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「統計王子」・小川淳也衆議院議員が語る! 民主党政権が失敗した3つの理由

インタビュー・文:中島早苗 (東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)

2019年04月08日 公開 2022年01月13日 更新

国会議事堂
 

民主党政権の失敗と反省点

小川議員は、「ごく一部ですが」と言いながら、国会質疑中から事務所に届いたお便り、ファクス、メールや書き込みを印刷した分厚い束を見せてくれた。

小川議員への多くのエール、反響は今の社会、政治への不安、不満を持つ人が少なくないことを表していると思うが、投票率は低いままである。その理由をどう考えるか聞いてみた。

「民主党政権への失望でしょうね。民主党政権ができた時は、投票率は70%、今は50%程度。約2000万人が政治に興味を失い、遠ざかってしまったことになります。私はイギリスで仕事をしていた時期がありますが、民主主義議会政治発祥の地イギリスにはこういう格言があります。『政権は野党が奪うものではない。与党が失うものだ』。まさに民主党が政権を取った時も失った時もその通りで、与党が落第、失格の烙印を押されたんですね。だから民主党政権に期待してくれた方々に対し、あの失敗、反省をきちんと総括すべき。それを抜きに何を言っても、遠ざかった2000万人は帰って来ないと思います」

民主党政権の失敗、反省点とは何か、具体的に尋ねた。

「一言で言うと、政治主導をはき違えた結果、実務能力が低い政権だった。私は昔野球少年だったんですが、政権交代と野球の攻守交代ってよく似ていると思っていて。与党は守備につき、野党は打席に立つ。民主党は、政権交代して守備についたのに、守備位置で全員がバットを振っていたんですよ(笑)。国家を統治するという仕事と、政権を批判するという仕事の違いすら、明確にわかりかねていたきらいがあったと私は思います。
具体的な失敗点は三つ。一つ目は普天間と尖閣を巡って、外交関係が稚拙だった。二つ目は行革と天下りの禁止、事業仕分けで財源が16兆円出てくるから、あらゆる公約は増税なしで実現すると言っていたのに、ほとんど財源は出ず。公約の実現力において、甚だ不十分でした。最後は消費増税。消費税は上げないと言ってできた政権だったのに、財源がないとなり、消費増税に踏み切った。政治と国民との信頼関係を根底から傷つける約束違反ですよね。この点に関して真摯に総括し、謝罪すべきだと私は今でも思っています」

「統計王子」・小川淳也衆議院議員
 

持続可能な社会をめざして

最後に、小川議員が最も憂いている肝心のテーマについて聞いてみた。日本の今後の変化に対応して、より持続可能な社会にしていくためには、どんな政治と国民の理解、覚悟が必要なんだろうか。

「今、日本社会に襲いかかっている構造変化は激烈で、今までの政治の延長でいくと、行き詰まることが目に見えています。その現実から目を逸らし、金融緩和だの成長だの、過去の幻想にすがるのではなく、現役世代に偏っている負担構造の見直しなど、本格的な改革に乗り出さない限り、どうしようもないわけです。人口減と人口構成の激変という『不都合な現実』を日本人、日本社会が直視できるかどうか。ところが既存の政治家は、厳しい現実を国民と議論するとか、対話を重ねるとかやったことがないんですね、恐らく。だから、耳当たりのいい話に終始する古い政治がまだ続いている。
政治家が不都合な現実をごまかすのは、究極、選挙が恐くて、国民を信用し切れていないということだと、自分ですらそうなんだと私は気づいたんです。国民に対しても大変な当事者意識と自覚を求める作業に挑まない限り、正しい変革はもたらされない。そこまでの本気度のあるメッセージを出せた時に、遠ざかった2000万人の耳と心に届く可能性があるんじゃないかと思っています。政治家の側には、国民に対する突き抜けた信頼が持てるかどうかが問われているし、同時に国民の側も問われることになる。政治と国民の双方向の共同作業ですよね、最終的には」

大学生の頃から日本社会の行き詰まりを感じ始め、長い間考え抜き、調べ抜いてきたから「弾は充填されています」という小川議員。そんな議員が今考えていることをダイジェストにしてレポートしてみたが、エッセンスだけでもお伝えできただろうか。

議員の執務室を後にし、衆議院議場傍聴席で、初めての国会を見学させてもらった。議場の入り口のロッカーに筆記具以外の荷物を全て預けねばならなかったため、もちろんスマホも持ち込めず、内部の写真をお見せできないのが残念だ。

「最終的には国民の側が当事者意識を問われることになる」―。議員の言葉が耳に残る。私たちに何ができるだろうか。考えて、行動したいと思う。

著者紹介

小川淳也(おがわ・じゅんや)

衆議院議員/立憲民主党・無所属フォーラム

1971年、香川県高松市生まれ。東京大学法学部卒業後、自治省(現・総務省)に入省。沖縄県庁、自治体国際化協会ロンドン事務所、春日井市役所などを経て、衆議院選挙出馬のため退職。2003年、民主党から香川1区で立候補するも惜敗。05年、四国比例区で初当選。現在、衆議院議員5期目。この間、総務大臣政務官、国土審議会離島振興対策分科会会長、民主党常任幹事、副幹事長、民進党役員室長などを務める。著書に、『日本改革原案』(光文社)がある。

中島早苗(なかじま・さなえ)

東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長

1963年東京生まれ。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に約15年在籍、住宅雑誌『モダンリビング』『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て、2002年独立。以来、編集者、ライター。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(以上PHP研究所)、『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。2016年から、東京新聞月刊情報紙『暮らすめいと』編集長。

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