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“がんばろうKOBE”以来、25年ぶり優勝のオリックス...低迷期を支えた「ファンとの絆」

喜瀬雅則(スポーツライター)

2021年11月12日 公開 2022年06月09日 更新

 

「チェック柄のユニホーム」も着る..驚きのオリ流ファンサービス

2019年(令和元年)のファンクラブ会員数は、およそ5万8000人。同じパ・リーグでも、福岡ソフトバンクや北海道日本ハム、埼玉西武は10万人を超えており「他球団と比べたら、全然少ないです」と湊。ただオリックスの場合、ファンクラブ会員の京セラドームへの来場頻度が非常に高く、70%以上のメンバーが年2回以上観戦に訪れているというデータが出ている。1人あたり平均5~6回に上り、年50回以上の猛者までいるという。

2回以上来れば入場券の割引、あるいは飲食やグッズ購入でのポイント付与などで、年会費分の"元"は取れるという。こうした関西人の気質も把握した上で「ファンクラブのメリットを仕掛けていくんです」と湊はいう。

2019年にも、開幕前の球団激励パーティーの参加権や新入団選手発表の記者会見への参加権も付く「エクストラプレミアムメンバー」を募集。Bは年会費13万円、Aは8万5000円(当時。2021年度はB15万円、A10万円)だが、そのAB合わせた500人分は、きっちりと完売している。

野球界を含めたプロスポーツ界は、開幕前までに年間予約席や球場内の広告看板のセールスをかける。こうした前売りで、年間売上の相当額がシーズン開始前までに"確定"するという、特殊な業界形態でもある。

その中でも「入場料収入」は、各球団でのバラツキはあるものの、年間総売上の30%から50%を占める。当日券のセールスを含め、ファンに球場へ足を運んでもらう集客の戦略が不可欠であり、これが球団経営の根幹を担うのだ。

「新たなファンをいかに取り込めるか。コア層のファンに連れてきてもらった方が2回、3回と来てもらえるようにしていかないといけない。オリックスが増やしていかないといけないのは、この『ライト層』の方なんです」。湊は、そうした"きっかけ作り"が重要だという。

CRMのデータ解析で、男性ファンは「チーム」を、女性ファンは「選手個人」を応援する傾向が出ている。そうすると、選手個人のグッズや、ネーム入りの高額なレプリカユニホームなど、物販の売上は女性ファンの方が多いという傾向が出た。

そこで、2015年(平成27年)からスタートさせた「オリ姫デー」では、女性ファンをメーンターゲットに定めた。

オリックスと七夕の織姫とをかけた「オリ姫」のネーミングも定着。当日の入場者に配られるレプリカユニホームは、その試合で選手が着用するものと同じデザインの年もあり、2016年(平成28年)には、ピンクのチェック柄という、ユニホームの概念を吹き飛ばすようなデザインだった。

「ファンの方々には好評で、今でもドームで見ますね」と湊は喜びながらも「年配の選手とか首脳陣には……」とちょっぴり苦笑いだ。

ただ、こうしたイベントは、現場サイドの協力がなければ成立しない。「選手にお願いしているのは、自分のファンを増やしてくれる気持ちでやってくれたらいいと。それがイコール、球団のファンが増えてくることになる。

そうすると、ファンサービスだってしやすいと思うんです。そういう風に考えてくれている選手が多いんじゃないですかね。野球だって、自分が稼ぐためにやることが、チームプレーにもつながるんじゃないですか?チームのためにやってくれと言うと、意外としづらいものでしょ?」

湊の"ファンサービス論"には、確かに一理ある。いかにして、球場に来てもらうか。リピーターを増やしていくのか。一朝一夕にはいかないのは百も承知。だからこそ、球団と選手、そしてファンとをつないでいく「絆」を、地道に深めていかなければならないのだ。

 

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