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夫の浮気が発覚しても...離婚できない女性を縛る「幼少期の記憶」

2021年10月29日 公開

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

 

好かれたいのに、嫌われる皮肉

ひたすら相手の役に立とうとする人は、それが気に入ってもらうための切札だと思っている。相手につくすことが、評価され、気に入られるためのオールマイティーだと信じているのである。

たしかに、自己中心的な親に育てられた人にとっては、それは真実である。自己中心的な親は、子供が自分の役に立ち、何か自慢の種になることだけが嬉しいのである。

それだけにその人は、いつも相手の役に立っていないと罪の意識を持つことになる。相手の役に立っていないと、罪悪感に苦しめられる。人といても、リラックスできない。リラックスすることに罪悪感を覚えるからである。

不幸なことにそのような人は、罪悪感に苦しめられるようなことをしている時に、人から好感を得るということさえある。周囲の人は、その人に自分の好きなことをしてもらいたいと思っていることもあるからである。

このように人を喜ばそうと努めるのは、何度も言うように、相手に気に入られるためである。その意味ではこれは外面なのである。そして隠された内面は、実は神経症的な愛情要求である。神経症的な愛情要求を心の底に宿しながら、気に入られたいがために必死で人の役に立とうとする。

しかし、時にはこの努力もなかなか成功しないことがある。そうなると本人はいよいよ追いつめられていく。人間関係が破綻していくのだ。

 

夫への怒りを自分に向ける妻

夫に浮気をされながら、それを我慢している女性は多い。夫のほうはすでに別の女性と暮していて、妻とは別れたがっている。だが妻のほうはあくまで別れようとはしない。

こんな場合、もちろん妻は夫に腹を立てているのだが、しかしその怒りと敵意をぶつければ、夫はますます自分から離れていってしまうと思い、我慢しているのである。

そして、たまに帰ってくる夫を笑顔で迎える。腹の中は怒りと嫉妬で煮えくり返っている。なかには自分の感情を完全に抑圧しているために、怒りを覚えない人すらいる。しかし、そういう人たちは神経症になってしまうケースが多いようである。

ことに愛情飢餓感の強い女性なら、わずかでもつながっている相手との関係を維持しようと、自分の怒りを抑えに抑える。そしてついには夫がこうなったのは、自分に至らないところがあるからだと自分を責めだす。

相手に向かうべき怒りが自分に向けられるのである。こうなってくると、もう自分はこの人生で何をしたいのかということもわからなくなるし、何よりも人を愛する能力を失ってしまう。ただひたすら愛されようとし、恨みがましい人間になっていく。

夫との関係を失いたくないために、怒りを自分に向けるうちに、自分に自信がなくなっていく。自信を喪失し、ただひたすら相手に気に入られることで生きようとし、そうでなければ生きていかれないような人間になっていく。いつもビクビクして、人の目を窺うような人になる。

決定的なのは生きることを楽しむ能力の喪失である。物事に感動しなくなる。美しい景色を見たい、素晴らしい音楽を聞きたいという気持ちもなくなる。何をしていても心の底から楽しいということがなくなってしまう。

また、相手に向けるべき怒りを自分に向けることで、自己否定的な姿勢が強まるから、当然魅力のある女性ではなくなる。女らしさ、色気などもなくなり、生き生きした感じも失ってしまう。自分に対する自信もなくなっていく。そうなれば夫は、いよいよそんな妻とは別れようとする。

周囲もあんな奥さんでは別れたくなるはずだと言うかもしれない。こうなると不思議なもので、奥さんは自分が被害者なのに、なぜか罪悪感に捉われだす。心の底はもう不満の塊であるのに、それを意識することすらできない。そして、最後には人生に対して投げやりな態度になってしまう。

結局、相手との関係を失うことを恐れるばかりに、自分の人生を駄目にしてしまうのである。相手に対して自分の感情を表現しようとしないために、自分を失い、同時に相手を失ってしまうのである。

その時に、たとえどんなに淋しくても自分一人で生きることを始めれば、やがては自分の中に新たな力強さを感じ始め、生き生きした女性として再生できたであろう。淋しさに思いきり泣き、呪い、怒っていたら、エネルギーに満ちた女性として立ち直り、新たな愛の対象と出会えたかもしれない。

だが、このような人は、人と対立して相手を傷つけることも恐れている。自分が対立によって傷つくから、人もまた傷つくと思うのである。対立することに罪の意識を持ち、相手の言うとおりになってしまうが、その代償は大きい。

つまり自分に対する確信、自信というものを失ってしまうのである。だがその不快な事実は、人の言うとおりになることが"立派なこと"だとして合理化してしまうのだ。

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。 

 

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