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1993年の本が予見していた“働き方改革” 昭和的「会社と社員の関係」の終焉

大沢武志(元リクルート専務取締役)

2019年06月07日 公開 2022年02月21日 更新

 

「個性化」は所属する組織との関係を無視できない

しかし、逆に若者の自己実現の世界に新しい社会問題が起こりつつあるという現実もある。

河合隼雄教授との対談での言葉を引用してみよう。

「自己実現という意味での個性化の問題は、ユングは人生後半の課題であると言っていますね。前半はとにかく世の中で成功しなきゃいかん。あるいは社会での自分の地位を自分なりにきちんと見つけなきゃいかん。

そして人生後半になって眠っていたもう一人の自分、もう一つの才能に気がつく。ところが今の若い人には人生の前半から、この人牛後半の問題が押しかけてくる。困ったことに人生後半の問題に若者が取り憑かれると何をするのも面白くなくなるんです。

就職したって、金儲けにしたって、何だ、というわけで無気力になる。これからは人生後半の問題に前半にして取り憑かれた若者の問題がますます大きな問題になってくるでしょうね」

これからの企業は多様な価値観を包含した、したがって矛盾に満ちた全ての世代の発達課題に応えうる「個性化」の途に主要な問題意識を持たなければならないのではないか。

それには相矛盾する様々な状況に耐えうる柔らかなマネジメントが求められるが、タイプ論でいえば、自分のなかのシャドウを意識化し、同時に顕在化させることに通じるだろう。

性格類型検査TIを用いたマネジメント研修は、アメリカでは、たとえばMITビジネススクールのヒューマンリソースマネジメントのコースに導入され、そこでは主として問題解決スタイルの演習としてカリキュラム化されているが、わが国の経営風土を考えると、むしろ「個性化」という観点から、研修を展開することに大きな意義を見出せると思う。

つまり、日本的経営の変貌が喧伝されているが、組織の人間関係のなかでの自分の定位という問題が重要なのは変らない。企業人でいる限り「個性化」も自分の所属する組織との関係を無視しては実現しえないだろう。

そして「個性化」は世代的にみても、あらゆる年代において自分を見つめ直し、自らの生き方を問い直すという点で、それぞれ固有の発達課題を包含している。

TIをフィードバックし、タイプごとにあるいはシャドウのタイプ同士を組み合わせ、このグループを編成して、グループワークを行なう。この形式の研修は、トップマネジメント層をはじめとするあらゆる階層別研修としてすすめることが可能であり、さらに職場ぐるみ、組織ぐるみの研修としてもチームビルディングの上でもTIならではの効果が期待できる。

そして、職場の人間関係のなかで各メンバーがTIを通して「自己開示」をはじめて経験し、それぞれの「個性化」の問題を共有できることが新たな人間関係へと発展する契機ともなるのである。

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