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「郵便投票の逆転劇」の原動力…アメリカ大統領選の鍵を握った“福音派”



2021年03月02日 公開

松本佐保(国際政治学者)

松本佐保著『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』

2020年大統領選挙は、トランプが最後まで敗北を認めず法廷裁判に持ち込むなどバイデン就任まで異例の事態となった。この接戦となった選挙戦を読み解く鍵のひとつに、宗教がある。

トランプ再選の鍵を握っていたのは、福音派というキリスト教プロテスタントの非主流派だった。伝統的なキリスト教が衰退する一方で、この福音派が白人ナショナリズムと結びつき「政治化」したことが、アメリカでの前トランプ大統領誕生へとつながり、世界に大きな影響を与えて来た。

国際政治学者の松本佐保さんは著書『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』で、政治化・多様化する福音派の歴史や信仰から現代社会に与える影響、アメリカでの宗教ロビー(宗教票)の役割をわかりやすく解説する。本稿では、同書より一説を紹介する。

*本稿は、松本佐保著『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』(ちくま新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

宗教が身近な「神の国」アメリカ

アメリカは、人口の約85%がキリスト教徒という国である。宗教は彼らの生活に密着しているばかりか、政治の場でも大きな影響力を持ち、現在では大統領選挙の行方すら左右するようになった。

キリスト教にはカトリックとプロテスタントがあり、前者23%、後者55%という内訳となっている。つまり人口の半数がプロテスタントだ。プロテスタントは、聖書の解釈によって主流派と非主流派に大きく分かれている。

残りの5%はアーミッシュや黒人キリスト協会、または新興宗教系のキリスト教徒である。

新興宗教系キリスト教とは、エホバの証人、ものみの塔やクリスチャン・サイエンス・サイエントロジーなどで、アメリカではこうしたカルト的な新興宗教系のキリスト教もそれなりの信者数を抱え、活動も活発である。

キリスト教徒以外の15%には、3%のユダヤ教、2%のモルモン教がおり、それ以外の10%は、イスラムと仏教徒とヒンドゥー教、新興宗教と無信仰を合計したものである。

 

聖書を原理的に解釈する福音派

2016年大統領選挙でトランプを支持した人々の多くが、敬虔なキリスト教プロテスタント信者であり、非主流派の「福音派」だった。

福音派とは、聖書の福音書と信じる一派であった。「福音(Good News)」とはキリスト教の言葉のことであり、新約聖書のマルコ、マタイ、ルカ、ヨハネによる「福音書」は、キリストの生と死、そして復活を遂げるまでの言行を弟子がまとめた記録である。

元々は福音書に書かれていることを忠実に守り行動する一派だが、アメリカでは福音書を文字通り解釈して絶対視する原理主義的なキリスト教徒を「福音派」と指す場合が多い。

中絶を強固に反対し、進化論を否定し、神による創造論を信じる人たちである。そのため、「原理主義」とも呼ばれている。彼らはワクチンにも懐疑的で、対コロナ感染症のワクチン接種を拒否する者が一定数いるであろうと言われる。

しかし、実際のところ、福音派の定義は曖昧で、カトリックやプロテスタントのようにきっちり制度化された組織があるわけではない。そのため社会的・政治的要因などで流動的な用語である点にも留意する必要がある。

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