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作家・幸田真音が語る 「それでも人工知能が絶対に必要な理由」

2019年03月22日 公開

幸田真音

ベストセラーとなり多くの海外メディアからも注目された『日本国債』や、第33回新田次郎文学賞を受賞した『天佑なり――高橋是清・百年前の日本国債』など、これまでに数々の話題作を送り出してきた幸田真音氏。米国系銀行で債券ディーラーとして勤務したキャリアが注目されがちだが、金融や経済だけでなく、テクノロジーにも深い造詣を持つことでも知られている。

先ごろ発表された最新作『人工知能』では、AIをメインテーマに、物語の中でそのリスクと可能性を提示。黎明期からその技術の変遷を追ってきたその目には、果たして現在のAI研究はどう映っているのか? 作家視点で見たAIの今後について話を聞いた。

取材:友清 哲/写真:青地あい
 

実際に試乗した自動運転車に驚愕

人工知能――金融畑の作家というイメージが強い幸田さんですが、新刊『人工知能』ではAIを搭載した自動運転車をモチーフとされました。いつ頃からAIに注目していたのでしょうか。

私はデビュー作こそ金融市場を題材に書いていますが(『小説ヘッジファンド』1995年)、その翌年に発表した2作目は、『マネー・ハッキング』(単行本時のタイトルは『インタンジブル・ゲーム』)という、ハッカーをテーマとする作品でした。実は、かなり昔から先端テクノロジーに興味を持っているんです。日本では1995年にWindows95が登場して、ようやくパソコンで何ができるのかと話題になり始めましたが、その当時、私はすでにインターネット上で、いまのブログに相当するような、オンラインマガジンのような読み物を連載していました。
これはやはり、アメリカの銀行で仕事をしていた経験が大きいでしょうね。すでに80年代には企業内で電子メールを使っていましたし、日本よりも数年早くパソコンやインターネットが浸透していましたから。インターネットはやがて世界経済を根本から変えてしまうツールになるだろうと、肌身で感じることができました。AIに対する関心も、そうした興味や感覚の延長線上にあるものですね。

――AIは今、様々な分野で急速に活用が進んでいますが、今回の物語では、自動運転車にスポットがあてられています。

AIを題材に物語を書こうと考えたのはいいものの、金融の世界を舞台とするのではあまりに芸がないなと(笑)。よりサスペンスフルな舞台にしやすい分野を模索していましたら、ちょっとしたご縁で、自動運転車に試乗させていただく機会を得たんです。
自動運転レベル3、つまり条件付きで自動走行するタイプの試乗車で、高速道路を走りました。一応、運転席にドライバーは座っているのですが、ハンドル操作をしなくても高速道路で自動で車線変更を行なったり、追い越しもとてもスムーズでしたよ。ドライバーが居眠りをしたふりをすると、車体を震わして起こしてくれたりしてね。とにかく驚きの連続でした。これは物語の題材として面白いなとすぐに直感しましたね。

――冒頭では自動運転車が暴走し、人を襲うシーンが描かれています。現実でも自動運転車による死亡事故が発生しましたが……。

作品は現実の事件を参考にしたのではなく、連載中に現実が作品に追いついてきたんです。そもそも連載開始前の打ち合わせをしていた当初は、AIなんて言葉すらまだ一般には話題になっていなかったのですから。でも、連載が進むにつれ、気がつけばあっという間にさまざまな分野でAIが実用化され始め、大きな注目を浴びるようになりました。
そのプロセスでこうした不幸な事故が起こったことで、「やっぱり自動運転は不安だ」と感じる人もいるようですが、私はそうは思いません。これからますます高齢化が進めば、移動手段としての自動運転車は不可欠な存在になります。ただ、世間で思われているほどAIは万能ではなく、AIに教えるのはあくまで人間なのです。つまり、AIにどのようなデータを学習させるかは人間次第。だから、AIを活用して人間がなにをしたいと考えるかが大切。扱う人間によって便利なものにもなり、逆に危ない存在にもなり得るということです。

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