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IT企業に「社長の本を読んで」の志望者が続出…出版に挑戦して社内に起こった“激変”

大槻幸夫(サイボウズ株式会社),⼤塚啓志郎(株式会社ライツ社),井上慎平(株式会社ニューズピックス)

2020年12月14日 公開 2022年08月09日 更新

 

ITサービスだけでは得られなかった「手触り」のある好感

(大塚)では、NewsPicksパブリッシングの1年はいかがでしたか。

(井上)2017年にメディア会社であるNewsPicksが、幻冬舎さんという外部の出版社と組んで「NewsPicksBook」っていうのを立ち上げました。

2019年4月には、NewsPicksの中に“パブリッシング部門”という部署ができ、新しいレーベルがスタートしました。毎月そこから1冊ずつ、今ちょうど10冊くらい出たかな、というところです。ビジネス系に限らず、スティーブン・ピンカーのような外国のポピュラーサイエンスといった骨太なものも扱っていますね。

ちょうど先週、社長の坂本との会話のなかで、「本を出すって、こんなにブランディングになるんだ」みたいな話になりました。もともとITのサービスを提供している会社で、毛色が全く違う“出版”というものの価値をこの1年で社内の人にも見てもらえたと思います。

(大槻)情報発信をすることがブランディングになるという意識は、NewsPicksをもともとやられていたから、ベースとしてはあったように思うんですけど、そんなことはなかったですか。

(井上)それはあったと思います。ただやっぱり、ウェブで記事を出すことや、ITサービス中心で、あんまり「モノ」をつくらない会社だったんです。手触りのある「モノ」を売っていなかった。

出版物を出すことで、「書店で見たよ」とか「買いました」とか、「モノ」としての好感を得られるのが新鮮だったのかもしれませんね。

 

IT企業が見出した「出版」のさらなる可能性

(大槻)「モノ」としての好感というのには、すごく共感します。サイボウズも、かたちのないサービスを売っているので。ほとんどスクリーンショットでしか、お客さんとも喜びを共有できないんですよね。

なので手触りのあるかたちで、しかも全国の本屋さんに並ぶという、このかたちとスケールの違いがすごく新鮮で。サイボウズがインスタグラムに投稿されるようになったのも、紙のおかげなんです。表紙を撮って写真をあげてくれるんで。

出版社の方々って紙に大きな閉塞感を感じていらっしゃるんですけど、IT業界からすると楽しさしかない。

(井上)IT企業のサイボウズがインスタグラムにあげてもらえる、というのは、わかりやすい例ですよね。

出版物が全国の本屋さんに置かれているだけで、「本が出るんですね」とか、「うちの近くの本屋で見ました」という声がもらえる。そういった声の力には出版社にいたら気づけませんでした。

(大槻)出版業界を経験してきた井上さんだから、特にそう感じられるのですね。出版社の方々にとっては、つくったものが本屋に並んでるのが当たり前ですもんね。

 

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