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感染者が急増する「梅毒」 知っておくべき症状、早期受診の大切さ

小野寿々子(ライター)、屋代隆(医療監修:自治医科大名誉教授)

2020年01月25日 公開 2020年01月25日 更新

感染者が急増する「梅毒」 知っておくべき症状、早期受診の大切さ

過去の病気、と思われていた梅毒が、近年の日本国内での急増が報じられている。特に妊婦への感染は胎児への影響もあり心配されている。

本稿では、梅毒の基礎的な情報について、梅毒をテーマとしたコミック作品『薔薇の迷宮』の原作者である小野寿々子氏が、医師・屋代隆氏の監修のもとで、急拡大を続ける梅毒について知ってほしい知識と情報を伝える。

 

梅毒の流行拡大が止まらない

国立感染症研究所のデータによると、1940年代に猛威を振るい20万人を超える患者数が報告されていた梅毒。

ペニシリンの普及で2003年には500人程度まで激減していたが、近年また増え続けている。

2012年が875人、2013年は1228人、2014年1661人、2015年2690人、2016年4575人、2017年5826人、そして2018年にはついに7000人を超えた。

これはあくまでも報告数であり、実際の患者数はその3~4倍とも言われている。いずれにせよ実に6年間で8倍だ。

この急速な拡大はSNSや出会い系アプリの普及が一因とも、外国人観光客の増加が原因とも、また症例が少ないゆえの医師及び患者の梅毒への意識低下が原因とも言われているが、詳細は不明である。

患者の絶対数は男性が多いが、2013年以降は特に10代から20代の若い女性の増加が目立つ。それは必ずしも性風俗産業に従事する女性だけではない。

風俗店の利用男性を通して一般女性や家庭の主婦にも梅毒が広がっていると推測される。つまり、普通の女性が知らないうちに感染していたというケースが少なくないのだ。

こういった背景のなかで、「梅毒診療に不慣れな臨床医のもとにも思わぬ形で梅毒患者が現れる可能性が 高まっている」として、2018年に日本性感染症学会梅毒委員会から簡潔で実用的な「梅毒診療ガイド」が策定、公表されている。

日本性感染症学会のサイトには患者への平易な説明文も用意されているので、関心のある人は読んでみてほしい。では、梅毒とは具体的にどんな症状を現し、どのような経過をたどるのか。

ひとことで言えば、梅毒トレポネーマという細菌が引き起こす性行為感染症である。主に粘膜と粘膜の接触により感染するが、セックスだけでなくディープキスでも感染の危険がある。

現在は早期であればペニシリン系抗菌薬の投与で確実に治る病気だが、放置すると脳や神経、血管を冒され、さまざまな障害を引き起こし最終的には死に至ることもある。

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梅毒の進行は4分類される

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