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大企業は年間15億円の損失…調査で分かった「何も決めない会議が65%」の絶望

越川慎司(クロスリバー代表取締役社長)

2020年12月15日 公開 2022年07月12日 更新

 

意思決定者が「決定」会議を仕切ってしまう愚

また、意思決定者である経営者が会議を仕切っているシーンをよく見ました。自分の意見を言い、相手の意見にダメ出しをして、そして次の議題に勝手に移ってしまうパターンです。

これは、創業社長がいる会社の経営会議でよく見られます。社長自らが会議を仕切ってしまうのです。

自分の思いや理念を浸透させるために率先して会議を運営したい気持ちはわかります。しかし「決める人」と「仕切る人」が同じ人の場合、当初予定していた目的が達成する確率が4割ほど落ちるということが、データで明らかになっています。

意思決定する際には、何らかの感情や思い込みが入ります。そして、その方向に意見を集約させようとするバイアス(心の偏り)が働きます。

特定の意向のある人が会議を仕切ると、自分の意見にマイナスになるものは排除し、プラスになるものは誇張させていく傾向があります。こうなると、社長の支配する独占的な会議になってしまい、率直な意見が言えず場が硬直します。

参加者が「モノを言えない状態」になると、パワーハラスメントの温床になることもあり、大勢の参加者の前で個人攻撃をすることによって精神疾患になるケースも出てきます。

意思決定者は、「決定すること」に全精力を集中するべきです。意思決定者は、時間の管理や参加者に意見を出させることなどにエネルギーを使わない方がよいのです。意思決定者が会議を仕切ると、67%の会議で時間通りに終わらないというデータもあります。

全体のアジェンダを把握し、時間通りにアクションまでをまとめ上げる人は、ファシリテーターとして中立的な存在であるべきなのです。

 

「アイデアを出す会議」と「決める会議」は分けて行う

繰り返しになりますが、会議の目的は「情報共有」「意思決定」「アイデア出し」の3つです。1つの会議でこの3種の目的を同時に行うと、適切なアウトプットが出にくくなります。

特に「アイデア出し」と「意思決定」が1つの会議の中で同時に行われると、アウトプットが出ません。例えば、次のようなケースです。

上司から「何かよいアイデアを出せ」と上司に言われて、おそるおそるアイデアを出していく。参加した部下が勇気を出して発言すると、矢継早に「それは予算がないから無理」と言ったり、「それはもう他社がやっている」と言ったりと、上司が「意識決定」のダメ出しをする。

参加者が自発的に意見を出したにも関わらず、それを頭ごなしにダメ出ししてしまうと、他の出席者も意見が言えない空気になります。

このように、アイデアを出したら潰されて、意見を出したら否定されてといった会議を繰り返してもアウトプットは出ません。参加者は委縮して「意思決定」に必要な材料が揃いません。

アウトプットを出すためには、「アイデアを出す会議」と「決める会議」を分けることが必要です。アイデアを出す会議では否定することをせず、多くのアイデアが出るようにファシリテーションするのです。

「アイデアを出す会議」でたくさんのアイデアが出たら、今度は「意思決定」会議を開催して、決めるべき人がどのアイデアを採用するのか決めていくのです。

22社で3週間の実験をしたところ、「アイデアを出す会議」と「決める会議」を分けることにより、会議時間が平均で11%減りました。例えば、定例会議の前半30分は「アイデア出し」に専念し、後半30分は意思決定者のみが残って決定するのです。

これで、社内会議に費やす時間が11%も減り、アウトプットも出るようになったのです。

 

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