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大企業は年間15億円の損失…調査で分かった「何も決めない会議が65%」の絶望

越川慎司(クロスリバー代表取締役社長)

2020年12月15日 公開 2022年07月12日 更新

 

会議の目的で圧倒的に多い「情報共有」

社内会議がどのような目的で行われているかについて、217社に追跡調査しました。各社の社内会議の中で、「情報共有」「意思決定」「アイデア出し」それぞれに費やされる時間の比率を調べたところ、以下のような結果になりました。

(1) 情報共有…65%
(2) 意思決定…13%
(3) アイデア出し…22%

圧倒的に多かったのが、「情報共有」の65%でした。月曜日の午前や水曜日の午後に行われる定例会議は、そのほとんどが情報共有でした。

予想外に少なかったのが「意思決定」です。多くのことをスピーディーに決めることが成果につながるにも関わらず、社内会議全体の13%しか費やされていません。これは「決めない会議」が多く存在している証拠になります。

「意思決定」の会議よりも、利益や業績につながりやすいのは「アイデア出し」の会議です。課題解決のためのすり合わせをすること、あるべき姿を議論すること、新サービスの開発案を出し合うこと。

また、トラブル対応の対処法を考えるのも、この「アイデア出し」の会議です。十分なアイデアが出なければ次の「意思決定」ができませんから、「アイデア出し」の会議は非常に重要です。にも関わらず、22%しか費やされていませんでした。

不確実で変化の激しい時代には、スピード感を持って決定し、すぐに実行に移すことが求められます。しかしながら、その決定がなされず、決定に必要なアイデアを出す時間が取られていないのは問題です。

「情報共有」ばかりやっていても、変化に対応することはできません。「共有」「決定」「アイデア出し」の比率を変えていくことが、「会議の質の改善」として求められているのです。

 

1時間の会議に人件費3.5万円、1年で“15億円”

一般的な正社員の平均年収を総労働時間で割ると、正社員の1時間当たりの収入は約4500円となります。弊社が総計8000時間以上の各社の会議をリサーチしたところ、1つの会議に参加する人数の平均は7.8名でした。

単純に時給4500円の人が7.8人参加すれば、1時間で約35000円ほどになるという計算です。

会社はこれ以外に、福利厚生費や企業年金を社員にかけているわけですから、実際にはそれ以上のコストがかかっています。社内会議に時給の高い管理職や役員が入れば、より高コストになります。

調査会社「パーソル総合研究所」の2018年の調査によると、1万人規模の企業では年間約67万時間、15億円もの人件費が会議でムダになっているそうです。

これだけのコストをかけて行う社内会議でアウトプットが出なければ、投資は失敗と言えるでしょう。また、これだけのコストがかかっていることを意識すれば、「会議に出ることが目的の社内会議」はなくすべきという議論につながるはずです。

このように、会議にどれだけのコストがかかっているのか? 会議によってどれだけの時間が奪われているのか? を数字で表すことによって、「ムダ会議」の実態を実感することができます。

 

役員会議の準備に“70時間”

弊社が587社に実施した調査では、役員会議の準備に時間をかけ、その効果を気にしている企業が64%ありました。28社に追加調査を行うと、1時間の役員会議を開催するために、現場のスタッフが72時間もの時間を準備に費やしていることがわかりました。

そして、従業員数が多い企業ほど、準備のために時間をかける傾向があることも確認できたのです。役員会議の準備の中では、上長や役員への事前説明ための打ち合わせに、特に時間をかけていました。

つまり「会議のための会議のための会議」です。そして、説明する上長や役員の数が多くなるほど、資料作成にかける時間が長くなることも判明しました。

課長に見せたら「このデータを加えろ」、部長に説明したら「ここに説明文を追加しろ」、本部長に見せたら「事例とデータも入れておけ」と言われ、最後に役員に見せたら「もっとシンプルな資料にしておくように」と言われるパターンです。

従業員が1000名を越える大企業では、資料のレイアウト修正が何度も行われることが多く、資料に入れる文字のサイズが小さくなる傾向がありました。

このように、説明や資料作成に大量の時間を費やしている役員会議の準備プロセスには、改善の余地が多くあるのです。

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意思決定者が「決定」会議を仕切ってしまう愚

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