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転職一年目は「結果より居場所づくり」が大事な理由

グロねえ(大手日系グローバル企業・現役人事部長)

2021年09月07日 公開 2022年02月15日 更新

 

転職一年目は「新人さん」が理想

転職をすると、なんだか自分が「選ばれた人」のように感じ、優越感に浸りたくもなります。でもその会社では「新人さん」。新卒時と同じくらいの気持ちを心がけましょう。

新人のときの気持ちを忘れてはいけない――私の場合、それを強く感じたのは、新卒で入った一社目で異動による職種転換をしたときでした。新卒で入社した会社には15年ほど勤めていましたが、実は、ライフイベント(結婚)の関係で一度退職をし、2年後に同じ会社に再入社しています。

2年ぶりの再入社はある意味「転職」と同じ状況でした。一旦は辞める前の職種に戻ったのですが、結婚を経て将来のライフプランを考えたときに、ふと「この職種で仕事を続けるのは無理かな」と思い始めたのです。

そのとき、ちょうど社内異動の募集話が持ち上がったので、「今の専門性も活かせる、人の育成に関わってみたい」という気持ちで、上司に「応募したい」と打ち明けました。

当初、上司はためらっていたものの、私が将来のキャリアで悩んでいることを見透かしていたからでしょうか。最後は快諾してくれました。そして、無事に異動。私の最初の大きな仕事は「新卒社員の教育」でした。

指導にあたっての技術面においては多少の知識はありましたし、社会人としても2年強の経験がありました。しかし、教育プログラムの企画や運営というのは初チャレンジです。なので、最初は少し気負ってしまいました。

それほど年が離れていない新卒社員から「なんだこの人、何もできないじゃないか?」と思われたくない。別の部署からきた同僚に対しては、エンジニア系出身者の「すごいところ」を見せなくてはいけない。

一応、社会人経験はある。技術もある程度は知っている。でも一度退職して再入社するまでの空白期間が約2年間もある……。その気負いが前面に出ていたのでしょうか。新しい上司から呼ばれて、こう言われました。

「そんなに頑張ろうって前のめりにならなくてもいいよ。この分野に関しては“新人”なんだし、変に気を張っていると周りも声をかけづらくなってしまう。だから良い意味で気を抜くようにね」

この上司の言葉で、いかに肩に力が入っていたかを知ることができました。周囲からそう見えたということは、当時の私からはかなり「戦闘モード」のオーラが出ていたのではないかと思います。上司のアドバイスを受けて以降、わからないことは素直に、謙虚に学ぼうと決めました。

 

転職後まずは“結果より居場所づくり”

自分が持っているスキルを洗い出し、「これは使える」「これは知らない」「ここはもっと伸ばせる」などと切り分けをして、自分が出せるものはすべて出した上で、さらなる付加価値をつけることを意識しようと決めました。

その結果、新しい仕事は大成功。当時の私にとって「顧客」であった新卒社員との絆も深まり、彼らとは今でも交流があるほどです。仕事をやりきると自然と信頼関係が生まれるものです。自信が湧くとともに、次の仕事のステージに上がれると痛感した経験でした。

転職一年目はつい気負いすぎて、仕事ができる雰囲気を出したくなるものですが、それをしてしまうと、人間関係でも仕事面でもどこかに歪みが出てきます。あなたができる人かどうかは、相手が決めることで、自分が押し付けて「できる人と認識してもらう」ものではありません。

時々、「できる」ことを見せつけようとして謙虚さを失い、自分自身で転職を失敗させてしまう人がいます。中には自分に問題があったとは考えず、すべてをその会社のせいにして、すぐに転職する人もいますが、そんな「やり方」では絶対に長続きしません。

ただのジョブホッパー(短期離職を繰り返す人)と化し、その後のキャリアや将来に大きなリスクを抱えることになるので、注意が必要です。かといって、ただ素直さと謙虚さだけでは、「で、この人、何ができるの?」と思われてしまいますので、自分ができることをアピールすることも大事です。

この塩梅が、大人として持ち合わせておきたいスキルです。最初は仕事らしい仕事がないとしても、プロジェクトなどで随時提案、サポートするなど、できることからで良いのです。貢献しながら自分の「居場所」を作る。そうやって少しずつ成果を上げられる土台を固めていきましょう。

 

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