定年後、急に妻へ接近する夫の悲哀
2019年08月28日 公開 2024年12月16日 更新
妻は定年夫の「ママ」じゃない
こんな言い方をしたら悪いが「夢だったのよ」と言ってさしあげたい。しかし、その幻想に気づくサラリーマンは、役職が高くなるほど少なくなる。
大手企業勤務の男性が現役のとき、フリーでシングルのわたしは、会うたびに「大変だね。会社ほどいいところはないよ」と言われ続けた。
そんなとき、わたしは心の中で、「バカじゃないの? あなたが創業した会社じゃないでしょ。雇われているだけなのに勘違いして、なんという単細胞。でも、1000万近い年収をもらっていれば頭もおかしくなるわね」とつぶやく。
その彼が定年になり、妻と2人の新生活が始まった。子供も孫も元気にやっている。これからは、夫婦2人で旅にでも行って楽しもう。彼は、定年後は悠々自適な生活をする予定でいた。そりゃ、年金の額も半端ではないからできるでしょうが。
妻のたっての希望で、団体旅行ではあるが、メキシコへもアラスカへも行った。しかし、夫婦楽しく旅行できたのはそこまでだった。ある日、妻から「わたしは忙しいから、あなた、ひとりで行けば」との冷たい言葉が。
夫が会社に夢中になっていた30余年の長い間に、妻は妻で自分の居場所で地域や趣味の友達をつくりあげていたのだ。そこへ、ひょっこり夫に帰って来られても困る。
お金をたっぷりくわえてきてくれるなら、そりゃお世話もするが、あなたのお母さんではないのだから、自分のことは自分でお願いね、ということなのだ。
定年後の夫婦円満のコツは、妻との距離感を変えないこと
夫婦で楽しい老後を送りたかったら、きつい言い方かもしれないが、会社員であるうちから妻に目を向けるべきだっただろう。妻の髪型が変わっても気づかなかったのに、職がなくなってから妻にすり寄ってくるなんて虫がよすぎる。
残念だが、女性は夫よりもお金が好きだ。
妻のボランティア活動についていく定年夫がいるが、妻との関係を悪くし嫌われるだけなので、ついて行かないほうがいい。妻と一緒の老後の幻想は持たない方が賢明である。
妻はいつも外出しているか、家にいれば友達と楽しそうに長電話。そんなとき、ひとりで新聞を何度も読み返している自分を寂しく思うかもしれないが、子どもではないのだから、身近な人間、妻で孤独を癒(いや)そうとしないで、今から自分の世界を作りたい。
これまでに、そんなに会話がなかった夫婦が、老後になって急に会話のある夫婦になれるはずもないので、会社に代わる自分がいきいきできる場所を探したい。
定年男性よ、自分の世界を持ちましょう。妻に関心持つのはやめよう。妻を自由にさせなさい。自分の孤独は自分で癒すのが定年男子の務めだ。
サラリーマンのときと同じように、朝早く家を出て、夕方帰ろう。そして、家にいるときはニコニコと。妻を決して干渉しないことだ。あなたはもう管理職ではないのだから、人を管理することはできない。
そうすれば、「あの人、最近楽しそうだけど、何をしているのかしら…」と、ミステリアスなあなたに妻は、きっと関心を持つに違いない。
夫婦の距離は、平行線が一番。妻との距離を縮めないように心がけたい。