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「人材が流出する会社」と「ずっといたい会社」 その差を生んだ"従業員アワード"

三村真宗(株式会社コンカー代表取締役社長)

2018年10月22日 公開 2018年10月22日 更新

照れくさくて普段はなかなか言えない感謝の気持ちを「仕組み」で集める

コンカーでは年に一度、アンケートをおこなっていますが、その設問項目を考えているとき、思い立ったことがありました。

「普段は照れくさくて、なかなか言えない同僚に対する感謝の気持ちも集めたらどうだろうか?」

そこで、半年に一度、「感謝の手紙」を募ることにしたのです。

普段の業務で直接伝えきれない気持ちを手紙にして表現するこの制度は、思いやりを大切にするコンカーの社風を象徴する制度にもなっています。

同僚に感謝をする仕組みは、会社によっていろいろあるようですが、コンカーでの秘訣は、「思いを伝える仕組みにしている」こと、そしてあえて「随時にしない」ということです。

米国本社では、「お金にも換えられるポイントを贈り合う」という感謝の仕組みが導入され、複数の社員から「日本でもやってほしい」と言われました。しかし、感謝の気持ちに金銭的なインセンティブを結びつけることに違和感があり、「お金ではなくて、思いを伝えよう」と言ったのです。

ただ、「思いを伝えよう」と奨励しても、やる/やらないのムラが出てくるので、仕組みでごそっとすくい上げてしまったほうがいいのです。

また、いつでもできるはいつまでもやらないになってしまいがちです。それよりも、イベントにしてしまったほうがいい。「朝礼で褒め合う」とか「サンクスカードを渡し合う」というのも、頻度が高すぎると形骸化してしまいかねません。だから、年2回のイベントにしたほうがいいと考えました。

「感謝の手紙」の2018年上半期の件数は、従業員1人あたり、約6件にものぼりました。数字に関わっていない社員に手紙が集まりやすいのも特徴かもしれません。社員は「見てくれているんだ」と感じ、「もっとがんばろう」というモチベーションにつながります。

そして「感謝の手紙」は、贈られた本人の上司とも共有します。「感謝の手紙」を多くもらっている、目に見えない部下の貢献をきちんと評価してあげてください、ということです。

株式会社コンカーの社員アワード受賞者に贈られる感謝の手紙
感謝の手紙:メッセージを管理部が紙に打ち出し、手紙の体裁にして社員に手渡している

「感謝の手紙」が多かった人へのプレゼントは、日常で使えるボールペンなどにしています。トロフィーや報奨金を贈らないのは、「感謝の手紙」が本来、競うものではないからです。こういうことをまちがえると、社員全体がシラケてしまうようになりかねない。コンカーの人事策は基本、青臭いことをやっています。青臭さがシラケにつながらない、微妙なサジ加減による制度設計が求められるのです。

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