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まさかの全米売上No.1! クリントン元大統領に小説を書かせた「スーパー弁護士」

山口晶(早川書房)

2018年11月22日 公開 2018年12月14日 更新

史上最高額の"60億円の出版契約"をも実現

アメリカでは出版社が作家に印税の前払(=アドヴァンス)を払って出版契約を結ぶシステムになっている。ベストセラーが見込める著者の場合は、各社がこぞってオークションに参加して、日本円で数億円に昇るアドヴァンスが支払われるケースも珍しくない。

まさに金による作家の争奪戦である。本の刊行後に印刷部数ベースで印税を支払う日本とはまったく異なるシステムなのだ。

アメリカの主要な政治家は引退後に自伝や回想録を書くのが通例となっている。そしてかなりの高確率でベストセラーになる。だから、バーネットのクライアントのような大物たちに対する出版社の期待は極めて高い。

バーネットが実際に仲介したケースで言えば、ヒラリー・クリントンの自伝『リビング・ヒストリー』は800万ドル(販売当時のレートで約9.6億円)、ビル・クリントンの回想録『マイライフ』が1500万ドル(約18.5億)、オバマと妻のミシェルがそれぞれ執筆する回想録についた値段は2冊セットで史上最高額の6,000万ドル(約68億円)だった。

バーネットの人脈と交渉力はまさに「スーパー」としか言いようがない。

 

エージェントとしての「スーパー弁護士」の人気に秘密ー手数料が格安

バーネットの人気はその交渉力だけにあるのではない。彼の取るフィーは比較的安いことで知られている。通常、出版権の仲介を生業とするエージェントは上述のアドヴァンスから10~15%のコミッションを取る。オバマ&ミシェルの本を仲介できれば、実に7億円近い金額が入ってくる計算になる。

しかし、バーネットの場合は、1時間1,250ドル(14万円強)の相談料しか取らないのだ。この時給は一見高く見えるかもしれないが、アメリカのこのクラスの弁護士としては安いものである。

それに、本のアドヴァンスが超高額になった場合は、一般のエージェンに仲介させるよりかは、かなりお得になる計算だ。たとえば、バーネットの時間を100時間費やしたとしても、1,400万円のフィーに過ぎず、7億円には遠く及ばない。

これだけフィーを節約できて、しかも凄腕ときたら、バーネットに著名なクライアントが群がるのは当然だろう。

とはいえ、トランプ時代になり、共和党のトップや政府高官が一気に入れ替わった結果、バーネットのワシントン人脈にもかげりが見えてきているとも言われる。実際、イヴァンカ・トランプなど現在の政府高官たちの出版権は別のエージェントを通じて販売されるケースが目立ってきた。

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