人と地域に“根ざす”企業のあり方を求めて~新井将能・NEZASホールディングス社長
2021年03月01日 公開 2022年10月17日 更新
自分に指を向ける
「正解のない時代」「答えのない時代」と呼ばれて久しい。にもかかわらず、私たちには「正解」「答え」を求める性質がしみついている。
ビジネス書の売り場には「こうすればうまくいく」という類の本があふれている。「正解のない時代」だと頭では知っているはずなのに、他人のやり方を見て「正解」に辿り着こうとする。
「大事なのは自分に指を向けることだ――私は組織風土改革の啓発者として知られる大久保寛司さん(「人と経営研究所」所長)からそう学びました」と将能氏は言う。
自分とは何か。自分の仕事とは何か。自分がやっているビジネスとは、つまるところ何なのか。みずからが経営する会社は、何のために存在するのか。自分自身に対して問題意識の指を向けなければ、これらの問いには答えられない。
自分への問いにフタをしたまま他者に指を向け、他人はどうやって成功しているのか、他社はどうやって業績を伸ばしているのかを追い求めたところで、それは借り物でしかない。状況が変われば、これまでの常識やセオリーはあっという間に吹き飛ばされてしまう。現にこの一年、コロナ禍の影響によって日本も世界も、働き方やビジネスのやり方が一変してしまった。
正解がないのに、答えを求めて右往左往する。目先の解決策を得るためだけに東奔西走する――そういうあり方から一度距離を置き、みずからに指を向けて自分自身や自分の仕事、自分の会社のあり方を見つめ直すことが必要な時代を迎えているのではないだろうか。
人のあり方は十人十色である。だから、こういうあり方が正しいという「正解」はない。一人ひとりが自分の人生と向き合い、自分と対話しながらつかみ取っていくしかないものだ。
新井将能氏は「NEZASとは何か」「NEZASホールディングスはどうあるべきか」という問題に対し、みずから思考と実践を重ねてきた。TOKYO FM「太田奈緒のサステナブル・ドリーム」はそのプロセスの一つである。
新井氏の模索は、いずれ何らかの新規事業というかたちに辿り着くかもしれないし、そうでないかもしれない。新井氏自身にもそれはわからないという。
「何か結論が出たとしても、おそらくそれは一時的な答えなのだろうと思います。一つの答えが出ると、またそこから新しい問いが生まれます。大事なことは、問いを繰り返すこと。そして実践していくこと。そのプロセスではないでしょうか」
新井氏はこれからも問い続け、みずからの実践を続けていくだろう。私たちもまた、自身のあり方、そして何を実践するのかが問われているのである。