出世したくないなら絶対に防ぐべき「上司のメンタルダウン」
2021年12月07日 公開 2023年09月05日 更新
仕事に対しやる気があり、人間関係に繊細なのはいいが、それで健康を害してしまっては無意味。時には、仕事に無感情な人間の姿勢を取り入れ、「どうでもいいことでは悩まないようにする」のも大事なのでは?
そんなわけで、新刊『反応したら負け』から、上司のメンタルダウンを防ぐ対処法をお届けしたい。
※本稿は、カレー沢薫著『反応したら負け』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
出世したせいで「地獄を見ている」上司たち
最近の若者は「出世」したがらないという。「セックス」「車」「酒」「テレビ」そして「出世」と、最近の若者はありとあらゆるものから離れ、すでに半径100メートルが荒野と化しているような気がする。
しかし、これは最近の若者に元気とヤる気(文字通り)がないからというより、実際それらに「魅力」が感じられないせいでもある。
最近は娯楽も多様化、そして安価になっており、月500円程度払えばゾンビドラマがシーズン10ぐらい視聴できてしまうのだ。
それに対して意中の相手との「セックス」なんて、長い時間と費用、時に土下座を繰り出してなお得られるかどうかわからない代物である。
つまり、今の若者にとって「恋愛」や「セックス」というのは、コスパが悪く、リスクの高い、大して魅力が感じられない娯楽だから手を出さないだけなのである。
それと同じように「出世」も、明らかにメリットが感じられないから、したがる者が減っているのだ。
そして出世に対し「旨味ゼロ」と判断してしまう理由は、おそらく先んじて中途半端に出世したせいで地獄を見ている上司、つまり「中間管理職」の姿を見ているからではないだろうか。
もし世の中間管理職が友作(前澤)みたいなパーカーを着て、窓に向かった席で椅子に極めて深く座り、持つところがアツくないように紙を巻いたホットコーヒーを飲みながらアイパッドで仕事をしていたら、みんな出世したがると思う。
そんなわけで今回のテーマは「上司のメンタルダウン」を防ぐ方法だ。
普通、上司が部下のメンタルを気にするものだろうと思うかもしれないが、何せ若者に「一生平でいい」と思わせるぐらい、今の中間管理職は苛酷なのだ。
部下を管理しつつも、自分も現場の人間として成果は出さねばならず、それを上司に報告説明、そして時に罵倒をされなければいけない。
さらに、下手に役職についたせいで、残業代が出なくなり、仕事内容だけ苛酷になり、賃金は下がるという、実質「降格処分」になっている者も少なくない。
部下としても、上司がノイローゼでは仕事に支障がでるし、突然「夏の星座にぶら下がりに行く」と言い残し、流れ星になられても困る。
それに上司に流星されると「お鉢が自分に回ってくる」という恐れもある。一生出世せずに会社に居座るには、上司には永遠に上司でいてもらわなければ困る。
「会社を辞めてもよい」という逃げ道がある
まず、明日にでもスターダストしそうな上司には「辞めてもよい」と言おう。一見矛盾しているように聞こえるかもしれないが、私の夫も中間管理職であり、一時期、激務で相当病んでいた。そして「仕事を辞めたい」とこぼすようになった。
本音としてはもちろん「それは困る」だ。2人家族で2人無職というのは、さすがに無職含有率が高すぎる。しかし自分がノー相談で無職になった手前、お前は辞めるなとは言えず「辞めてもよい」と言ったところ、その後持ち直し、今も仕事を続けている。
つまり、追いつめられている人間には「いざとなったら辞めてもよい」という逃げ道を与えた方が、心に余裕ができ、持ちこたえてくれるということだ。
だが本当にアドバイスに従って辞められても困るので辞めていいではなく「一緒に労基にカチ込もう」「俺が部長を羽交い絞めにするんで、課長はとどめをお願いします」というように、「いざとなったらこうすればいいんだ」という最終手段を示せれば、何でもいい。
意外と追いつめられている人間というのは、会社に殺されるか、自ら死ぬかの2択になってしまっている場合が多いのだ。「死にはしないし、死ぬ必要もない」「鬱で3年寝込むより、傷害未遂で懲役1年」という他の選択肢があることを気づかせてやることが第一である。