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テレワークの残酷な現実…居場所を失う「働いているフリ」していただけの社員

藤井聡(京都大学教授/内閣官房参与)

2020年07月03日 公開 2024年12月16日 更新

 

テレワークで評価が「下がる人」と「上がる人」の違い

まず、社員の評価は、成果物などのアウトプットや売上などの数字が出せるかどうかで、優秀かそうでないか判断されることになる。

勤務時間の8時間、デスクに向かって電卓を叩いて何度も計算をし直してExcelに数字を入力している人。いろいろな会議に参加して評論的なコメントをするだけで、いつもデスクと会議室を行き来している人。何か一生懸命にやっている感、真面目にやっている感を演出することに長けた人物は、世の中至るところに存在してきた。

テレワークをきっかけに評価が下がるのは、まさにこうした人々だ。その人の様子が周りから見えず、会議も気軽には開催されない環境では、「仕事を頼んでも全然アウトプットが出てこない人」、「何をしているのかわからない人」として徐々に居場所を失っていくだろう。

一方で、以前より評価が上がる人材も出てくる。ExcelのマクロやRPA(人の手作業で行っていた定型業務の自動化)を活用して、電卓で計算する人が8時間かけていた作業を1分で終わらせてしまう人や、無駄な会議に参加せず、パソコンに向かって黙々と成果物を作り続けていた人などだ。

このような人たちは、これまでは勤務態度が不真面目だ、協調性がない、というように正当に評価されなかったかもしれない。だが、テレワークが進んだ社会では、そのようにアウトプットを迅速に的確に出せる人こそが優秀な人として評価されるのだ。

 

テレワークで進む「人材の二極化」

そうなれば、優秀な人のモチベーションは上がり、生産性も高まることになる。

効率的に成果を出せる人が、余った時間で副業を始めるケースもあるだろう(会社が副業を禁止できるのは、労務提供上の支障がある場合などの例外的な場合のみであり、原則として副業は認められている)。副業が一般的になれば、一つの会社に雇用されてそこでだけ働くのではなく、複数の会社から業務を委託されて働く人が増え、雇用と業務委託の境界は薄まっていく。

テレワークが進んだ社会では、アウトプットや数字を出せる人とそうでない人との二極化が進んで、前者の人はやりたい仕事を選べるにようになる一方で、後者の人は本当に仕事が無くなるだろう。

現在の日本の労働法では、社員の解雇は例外的な場合しか認められないが、欧米のような金銭解雇(一定の金銭を社員に支払うことで解雇できる制度)が仮に将来法制化されれば、後者の人は職を失うことになってしまう。

企業だけでなく個人にとっても「生き残り」がかかってくる以上、必要な知識のインプットや仕事の進め方の変化からは誰しも逃れられない。ならば一刻も早く動き出したほうが確実に有利だ。「自分の職場は関係ない」と言わず、ぜひできるところから取り組みを始めてもらいたい。

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