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人と地域に“根ざす”企業のあり方を求めて~新井将能・NEZASホールディングス社長

マネジメント誌「衆知」

2021年03月01日 公開 2022年10月17日 更新

新井将能(株式会社NEZASホールディングス代表取締役社長)
 

ラジオとSNSのコラボ企画

将能氏が考える日々を送っていた時、東京のFM局で働くビジネススクールの後輩から一つの提案があった。「新井さんは、考えていることをどう実践に結びつけるか、あるいは気づかないところにどう気づきをもたらすかという、いわば思考実験的なフレームをお持ちだと思います。それがラジオでできるかどうか考えてみましょう」というのだ。

その結果、実現したのがTOKYO FM土曜朝の番組『Ready Saturday Go』内でのコーナー企画「太田奈緒のサステナブル・ドリーム」だ。太田奈緒氏はアイドルグループAKB48出身の女優で、AKB48時代にトヨタのプロモーションでNEZASグループの一つである烏山自動車学校を訪れていたという縁がある。

今回の企画は、彼女をパーソナリティとして、リスナーとともに「夢」について考え、応援していこうという趣旨である。毎月最終土曜日の朝の約10分間、2020年7月25日から約半年間にわたって放送された。

この企画の特長として挙げられるのは、ラジオに加え、SNSの一つでコンテンツを配信できるプラットフォーム「note」でも情報発信を行なったことだ。ラジオだけだと聞きっ放しで終わる可能性がある。SNSと連携することで、次の放送までの期間にも、リスナーとのコミュニケーションを深めようというねらいだ。

太田氏が毎週「note」に文章をアップする。今回のテーマである「夢」や、それにまつわるエピソード、太田氏自身の気づきやそれに対するリスナーの反応などだ。ラジオとSNSが双方向で影響し合いながら、太田氏がゲストやリスナーとともに、半年間の道のりを歩んだ。

制作にあたって、将能氏はスポンサーという立場ではあったが、あえて目に見える成果を求めなかった。それを求めると、結局のところ結果を出すために、あちこちで辻褄合わせをしなければならなくなる。

「コミュニケーションをどう深めるか。自分の問題意識だけでこれを追求しても、自分の中で完結してしまいます。これを外に出した時、人はどう反応するのか。自分とは異なる感性や考え方を持つ人にそれを伝えた時、どのように受け止められるのか。それを試してみるのが、この企画の大きな目的でした。私にとって、ある種のマーケティングリサーチだったといえるのかもしれません」

と将能氏は語る。そして、こう続けた。

「今回、あるリスナーからの反応に、私は大きな手ごたえを感じることができました。それは『note』に書かれたフォロワーのコメントです。『毎回のテーマがなかなか難しくて、簡単にコメントしていいものかどうかわからない』という趣旨でした。これを見た時、『今回の企画はうまくいった』と思ったのです」

今、ネット上では、自分の意見や感情を思いつくまま安易に投げかける言葉があふれている。しかし、必要なのはそういう脊髄反射的な言葉ではなくて、自分の頭でじっくり考えることではないのか――そんな思いが将能氏にあった。

「考えて言葉にすることは大変です。でも、やってみれば誰でもできるはずだし、自分への気づきが深まっていくものなのだと。そんなことが伝わればと思っていました」

結論を求めるのではなく、対話のプロセス、考えるプロセスを大事にしようというスタンスが、一部のリスナーにはしっかり届いていたようだ。

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