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人と地域に“根ざす”企業のあり方を求めて~新井将能・NEZASホールディングス社長

マネジメント誌「衆知」

2021年03月01日 公開 2022年10月17日 更新

「根ざす」とは人と向き合うこと

NEZASホールディングスの「NEZAS」には、文字通り地域に“根ざす”企業という意味が込められている。これは、将能氏が「新井家の原点である新庄とは何か」を追求した末に辿り着いたキーワードだった。

栃木トヨタを引き継いだ時、将能氏は「自社のアイデンティティがどこにあるのか」という問題に悩んだ。確かに「トヨタ」というブランドは冠としてある。しかし、それではこの地でずっと事業を営んできた自分たちの思いはどこに行ってしまうのか――。

新庄は明治の創業期から雑貨や石油製品など、地域の生活に欠かせない物品を扱う事業を営んできた。戦後、モータリゼーションの波が訪れると、ガソリンスタンドや運送業などを展開。地域とともに生きてきた企業だった。トヨタというブランドに頼らずに自社の存在意義を示す言葉――それが「NEZAS」だったのだ。

傘下の各事業会社は、それぞれの経営の中で地域に“根ざす”活動を行なっている。では、ホールディングスはどうするのかという問題が残った。

純粋持株会社なので、子会社の株式を保有しているだけでその役割は果たしているともいえる。しかし、「実質的には自分一人が携わるNEZASホールディングスのあり方は、自分のあり方そのものである」と将能氏はとらえる。

当初はプロモーション活動の一環として、地元メディアとタイアップした番組制作などを模索した。しかし、どうしても「協賛」の域を出ないというもどかしさがあった。少々手を突っ込んでも、「協賛」が「協力」になるくらいの変化しかない。

そのような中、一つの手応えを感じる出来事があった。これまでの活動の縁がきっかけで、町おこしの映画製作にかかわることになったのである。地元・那須烏山市の伝統文化を守り、さらに盛り上げていこうと、若い世代が様々な壁にぶつかりながらも、まわりの理解を得て人々を動かしていくという物語だ。『YOU達HAPPY映画版 ひまわり』というタイトルで2018年に公開された。

映画製作は、将能氏に次のような気づきをもたらした。

「製作のプロセスで、様々な交流がありました。地元の人たちの思いであるとか、外の人から那須烏山がどう見えるのかなど、お互いに認識や課題をぶつけ合うことで、新たな気づきや発見が生まれました。単なる『協賛』ではなく、ともに活動することでコミュニケーションが深まり、人の心に変化をもたらすものなのだと思いました」

地域に“根ざす”とは、人々とのコミュニケーションなしには成り立たたない。つまり、コミュニケーションの深まりこそ、“根ざす”ことの根底ではないのか――そこから将能氏の問題意識は、コミュニケーションをどう深めるのかという方向に向かうことになる。

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