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IT企業に「社長の本を読んで」の志望者が続出…出版に挑戦して社内に起こった“激変”

大槻幸夫(サイボウズ株式会社),⼤塚啓志郎(株式会社ライツ社),井上慎平(株式会社ニューズピックス)

2020年12月14日 公開 2022年08月09日 更新

IT企業に「社長の本を読んで」の志望者が続出…出版に挑戦して社内に起こった“激変”

IT企業サイボウズ。主に企業や団体向けの業務を支援するためのグループウェアやツールを提供している。

そんなサイボウズがにわかに出版業界の注⽬を集めたのは2019年11⽉。兵庫県明⽯市のライツ社と⼿を組み、「サイボウズ式ブックス」として出版事業に進出。第⼀弾として同社取締役の⼭⽥理⽒による『最軽量のマネジメント』を発刊した。

⼀⽅で同時期に、ソーシャル経済メディアNewspicksを運営するニューズピックスもまた紙書籍の出版事業に踏み切るべく、「Newspicksパブリッシング」を⽴ち上げた。安宅和⼈⽒の『シン・ニホン』がベストセラーになるなど出版業界を⼤いに盛り上げた。

ともに始動から1年が過ぎた現在、IT企業のポジションから挑戦した「出版の世界」はどのように映ったのか。

 

「青野社長の本を読んで」がアンケートでトップだった

(大塚)サイボウズ式ブックスもNewspickパブリッシングも、最初の出版から1年が経過します。IT企業として出版の世界に進出されたことで変化や感じたことなどをお聞かせいただけましたら。

(大槻)サイボウズ式ブックスは、2019年11月7日に第1弾の『最軽量のマネジメント』を出版しました。

重版もできました。今のところ発行部数は2万部ですが、ライツ社さんの力を借りながら素人のメンバーで始めたわりには、結果が出たかなと胸をなでおろしています。

出版事業を始めた理由は、7年くらいやってきたオウンドメディアの限界が見えてきたことにあります。2012年から「サイボウズ式」というオウンドメディアをWEB上で展開してきましたが、届く人にしか届かないと感じることも多くて。

毎月のページビューも20~30万で安定推移はしているんですが、さらに多くの人にリーチするためにはどう考えたらいいだろうかと。チャレンジの選択肢が様々ある中で、メディアとして違う媒体にチャレンジしていくという方法もあるな、と考えていました。

そのときにヒントになったのが、弊社の採用活動だったんですね。中途採用で応募し、そしてその後サイボウズに入社された方々に、「何を見て決めましたか」と聞いたアンケート回答の1位が「社長の青野の本を読んで」だったんですね。

ネットで細切れの情報は発信しているけれども、転職を考えるぐらいの決断をする材料としての情報は、「本」というパッケージで一つにまとまって伝わることがすごく大事なんだなぁと実感したんです。

 

お金を使うだけでなく利益を生み出す「広報」

(大槻)サイボウズ式は「コーポレートブランディング部」にある部署で、「サイボウズを知っていただくために何をやるか」を考えています。であれば、今度は「紙」という媒体でチャレンジしてみたいということになったわけです。

(大塚)2万部という数字は、出版社の人間として見ても、純粋に利益が出ている数字です。「コーポレートブランディング部」つまり、通常の企業のブランディングであれば、広告費などで支出だけの管理になるはずですが、しっかりと利益が上がっていること自体がすごいですね。

(大槻)はい。売れれば売れるほどサイボウズのことを知ってもらえるし、黒字になるという状況です。

(大塚)この状況って、広報的観点からだとどういう計算になるんですか。

(大槻)基本的に僕らって、広告など様々な形でメッセージを出すというコストセンターなわけですが、今回は売上が立つので、その分を今までかかっていた費用から差し引ける、つまり「激安で広報活動を行っている」という形が解釈としては正しいと思ってます。

おかげさまで、著者になった副社長の山田も、多くの媒体から声がかかるようになりウェビナー(オンライン上のセミナー)も増えました。

本来ならば社内のメディアを通して伝えなければいけない、副社長のマネジャーの考え方を本としてまとめられたのです。しかも、本として売られる状況に対して「おもしろい」という感情をともなって社内に流通していくのが非常に効果的で。

単に社内でテキストブックとして回ったとしても、上から押しつけられるだけで誰も読まない本になっちゃうんですよね。「『最軽量のマネジメント』、書店でよく売れてるらしいよ。Amazonでも評価が上がってる」と評判が広がると、自発的に読む社員も出てきました。

「第三者がいいって言ってる」「うちの会社がいいこと言ってるらしい」という感情をともなって考え方を伝えていくこともでき、いろんな意味で挑戦して良かったなぁと思っています。

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ITサービスだけでは得られなかった「手触り」のある好感

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