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休校中に大量の宿題プリント…コロナ禍であらわになった「学校間の格差」

2021年05月31日 公開

妹尾昌俊(教育研究家)

 

コロナ危機で主体的に動いた学校はごく少数

休校中の学校の大きな課題のひとつが「休校中の学びをどうするか」でした。この未曾有の事態でも、子どもたちが安心して学びを進められるようにするため、創意工夫を凝らす学校もありました。

たとえば、岐阜県白川村立の義務教育学校(小中にあたる9年間の一貫教育)である白川郷学園では一斉休校の約2週間後、2020年3月16日の週から、Zoom(ウェブ会議システム)を使った朝の会が始まったのです。

私が知るかぎり、私立学校を含めても全国で最も早い動きのひとつだったと思います。

もうひとつの興味深い例は、熊本市です。休校中の4月15日からすべての市立小中高、136校で双方向性のあるオンライン授業を実施しました。熊本市ほどの規模で、休校中の子どもたちのケア(健康観察、児童生徒同士の交流など)や学習支援が広く行われた例はおそらくないでしょう。

ところが、白川郷学園や熊本市のような積極的な行動は、全国的にとても珍しいものでした。「代わりになにをしていたのか」と言うと、多くの学校に共通していたことのひとつは「プリント爆弾」でした。

つまり、大量の宿題プリントや紙のドリルを配って、「家庭でやっておいてください」というものです。自学自習できる子や丁寧なケアができる家庭なら、まだそれでもよかったかもしれません。

しかし、そういう子どもや家庭は、むしろ少数だった可能性が高いことが、私の調査等でもわかっています。しかも、まだ勉強に慣れていない小学校低学年の児童や、苦手教科のある小中学生、高校生たちは、フォローなき大量の宿題によって、かえって勉強嫌いになってしまった可能性のほうが大きいです。

 

「学校・家庭・社会」の相互不信と分断

問題は休校中だけではありません。学校再開後、各地の学校のなかには改善するどころか、このような問題や弱みを抱えたままのところもあります。これは現在進行形で進んでいる問題です。

休校中も、そして学校再開後も、多数の学校は、「受け身で指示待ち」で、問題解決や改善からは遠のいているように見えます。コロナ禍であらわになった「学校間の取り組みの差」は、なぜ生まれたのか。

この問いを分析していくなかで、私は大きな問題にぶつかりました。一言で表すなら「学校(教職員)」「家庭(保護者)」「社会(地域)」のコミュニケーション不足による相互不信、もっと言えば、分断が大きくなっていることです。

筆者の調査によれば、先ほど述べた学校の消極的な対応などの影響で、公立小中学校の約半数の保護者が、学校への信頼感が落ちたと回答しています。

学校への不信が高まると、学校側は保護者や地域からこれ以上クレームが来ては困ると考え、情報を出さなくなり、積極的に関係をもとうとしなくなります。

このようなクローズな姿勢は、「先生たちが何を考えているかわからない」という保護者等からの不信をさらに高めるという悪循環に陥ります。これでは相互の信頼感は高まりません。

こうしていま、多くの学校は身動きが取れない状態になっています。コロナ禍でただ単に学びが止まったというよりは、学校教育そのものが「フリーズ」した状態。それが今日の日本の学校の姿なのです。

なぜ、こんな状態が続いたのでしょうか。直接的な理由のひとつは、変革するリーダー(リーダーシップ)が欠けていたことですが、これは問題の表層の一部に過ぎません。

より深層を探るなら、戦後から長く続いてきた「学校・家庭・社会」の関係がうまく回らなくなっているにもかかわらず、教育関係者の考え方が古いままでアップデートされてこなかったことが原因ではないか。

言い換えれば、先生たちは多忙な日々で目の前のことに追われるなか、教育活動を根本から振り返り、マズかったことや「失敗」から学ぶことができていなかったのではないでしょうか。

「うちの校長や担任はICTなどには消極的で」と個人の非難に終始したり、「うちの自治体は予算を付けてくれないからできっこない」とあきらめたりするのは、簡単かもしれません。

そうではなく、背後にあるもっと構造的な問題に目を向けて、その解決にあたることが教育関係者にも、私たちにも、必要ではないでしょうか。

 

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