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生き方

94歳の現役作家・佐藤愛子が放つ、 痛快な人生への提言

佐藤愛子(作家)

2018年09月13日 公開 2022年02月09日 更新

 

人は皆、好きなように生きている

もうひとつ、やはりよく聞く「片づけられない女」からの相談&回答を紹介しよう。29歳の女性会社員、断捨離が推奨される社会ではいささか生きづらそうだが、60以上年の離れた作家はどう受け止めるのか。

 

Q 部屋が全然片づけられないんです……。(29歳女性・会社員)

私はいわゆる「片づけられない女」です。

1DKのマンションでひとり暮らしをしていますが、そんなに散らかしているつもりはないのに、ふと気がつくとテーブルにも床にもベッドにも服やモノが散乱していて、まさに足の踏み場もない有様になってしまうのです。

衛生的に汚いのは許せないので、食器などはきちんと洗っているし、キッチンまわりはとてもきれいなんですが、そのほかのもの(服やバッグや化粧品、本、雑誌、こまごました雑貨など)が、なぜか片づけられないんです。

洗濯もこまめにしているのに、取り込んだものをつい放りっぱなしにしてしまうため、着ようと思った時にどこにあるかわからなくて困ることもしょっちゅうです。

不思議なことに会社ではそういうことは全くなくて、むしろ「あなたの机はいつもきれいね」と同僚にほめられるくらいなのです。

このままでは彼氏ができても(彼氏がいたことはありませんが……)部屋に呼ぶこともできません。どうすれば、自分の部屋もちゃんと片づけられるようになるのか、アドバイスをいただけませんか。

 

A(佐藤愛子の回答)好きなように生きればいいのよ。
この頃はなぜか片づけない人、片づけられない人が増えているようで、テレビなどでもゴミの中に平気で埋もれて寝ている人を見たりしますが、そういう人は極度の不精者で、それが高じて不潔に対する感性が欠落してしまった人だろうと思っていました。

しかしこの相談者は衛生的に汚いのは許せないという清潔好き、しかし衛生とは関係のない用品となると片づけられないという、ゴミ屋敷住人としては変種ですね。

「不思議なことに会社ではそういうことは全くなくて、むしろあなたの机はいつもきれいね、と同僚にほめられるくらいなのです」

と、まるで他人ごとみたいにいっておられる。「このままでは彼氏が出来ても部屋に呼ぶことは出来ないよ」と、普通なら第三者がいう言葉を自分で自分に向かっていっている。自分で自分を不思議がり、その上このままでは彼氏が出来ても呼べないことまで予見して心配している。

周りの人から忠告された人が、いい返す決まり文句に、「何もわかってないあなたからいわれる筋合はない」とか「いったいあなたにわたしの何がわかるのよ」というのが定番だけれど、あなたの場合は相手と一緒になって自己批判をし「不思議だねえ」と不思議がっているところが実に珍しい。

だから、このままでいいんじゃないか、と私は思いますよ。あなたは好きに暮らしているんですから。何のかのいっても人は皆、好きなように生きているんです。

とりあえずのあなたの心配は彼氏が出来ても部屋に呼ぶことが出来ないということですよね。しかしこういう珍種のあなたには彼氏はそう簡単に出来ないでしょうから、そう急ぐこともないんじゃないですか。

このまま好きなように暮らせばいい。誰にも迷惑をかけず、自分の好きに暮らすのが一番の幸福です。


作家の感性は一般人とは違うとはいえ、94歳の感覚からすれば、こういう若い女性は許せないのではないか。厳しいお説教が降ってくるに違いない……と思いきや、「好きなように生きればいい」と実に寛容な回答。人に迷惑かけているわけじゃなし、ちょっと変わった感性だけれど、それはそれでよしということのようだ。

「何のかのいっても人は皆、好きなように生きているんです」という一文に、佐藤愛子の人生観が感じられる。

このほか、「やりたいことが何もない」という女子中学生、「すぐに謝る後輩にどう接したらいいか」に悩む30代の会社員、「不倫している友人が羨ましい」40代の主婦、「定年後にも働かなくてはいけないのか」と嘆く50代の会社員、「テレビ出演者の発言が腹立たしい!」と怒る75歳の老人など、老若男女からの様々な相談が掲載されている。

珍問もあれば真面目な悩みもあり、佐藤愛子がそれらにどう答えているか。気になる方は本書をぜひご一読あれ!

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