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国民的俳優の母が語る、子どもの「才能の芽」をつぶさない親の態度

菅生好身(一般社団法人ライフバランス協会代表理事)

2022年02月04日 公開 2024年12月16日 更新

 

ゲームに夢中な次男を認められなくて…

自分の子に対して、こんな子に育ってほしいという理想像を持つ親は多いと思います。当時の私にとってのいい子像は、"外で元気に遊ぶ子"でした。

実際、長男と三男は外で遊ぶのが大好きな活発な子どもでしたが、次男はインドア派。小学生のころはテレビゲームが大好きで、毎日学校から帰ってくるとテレビと向き合いゲームに夢中。それは私の中にあるいい子像からはかけ離れていましたし、思いどおりにならない次男を前にガーッとお説教してしまっていたのです。半ば家から追い出すようにして、近所の公園に遊びにいかせたこともありました。

あるとき、次男に話しかけながら、何気なく肩に手をのばしました。そのとき次男がフッと体を動かし、私の手をかわしたのです。この子、いま私を避けた!? にわかには信じられませんでした。次男は無意識のうちに体をよじったようにも見えました。

これには思い当たることがありすぎました。ゲームです。次男がゲームを心から好きで夢中になっていることは、誰の目にもわかります。私だけが「ゲームはよくないものだ」と決めつけていたのです。好きなことを否定されるのは、自分自身を否定されることにも等しいでしょう。そんな親と話したくない、心を開きたくないと思うのは、当然です。

外で体を動かして遊ぶのが好きな子もいれば、家でじっくりゲームに取り組みたい子もいる。これの一体何が悪いというのだろう? ここにきて私はやっと気づいたのです、変わらなければならないのは自分のほうだ、と。

 

意を決して、正面から向き合ってみることに

「なぁなぁ、なんのゲームしとるん?」ある日、いつものとおりゲームをしている次男のとなりに座り、聞いてみました。「お母さんにもちょっとやらせてくれん?」と言うと、怪訝そうな顔をしつつ、コントローラーを手渡してくれました。お手本を見せてほしいと頼むと次男はなんでも軽々とやってのけるのですが、私はあたふたするばかり。

長男と次男も、テレビの周りに集まってきました。すると長男が、「健人、お前スゴイなぁ! いまのワザどうやって出すん!?」と聞き、次男がまんざらでもない様子で、「これは攻略本に書いてあってな」と本を持ち出しました。三男も一緒になって覗き込み、「さすが健人!」「ぜんぜん知らんかったわぁ......」と次男を称賛するのです。長男も三男も、次男に一目置いている。その様子を前に、私の偏見はスルスルとほどけていきました。

長男から見た次男のイメージについて聞いてみました。

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(長男コメント)
一番父に似ていて多彩、極められる人。ただ、その分人に理解されないことが多く、「天才の孤独」の典型みたいな人。端的に言うと、面白くて変な人かな。それでいて、頼られると断れないし、仕事ができて頼りがいがあるから人が集まる…そして、たまに疲れちゃうような優しい人でもあります。俺よりも長男っぽいリーダー気質!
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あのとき一緒にゲームをしてみなければ、私はいまもゲーム嫌いのままで、次男との距離はますますひらき、取り返しがつかなくなっていたかもしれません。そう考えると背筋が寒くなります。

次男にはゲームを、時間さえ守れば好きなようにさせてあげることにしました。ではその後、次男がゲームの世界だけにひたっていたかというとそんなことはありません。中学に入って歌うことに目覚め、ダンススクールにも通いはじめました。その後、アカペラグループを自分で結成しました。子どもの世界は無限に広がっていくものです。

次男にたずねると、当時のゲーム好きが現在の仕事に活きているいると教えてくれました。

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(次男コメント)
子どものころからゲームに熱中していたことで、いまでもパソコンや電子機器に強く、知識も多いことにつながっています。
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現在の彼は、CM制作や映像編集の仕事をするかたわら、YouTuberとして歌を配信するなど熱心に活動しています。まさに、子どものときに遊びとして熱中していたことが、大人になってからの仕事に活きているということです。次男の可能性を潰さなくて本当によかったと、私はいまさらながら胸を撫で下ろしています。

 

才能の芽は子ども時代の夢にありました

親というのは、子どもの成長を気にかけると同時に、常にその将来に思いを馳せるものです。どんな大人になるんだろう、どんな仕事に就くんだろう。「夢は何? 大人になったら何になりたい?」とつい聞いてしまうのも、できれば子どもの望む道を歩ませてあげたいという願いからだと思います。

いま、3人の息子は自分の思う道を歩んでいます。長男は10代半ばという早い時期に俳優としてデビューしました。ありがたいことに仕事に恵まれ、現在は俳優業以外にも、歌にファッションにと活動の幅を広げています。

長男は小学校の卒業文集で、将来の夢について「『笑っていいとも!』に出てタモリさんに会う」と書いていました。そのころはまだ俳優になりたいといった明確なビジョンはなかったと思いますが、そこから数年後に本当に芸能界に入ったのです。

次男の夢は、「歌って踊れる美容師」でした。美容師は人気の職業ですが、歌と踊りについてもとてもよくわかります。わが家はみんな音楽が大好き。誰かが歌いだせば、ほかの誰かが合わせて口ずさみ、踊り出して......といったことが、いまでも日常茶飯事です。次男は大学ではアカペラサークルを結成し、いまはYouTubeで歌を披露しています。

芸能界で活躍しはじめた兄を見て育ったこともあってか、三男は「ぐっさんみたいなタレントになりたい!」が夢でした。いま彼は大学に通うかたわら、先輩が立ち上げたアパレルブランドにモデルとして参加したり、俳優業にチャレンジしたり、自分の望む将来を着実に現実のものとしているところです。

こうして振り返ると、3人とも幼いときから現在の道に進む"芽"のようなものが見えていました。そのための特別な教育はしていません。そのときどきで、本人のやりたいことや興味のあることを大事にしてきました。そうすれば、子ども自身がその中から自分に合う芽を選び、育てていくものなのでしょう。

 

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