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大病院の院長代理が「毎日クラシックを聴く」理由

小林修三(湘南鎌倉総合病院院長代行/昭和音楽大学客員教授)

2021年05月31日 公開 2024年12月16日 更新

大病院の院長代理が「毎日クラシックを聴く」理由

湘南鎌倉総合病院の院長代行である小林修三医師は、無類のクラシック音楽好きだ。大規模病院を統率する傍ら音大の客員教授も務めるほどで、多忙な1日のスキマ時間を見つけてはクラシックを聴く。「ただ好きだから」との理由だけではなく、心身を癒しメンタルケアに有効だからだという。

本稿では、クラシック音楽の聴き方について、癒やし効果が高いといわれるモーツァルトを軸に聴き方のヒントをお伝えします。

※本稿は、小林修三著『モーツァルトで免疫力を鍛えるコツ』(PHPエディターズ・グループ)より、一部抜粋・編集したものです。

 

タイミングは「朝」と「夜寝る前」

まず「いつ聴くか」ですが、じつはいつでもいいのです。朝起きたときから通勤中、あるいは仕事中、そして寝る前など、気楽に流しておくだけでも気持ちの良いものです。おすすめのタイミングを強いて挙げるなら、「朝」と「夜寝る前」に聴くといいでしょう。

朝は一日のはじまりですからとくに大事であり、夜はすっきりとした気分で眠りにつきたいものです。「何を聴くか」も、何でも好きな曲を選んで聴いていただければよいのですが、情動的で緊張を強いる曲ではいけません。

まずは、よく耳にするタイトルのある曲、「新世界より」(ドヴォルザーク)や「田園」(ベートーヴェン)といった曲を聴いてみてください。モーツァルトなら、次のようなものが最初に聴く曲としておすすめです。最初に、といいましたが、多くの方にとって耳慣れた曲ではないかと思います。

・『第40番 ト短調K550』
・『第41番 ハ長調K551 「ジュピター」』(モーツァルト、最後の交響曲)
・『クラリネット協奏曲 イ長調K622』(亡くなる年に書かれた曲)
・ヴァイオリン協奏曲『第3番 ト長調K216』『第4番 ニ長調K218』『第5番 イ長調K219』
・ピアノ協奏曲『第20番 ニ短調K466』『第21番 ハ長調K467』『第23番 イ長調K488』
・『第14番 ト長調K387「春」』『第17番 変ロ長調K458「狩り」』(二十数曲ある弦楽四重奏曲のなかで、ハイドンに献呈され「ハイドン・セット」と呼ばれる6曲のうちの2曲)
・『第22番 変ロ長調K589「プロシャ王第2番」』『第23番 ヘ長調K590「プロシャ王第3番」』(弦楽四重奏曲のなかで、プロイセン王からの依頼により作曲され「プロシャ王セット」と呼ばれる3曲のうちの2曲)

昼間から気軽にいつでも聴くものとなると、モーツァルトやバッハ、ヴィヴァルディのバロック音楽がよいでしょう。作業中でもBGMとして流しておいて邪魔になりません。

いずれにせよ、生真面目に座って目を瞑って聴くのではなく、朝、昼、夜、いつでもいいので、生活のなかでBGMとして流すことからはじめてはいかがでしょう。おすすめの曲をいくつか挙げましたが、基本は「いつでも、好きな曲を」です。

 

10分「ながら聴き」でいい

心と体を整えるためにクラシック音楽を聴くのなら、どのくらいの時間、聴けばいいのでしょうか。ある程度の時間聴いたほうがいいのかなと思うかもしれませんが、10分程度でも十分です。10分単位で聴いて、時間が許すのなら、3セッション・30分聴くといいと思います。

モーツァルトの曲は、だいたい1楽章が10分程度で、3楽章や4楽章で1曲となっています。ですから、ひとつの楽章のみを取り出して聴くと、ちょうど聴きやすいと思います。

1曲でまとまったメッセージ性のある曲ではないことが多いので、楽章ごとに聴いても存分に楽しめます。また、セレナーデやディヴェルティメント(暗さを避けた軽やかで楽しい曲風の器楽組曲。嬉遊曲)は、食事のときのBGMや場の雰囲気づくりに合います。「どう聴くか」については、とくにありません。

音楽療法の研究のためには、音楽以外に影響する要因をなくすために、座って目を閉じる、他のノイズをシャットアウトするためにヘッドホンをつけるなど厳格に行いますが、私たちが生活のなかでクラシック音楽の効果を取り入れるうえでは、必ずしもそのような厳格さは必要ではありません。気持ちよく何気なく流していていいのです。

何かをしながらの「ながら聴き」でもかまいません。たとえば、スポーツジムで汗を流すとき、健康のための早歩きをしているときにイヤホンで聴くのもおすすめです。モーツァルトには、テンポの良い1分20拍程度のアレグロの曲が多いのも、ちょうど良いですね。料理をしながら、掃除をしながら聴くのも、良いと思います。

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