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人と地域に“根ざす”企業のあり方を求めて~新井将能・NEZASホールディングス社長

マネジメント誌「衆知」

2021年03月01日 公開 2022年10月17日 更新

北阪昌人(ラジオドラマ脚本家、作家)
 

“予定調和”は要らない 北阪昌人(ラジオドラマ脚本家、作家)

今回のFM番組コーナー企画で構成を担当しました。新井さんと初めてお話しした時の印象は、「コミュニケーションについて深く考えていらっしゃる方だな」というものです。お話をするたびにその思いは深まり、僕が考えてきたラジオのあり方と新井さんの考えていることに何か共通点があるような気がして、この企画が始まる時からすごくワクワクしていました。

僕たちもよく「地域に根ざす」という言葉を使います。でも、新井さんの“根ざす(NEZAS)”には「人と人がどう対話して、どうコミュニケーションを取るのか」というもっと深い意味があると思います。

ラジオ番組を制作するにあたっては、結末をどうするのか、そこに持っていくためにどんな仕掛けをしていくのかを考えながら進めていくのが業界では当たり前になっています。ところが、新井さんには最初から、「予定調和はやめましょう」と釘を刺されました。これは新鮮な驚きでした。確かに、初めにゴールを設定すると、みんながそれに向かって走らなければならないという気持ちになります。これでは、新井さんの言うコミュニケーションの深まりにはつながらない。何度も打ち合わせを重ねるうちに、僕たちも理解するようになりました。

「ああ、そうか。僕たちが何か結論めいたところに導く必要はないんだ。それよりも太田さんと、ゲストやリスナーの人たちとのやりとりの中で、どうやってお互いの思いが引き出されたり、深められたりするのか、静かに見守ればいいのではないか。その中で、自分にとって夢とは何かということがじんわりと感じられてくるような、そんなコーナーになればいいんだ」と。

そういう意味では、パーソナリティの太田奈緒さんは素晴らしかったと思います。なかでも小学4年生の女の子にスタジオに来てもらって対話した時の回は秀逸でした。優しくリラックスできるように話しかけるのはもちろん、決して押しつけたり決めつけたりしないで、相手を尊重して胸の内にある言葉が出てくるのを手助けするようなスタンスです。その場面は、本当に素敵でした。

立場の違いを超えてお互いが人と人として向かい合う――新井さんが追求しておられる“根ざす”が体現された一つの姿だったのではないかと思います。

僕自身は筋書きをきっちり決めてから脚本を書くタイプではなく、わりと主人公を泳がせていきます。ですから、自分は予定調和で行く人間じゃないと思っていました。でも今回新井さんと仕事をしたことで、経験を重ねていくと予定調和の方向にどんどん流れていくものだなという大きな気づきがありました。

考えてみれば、人生というのは何が起こるかわからないし、構成なんてできないはず。だったら、構成しない番組があってもいい。特に今は、予想もしないことが次々と起こってくる時代です。コミュニケーションも型通りに収めようとするのではなくて、リアルに起こってくることをそのまま受け止めることが大切なんだと。新井さんからそんなメッセージをいただいた気がします。(談)
 

北阪昌人
きたさか・まさと*1963年大阪生まれ。学習院大学独文科卒業。日本放送作家協会会員・日本脚本家連盟会員。『NISSAN あ、安部礼司』『AKB48の私たちの物語』など、多くの番組を手がけ、書いたラジオドラマ脚本は、1000作品にも及ぶ。後継の育成にも尽力し、多数の受賞者を輩出。

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