます。

「わけもなくイライラする」「なんとなく落ち込む」など、原因がわからないままモヤモヤしている人は要注意。ストレスは、放置すると増大するという性質を持ちます。何にイライラしているのかを明確にせず抱え込むうち、気持ちはどんどんネガティブになり、集中力や仕事の精度も落ちるでしょう。

ですから、ストレスが発生したらすぐに原因を割り出し、対処すべきです。それも「消そうとする」のではなく、あくまで「上手につきあう」スタンスが大切。つまり、ストレスを「適度な刺激」程度にとどめる方法を知ることがコツと言えます。

 

イラッときたら、水をひと口

ストレスに素早く対処するにあたり、ヒントとなるのが「自律神経」です。自律神経は心臓の動きや血液循環や消化吸収など、自分の意思で動かせない身体の機能を司りますが、その反応が、ストレスの程度や自分の感じ方をつかむ指標になります。

自律神経のうち、交感神経が優位になると血管の収縮、血圧や心拍数の上昇などが起こり、緊張モードになります。対して、副交感神経が優位になると血管がゆるみ、心拍数は下がり、体はリラックスします。

この双方がバランスよく働くことが理想ですが、ストレスを受けると均衡が崩れます。

ストレスを受けた直後に見られる反応は交感神経の上昇。血管が収縮して血圧が上がるため、動悸がしたり、呼吸が浅くなったり、といった身体の変化が起こります。

そんなときは即、交感神経を鎮める対処を。水を一口飲むと、緊張をリセットできます。

「ハーッ」と深いため息をつくのも有効。息を吐き切ると、その後に吸う空気の量が上がり、自然と呼吸が深くなって副交感神経が活性化します。プレゼン直前にあがってしまったときなどに試してみましょう。

気分が落ち込んだときは、身体を動かすのが得策です。オフィスの階段を一、二階ぶん上り下りしたり、外に出て五分くらい歩き回ったりすると、血流がアップします。それにより副交感神経が高まり、冷静に事態を見る理性が回復します。

 

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「ポジティブに考える」より身体を動かせ!

著者紹介

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部教授

1960年、埼玉県生まれ。92年、順天堂大学大学院医学研究科博士課程を修了後、ロンドン大学附属英国王立小児病院外科などの勤務を経て帰国。順天堂大学小児外科講師、助教授を歴任後、現職。自律神経研究の第一人者としてアスリートや芸能人のアドバイザーを務めるほか、TV出演などメディアでも活躍中。著書に、『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版)、『一流の人をつくる整える習慣』(KADOKAWA)など多数。

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